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#36|初診日特定が難しい傷病による障害年金請求 その2(脳脊髄液減少症)


 脳脊髄液減少症とは、脳や脊髄のまわりを流れる液が、何らかの理由で漏れ出してしまう疾患です。この液が減少すると脳の機能が低下し、身体に様々な支障が出現します。

 脳脊髄液が漏れ出す主な原因としては、外部から身体への強い衝撃が加わることです。それゆえ、交通事故やスポーツ外傷が原因になることが多いようです(まれに突発性など、身体に強い衝撃が加わらなくても引き起こされることもあります。)。

 症状としては、起立性頭痛が出現するのが特徴ですが、その他にも吐き気、視力聴力の低下、首のまわりの痛み、倦怠感や激しい疲労感、記憶障害等が出現することもしばしばあります。そのため、障害年金における初診日の特定が、非常に難しい傷病の一つです。

 治療法はブラッドパッチと呼ばれる自身の血液から作り出した「かさぶた」を、漏れだしている穴にあてがうことで脳脊髄液の減少を防ぐ方法や、人工的に作り出した髄液を注入する方法があります。治療後の経過は、約7割の人は良好です。しかし、残り3割程度の人は改善がみられず、症状が進行し障害状態となることもあります。

 今回は、前回に引き続き「初診日の特定が難しい傷病による障害年金請求」その2として、脳脊髄液減少症による請求事例を検証していきます。

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