新型コロナと社会保障などについて樽見前厚労事務次官らが講演―社会保険旬報 地方から考える社会保障フォーラム(11月5日)
地方議員が参加する第25回【社会保険旬報 地方から考える「社会保障フォーラム」セミナー】が11月5日に都内で開催され、全国にオンライン中継された(主催:地方から考える「社会保障フォーラム」事務局)。樽見英樹・前厚生労働事務次官、厚生労働省の河村のり子・障害福祉課障害児・発達障害者支援室長/地域生活支援推進室長、山内孝一郎・大臣官房参事官(情報化担当)が新型コロナウイルス対策や社会保障のあり方などについて講演した。
年末年始の患者増に対応できればコロナ特別態勢は変わる
樽見英樹前厚生労働事務次官は「コロナ・社会保障・地方行政」と題して講演した。 9月に新型コロナの感染者数が急速に減少した要因について、感染すると重症化して入院しやすい高齢者へのワクチン接種が進んだことと、マスクをウレタンではなく不織布にするなど、人々に感染予防を徹底するための行動変容が起きたことをあげた。
樽見氏は、年末年始には人出が増えるため感染者数が増加する可能性があると指摘したうえで、「薬の効果で重症化する患者数を抑え、重症化しても入院できる体制が実現できれば、この病気に対してのこれまでの特別態勢の考え方は少し変わってくるのではないかと期待している」と述べた。
医療的ケア児支援法の全体像を紹介
厚労省の河村のり子・障害福祉課障害児・発達障害者支援室長/地域生活支援推進室長は「医療的ケア児支援法の成立と今後の課題」をテーマに講演した。
医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律について、全体像と成立までの経緯を紹介。成立の前提には多くの医療的ケア児の保護者の苦悩や課題があったとした。また、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定において、医療的ケア児への支援充実のため、新判定スコアを用いた基本報酬を創設したと説明した。
河村氏は「どういった社会が公正なのか、障害福祉の分野では切実に感じる。元気に歩き回れるわたしたちだけではないということを感じてほしい」と述べた。
厚生労働行政におけるデジタル化の取組みを説明
山内孝一郎・厚労省大臣官房参事官(情報化担当)は「行政のデジタル化と厚生労働行政」をテーマに講演。マイナンバーカードを活用した健康保険証のデジタル化について、「医療機関にとっては資格確認の簡易化、事務負担軽減となり、患者にとっては転職等に伴う保険証切替えの負担軽減となる」と述べた。マイナンバーカードを健康保険証として利用することに伴い、特定健診や薬剤情報を医師等と共有できるようになることで、医療の質の向上に寄与する点を強調した。
また、省内での業務改革の一環で、定型作業の一部自動化であるRPAの拡充や地方公共団体との共同ポータルサイトの整備などの取組みについても紹介した。
山内氏は、「政策形成のなかにおいてどのように上手にデータを集めるか、どのように政策に生かすか。政策とデジタルの関わりは非常に重要であり、しっかり取組みを進めたい」と述べた。