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地域指数の訂正で労使協定の再締結等を行う派遣元に人材確保等支援助成金

厚生労働省は6月28日、令和6年度に適用される一般賃金水準の地域指数の訂正に伴い、労使協定の再締結や派遣労働者への追加の賃金支払いなどの対応が必要となる派遣元事業主への支援措置として、雇用保険二事業の人材確保等支援助成金に令和6年度限りの暫定措置を設ける「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令」を公布・施行した。
労使協定の再締結等の整備に係る基本経費として5万円、追加的に賃金を支払う派遣労働者1人につき1万円を助成する。

通達のハローワーク別地域指数を訂正

派遣労働者の同一労働同一賃金として、派遣元の約9割が選択する労使協定方式は、派遣労働者の賃金等の待遇について、同種の業務に同一の地域で従事する一般労働者の平均賃金(一般賃金水準)と同等以上となるように労使協定を定める必要がある。その前提になる業務別の平均賃金や地域指数(都道府県別、ハローワーク別)などは、毎年夏ころに厚生労働省から発出される職業安定局長通達において示される。

だが、その通達の地域指数に誤りが発覚(令和6年5月24日)し、誤って低く算定されていた2府32県121所の「ハローワーク別地域指数」を参照して一般賃金水準を定めていた派遣元は、訂正後の地域指数による一般賃金水準以上となるよう、労使協定の再締結等が要請されている。
また、再締結された一般賃金水準より少ない賃金が支払われていた派遣労働者に対しては、年度当初から協定再締結までの期間における差額分の賃金を支払う必要も生じる。

対応が必要な派遣元には個別に周知

同省は、派遣元から毎年6月末までに提出される事業報告書(労使協定の写しを添付)をもとに対応が必要となる派遣元をすべて把握できるため、都道府県労働局を通じて個別に対応を促すとともに、支援措置などを周知する考え。政府の誤りが原因であるものの、違法状態の速やかな解消を図る観点から、9月末までを一定の期限として派遣元に対応を依頼する。仮に対応が遅れ9月末を過ぎても、年度内は助成対象とする。

なお、現行の労使協定において、訂正後のハローワーク別地域指数を参照した一般賃金水準を上回る賃金水準を定めていた派遣元であれば、労使協定の再締結等の対応は必要ない。ただ、一般賃金水準に対する自社の賃金額の相対優位度を維持するために賃金の引き上げを行った場合は、助成対象とする。

労政審では雇用保険二事業の活用に疑義

省令案が審議された労働政策審議会では、政府の誤りにより生じた対応でありながら、事業主の保険料を財源とする雇用保険二事業を活用することに関して、疑義や意見等が相次いだ。だが、①労働者の賃金に関する事案であること②迅速な対応が求められること③誤りのあったハローワーク別地域指数を活用している派遣元は小規模の事業主が多いこと④今回限りの措置とすること⑤前例としないこと――を要件に雇用保険二事業による支援も「やむを得ない」と了承した。

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