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三宅社労士の年金実務セミナー|#16 妻が死亡した場合の遺族年金4事例 Part2

三宅 明彦 (みやけ あきひこ)/社会保険労務士

前回は、妻が死亡したサラリーマンの夫に高校生の子どもがいる場合をベースに、妻の年金加入歴と年齢、夫の年齢と年収を変えた4パターンで夫と子どもが受給する遺族年金を説明しました。しかし実際のところ、遺族年金は実にさまざまです。
そこで今回は、実際に私が担当した事例を4つご紹介します。 


事例①
子のいない夫~死亡一時金が出るケース

【事例概要】
死亡した妻:昭和35年3月生まれ(63歳)
令和3年4月(61歳)から特別支給の老齢厚生年金を年額約20万円受給
令和5年8月に心不全により死亡
<妻の年金加入歴>
厚生年金が120月(老齢厚生年金:年額で約20万円)
国民年金の第3号被保険者が300月
国民年金の第1号被保険者の納付月が36月・半額免除が12月
 
請求する夫:昭和39年4月生まれ(59歳)
<夫の年金加入歴>
厚生年金が380月
国民年金の第1号被保険者の納付月が12月
※夫の年収は850万円未満
※夫は妻と同居

まず、妻は資格期間が25年以上ある老齢厚生年金の受給権者なので、妻に生計を維持されていた遺族は遺族厚生年金を受給できます。夫は妻死亡時に55歳以上であり、遺族厚生年金の「遺族」の要件を満たしています。年収850万円未満(年収要件)で妻と同居(生計同一要件)していたので、妻に生計を維持されていた(生計維持要件)遺族と言えます。

夫に子はいないので遺族基礎年金は受給できませんが、60歳から遺族厚生年金を受給できます。また、妻は国民年金保険料を36ヵ月分以上納付しましたが、老齢基礎年金(および障害基礎年金)を受給せずに亡くなりました。この場合、夫は死亡一金も受給できます。

その後、夫が65歳になると自分の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給します。遺族厚生年金は、夫の老齢厚生年金よりも高い場合にのみ差額分が支給されます。この事例では、夫の老齢厚生年金のほうが遺族厚生年金よりも高いので、遺族厚生年金は支給されません。
 
夫が受給できる年金額を時系列でまとめると次のようになります。

①妻の死亡時に国民年金の死亡一時金を12万円受給
国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数は、36月+12月÷2=42月となり、12万円を受給できます。半額免除期間は0.5月でカウントします。

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