障害児入所施設の過齢児への対応を障害者部会に提示(7月28日)
厚労省は7月28日、障害児入所施設に18歳以上になっても入所を続けている「過齢児」への対応について社保審・障害者部会に示し、意見を求めた。
具体的に、過齢児の障害者入所施設や地域生活への移行について都道府県(政令市)が責任主体となり協議の場を設置して関係者の協力のもとで移行調整を進める新たな枠組みを構築することを説明した。現在、特例的に障害児入所施設を障害者入所施設とみなして過齢児の入所を認めて支給している経過的サービス費は、令和5年度末まで継続する。
部会では概ね了承されたが、複数の委員が令和5年度末を待たずになるべく早期に移行に向けて対応を進めるよう求めた。
400名以上の移行調整困難者
過齢児への対応は長年続く課題である。
平成22年の児童福祉法改正(平成24年施行)では、障害児入所施設に入所する18歳以上の過齢児について就労支援や自立訓練を通じて、地域生活に移行するなど、「大人としてふさわしい」より適切な支援を行うため、障害者施策で対応することとされた。
一方、過齢児が直ちに退所させられることがないよう、平成30年3月末までの間、障害児入所施設の指定を受けていることにより、障害者支援施設又は療養介護の指定基準を満たすものとの「みなし規定」を設けて、経過的に入所することが可能となった。その後、移行に向けた取組を進めたが、特に都市部における強度行動障害者などのサービスが不足している状況があり、みなし規定の期限を令和3年3月末まで延長することになった。
その後、令和2年2月にまとめられた「障害児入所施設の在り方に関する検討会」報告書では、みなし規定の期限を延長せずに成人期にふさわしい支援を行うべきと提言された。
しかし地域や障害者施設への移行の対象とされながらも移行が困難とされている人は446名(令和2年7月末時点)も存在することから、あらため令和3年度末まで経過的サービス費の支給を延長する法令改正が行われた。さらに過齢児の新たな移行調整の枠組みについて検討していくことになった。
なお平成26年の「障害児支援の在り方に関する検討会」報告書の提言を受け、医療型障害児入所施設については、施設と療養介護の指定を同時に受ける措置が恒久化されており、入所している障害児は18歳到達後に同施設の療養介護に移行できるようになっている。過齢児の移行調整は、特に福祉型障害児入所施設において大きな課題になっていると言える。
都道府県(政令市)が移行調整の責任主体に
厚労省は「障害児の新たな移行調整の枠組みに向けた実務者会議」を設置し、今年1月から検討を開始。実務者会議は7月27日に報告書案を概ね了承した。
報告書案によると、障害児の意思決定を支援し、その選択を最大限に尊重することや現時点の暮らしの充実が疎かにならないよう留意することを基本的な考え方に据えた。
具体的なスキームとしては、15歳以上の入所児童に対して施設のソーシャルワーカー等が今後の生活に関する意思決定を支援するなど、移行に向けた支援を開始する。
円滑な移行が難しいケースでは、都道府県(政令市)が移行調整の責任主体となり、協議の場を設けて関係者の協力のもとで移行調整を進める。移行先がある程度決まった段階で、移行後の支給決定主体(市町村)へ引き継いでいく。
都道府県等が、移行調整に必要となる相談支援やグループホームの体験利用などを処遇の一環として一元的・包括的に決定できるようにする。また相談支援事業所が成人としての生活への移行・定着まで一貫して支援することを可能とする仕組みを設けるとしている。
円滑な移行に向け、特に強度行動障害者のケアのための基盤整備を進める必要がある。報告書案では、ハード面だけでなく支援人材の育成面も重要とし、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に向けて別途検討を進めるよう求めた。
他方、強度行動障害等が18歳近くになって強く顕在化し、18歳での移行が適切でない場合もあることを踏まえ、都道府県等の協議の場での判断を経て、22歳までは障害児入所施設への入所が継続できるように制度的な対応を図ることを示した。さらに過齢児に対する経過的サービス費の支給は令和5年度末までは継続することとした。