日本総研が「価値に基づく診療報酬」の構築を提言(2023年4月20日)
日本総合研究所は4月20日、医療の価値に基づく診療報酬制を構築するなど医療保険・医療提供・財政に関する提言を発表した。①プライマリ・ケア提供体制の構築②医療の価値に基づく診療報酬制度の構築③給付と負担に関する国民的議論の活性化――の3つのテーマについて提案を行っている。
提言は医療提供に関しては、地域ごとに多職種連携によるプライマリ・ケア提供体制の構築を提案。医師一人ではプライマリ・ケアの実現は難しいとして、薬剤師や看護師、ケアマネジャー、保健師、社会福祉士など、地域の状況に応じて多種多様な職種が連携してプライマリケア・チームの体制をつくるべきとしている。
医療保険に関しては、提供する医療の価値に基づく診療報酬制度を構築することを提案。現在、医療の価値が低いと言える医療を継続的に特定する仕組みがあるといえず、仮にそのような医療を特定できたとしても、医療保険の給付対象から外す仕組みは十分ではないと指摘。提言では「医療サービスの投入量評価中心の制度から、医療サービスの価値評価を重視した制度へとシフトしていくべき」と主張し、ヘルスケア・データを利活用することで、診療報酬・医療保険の給付範囲をエビデンスに基づき迅速・効果的に検討できるようになると訴えている。
医療費節約のためにも「データに基づく医療が大切」
財政については、医療の非効率に着目すると医療費削減の余地は数兆円規模に上ると指摘。給付と負担の均衡に関する議論を先送りすることなく、日本の医療のあるべき姿を国民が理解し、議論できる機会を設けるべきと主張した。
会見で提言を説明した、日本総研「健康・医療政策コンソーシアム」統括の川崎真規・日本総研リサーチ・コンサルティング部門上席主任研究員は、「議員や官僚に提言を提出し、政府の直近の骨太方針にいかに反映していくかも含めて、進めていきたい」と述べた。
翁百合理事長は、価値に基づく医療について、「医療データをどう利活用していくか、といことだ。電子カルテなどの情報連携も進んでいるが、体制構築を急ぐ必要がある。医療には、兆円単位の無駄がある。医療費を節約するためにも、データに基づく医療が大切だ」と述べた。