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障害者の地域移行・地域生活を支援するサービスについて検討─令和3年度障害報酬改定に向け各サービスの論点の議論を開始(9月11日)

厚労省の障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(主査=小島敏文厚労大臣政務官)は11日、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向けて、各サービスの個別の論点の検討を開始した。

厚労省はこの日、障害者の地域移行・地域生活を支援する、①自立生活援助・地域移行支援・地域定着支援②地域生活拠点等③共同生活援助(グループホーム)④自立訓練(機能訓練・生活訓練)─について、報酬・基準の見直しを示した。検討チームでは概ね賛同する意見が出された。

主な論点を見てみる。


自立生活援助の人員基準を緩和

まず①自立生活援助は、施設やグループホーム、精神科病院等から1人暮らしに移行し、理解力や生活力に不安がある障害者等を対象にしたもので、定期及び随時訪問、随時対応、その他に自立した日常生活の実現に必要な支援を行うもの。標準利用期間は1年間だ。平成30年度改定で導入された。

地域移行支援は、同様に施設等に入所等している障害者を対象に、住居の確保やその他の地域生活へ移行するための支援を行う。支給決定期間は6か月。地域定着支援は、居宅で単身で生活する障害者等を対象に、常時の連絡体制を確保し、緊急時には必要な支援を行う。支給決定期間は1年間。

自立生活援助について、▽人員基準についてサービス管理責任者と地域生活支援員の兼務を認める方向で緩和すること▽標準利用期間の更新を原則1回から市町村審査会の個別審査を要件として複数回の更新を認めること▽同居家族の死亡等により急遽1人暮らしをすることになった障害者等の基本報酬を引き上げる方向で見直すこと▽月額で設定している同行支援加算を支援の回数等を踏まえて算定する仕組みとすること▽深夜帯の緊急対応や電話相談について地域定着支援の緊急時支援費を参考に加算で評価すること─が提案された。

また地域移行支援について、前年度の実績が特に高いと認められる事業所を更に評価することも提案された。

地域生活支援拠点等に位置付けられたサービスを加算で評価

②地域生活支援拠点等は、障害者の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据えて、障害者の地域生活を地域全体で支えるための体制を整備するもの。

相談支援や緊急時の受け入れ、地域生活等の体験の機会の提供、専門的人材の確保・養成、地域の体制づくりの5つの機能が求められている。

第5期障害福祉計画(平成30年度~令和2年度)では、「各市町村又は各障害保健福祉圏域に少なくとも1カ所の整備」を基本とする方針が示されている。1741市町村の整備状況をみると、令和2年度末時点での整備見込みは1432市町村(うち圏域整備173圏域668市町村)となっている。30年度改定では、求められる5つの機能を強化する方向で見直された。

令和3年度から5年度までの第6期計画の基本指針では、「令和5年度末までの間、各市町村又は各圏域に1つ以上の地域生活支援拠点等を確保しつつ、その機能の充実」を図ることが示されている。

こうしたことを踏まえ、厚労省は、▽市町村が地域生活支援拠点等として位置付けた短期入所事業所や緊急対応を行う訪問系サービス、自立生活援助、地域定着支援事業所について、地域生活支援拠点等としての役割を評価し、一定額の加算を検討すること▽特に短期入所事業所では緊急対応した場合に限らず一定額を加算する方向で検討すること─を提案した。

地域生活支援拠点等では、特に緊急時の受け入れ対応の体制整備が大きな課題であることが指摘されてきている。

グループホームの重度者支援を更に拡充

③共同生活援助(グループホーム)は、入居定員は原則10名以下であり、家庭的な雰囲気で共同生活を営む場である。

住宅地に立地することが求められている。「介護サービス包括型」と「外部サービス利用型」、さらに30年度から導入された「日中サービス支援型」の3類型がある。

入居者の重度化・高齢化への対応や夜間の支援体制の充実が課題だ。そのため厚労省は、▽障害支援区分6で意思疎通が著しく困難などの要件を満たす者に限定さている「重度障害者支援加算」の対象を支援区分4以上の強度行動障害者や医療的ケアが必要な者に拡大すること▽重度障害者の報酬に配慮しつつメリハリのある報酬に見直すこと▽個人単位の居宅介護等の利用は重度障害者の受け入れ体制の確保から引き続き継続すること─を提案した。

また夜間支援等体制加算(Ⅰ)について、夜間における利用者への支援の状況を踏まえて加算額の見直しの検討を提案した。

また、共同生活住居ごとの夜勤職員の配置に加えて、事業所単位で夜勤職員又は宿直職員を加配し、巡回等により対応する場合には更に加算することも示した。

自立訓練の標準的な評価手法の検討を促進

④自立訓練(機能訓練・生活訓練)は、障害者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、定める期間において、身体機能又は生活能力の向上のために必要な訓練を行うもの。

自立訓練(機能訓練)では、標準利用期間は1年6か月(頚髄損傷による四肢麻痺等の場合は3年間)。自立訓練(生活訓練)では、2年間(長期入院・入所していた者等は3年間)。

自立訓練については、事業所ごとに訓練内容や質が異なり、標準化された評価手法が確立されていないことが課題だ。

令和2年度から3年度にかけて「自立訓練における標準的な支援手法・評価手法に関する厚生労働科学研究」により、標準化された評価手法の作成・検証を行うこととしている。

また30年度改定では、それまで「機能訓練」は身体障害者、「生活訓練」は知的障害者・精神障害者に利用を限定していた取扱いを見直し、障害の区別なく利用可能とした。一方で、関係団体のヒアリングでは、視覚障害者向けの歩行訓練が「生活訓練」でほとんど実施されていないことが指摘された。また「機能訓練」への言語聴覚士の配置や訪問による訓練の充実等の要望が寄せられた。

こうした状況を踏まえ、厚労省は、自立訓練における支援の在り方について、訓練効果の標準的な評価手法の検討や、「機能訓練」「生活訓練」の対象者の見直し後の運用状況等を踏まえ、引き続き検討していくことを提案した。

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