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#24 専業主婦が死亡した場合の夫と子の遺族年金請求

石渡 登志喜(いしわた・としき)/社会保険労務士・年金アドバイザー

今回は、専業主婦(国民年第3号被保険者)の妻が死亡し、遺された夫に子ども(20歳と17歳)がいるケースです。年金機能強化法により、シングルファザーにも遺族基礎年金が支給されるようになりました。一方で、夫の前年収入は920万円と収入要件を上回っています。夫と子の遺族年金はどうなるのか、見ていきます。


【事例概要】
死亡者:B子さん(昭和53年7月10日生まれ:44歳/専業主婦)
・Aさんの戸籍上の妻(国民年金第3号被保険者)
・令和5年5月2日 病死
 
請求者:Aさん(昭和42年9月4日生まれ:55歳/会社員)
・長男X(平成15年4月3日生まれ:大学生・20歳)
・長女Y(平成18年4月18日生まれ:高校生・17歳)
・令和5年5月18日 遺族年金請求に年金事務所に来所


年金機能強化法による妻が死亡した場合の夫の遺族基礎年金の請求

厚生年金被保険者であるAさんが、妻のB子さんが病死されたとのことで、遺族年金の請求に来所されました。Aさんの持参した戸籍謄本によると、大学生の長男X(20歳)と高校生の長女Y(17歳)がいることがわかりました。

平成26年4月1日施行の「年金機能強化法」より、妻が死亡した場合にも夫に遺族基礎年金が支給されることになりました。国民年金法第37条の2(遺族の範囲)第1項「遺族基礎年金を受けることができる又は子」が「遺族基礎年金を受けることができる配偶者又は子」に拡大され、この際、死亡した妻が国民年金第3号被保険者であっても、夫に遺族基礎年金が支給されることが明示されました。

ただし、Aさんが遺族基礎年金を請求できるか否かは、他の要件についても確認しなければわかりません。

一つ目は、死亡したB子さんの保険料納付要件です。
国年法第37条ただし書きに「ただし、第一号(被保険者の死亡)又は第二号(60歳以上65歳未満であるものが、死亡)に該当する場合にあっては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは、この限りでない」と規定されています。

ここで言う「被保険者の死亡」とは、国民年金被保険者のことなので、第3号被保険者の死亡であっても要件は満たすこととなります。

二つ目は、配偶者による生計維持子との生計同一要件です。
国年法第37条の2第1項第1号に「配偶者については、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によって生計を維持し、かつ、次号に掲げる要件に該当すると生計を同じくすること」と規定されています。

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