【詳解】第83回社会保障審議会介護保険部会(10月9日)
介護保険部会が地域包括支援センターやケアマネジメントなどを議論
社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫部会長)は9日、地域支援事業等の更なる推進や被保険者・受給者の範囲の拡大を議題に議論を深めた。
地域支援事業等では、地域包括支援センターの業務負担の軽減や、ケアマネジメントなどが論点として示された。
包括の業務負担軽減では、複数の委員が、介護予防ケアマネジメント業務の外部委託を進めることを求めた。
また、適切なケアマネジメントの実現に関連して、複数の委員がケアマネジャーの処遇改善を訴えた。
包括の業務は増大するが、配置の平均人数は横ばい
地域支援事業等について、厚労省は、地域包括支援センターやケアマネジメント、総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)、在宅医療・介護連携推進事業に関する論点を示し意見を求めた。
なお、生活支援体制整備事業については議題に上がらなかった。厚労省は部会の要請があれば議論を行う意向を示している。平成30年6月時点で、生活支援コーディネーターの配置は市町村圏域である第1層は9割、生活圏域の第2層で7割。また協議体の設置は第1層で8割、第2層で6割となっている。同事業は30年度から完全施行されている。
地域包括支援センターは年々増加しており、平成30年4月末時点で全国において5079か所設置されている。委託の割合も年々高まっており、77.3%(3924か所)が委託で、市町村の直営は22.7%(1155か所)に止まっている(図表1・2)。
包括の増加に伴い、従事者数も年々増加しているが、1センター当たりの平均職員数をみると29年度調査では6.0人で27年度調査と同じである(図表3)。
一方、包括の業務量も年々増加。たとえば総合相談件数も年々増加しセンター1か所あたり件数では29年度で2601件と前年度より124件増加した(図表4)。
また介護予防ケアマネジメント業務(介護予防支援・第1号介護予防支援)は包括の業務の3割程度を占め、負担となっていることが指摘される(図表5)。
介護予防支援の外部委託も増加。28年度の委託の割合は前年度から2.7ポイント上昇し47.7%となっている(図表6)。
こうした状況を踏まえ、厚労省は、包括の具体的な体制強化の方法や、居宅介護支援事業所等と連携して地域における相談支援の機能の強化などに関して議論を要請した。
また介護予防ケアマネジメント業務については、「要支援者等に対する適切なケアマネジメントを実現する観点から、外部委託は認めつつ、引き続き地域包括支援センターが担うことが重要ではないか」と指摘。委託しやすい環境の整備について意見を求めた(図表7)。
他方、ケアマネジメントについて、「高齢者が地域とのつながりを保ちながら生活を継続していくために、医療や介護に加えて、インフォーマルサービスも含めた多様な生活支援が包括的に提供されることが重要」と強調し、インフォーマルサービスも盛りこまれたケアプランの作成を推進していくための方法について議論を求めた。
ちなみに介護支援専門員の業務負担が大きい業務では、「インフォーマル・サポート導入のための事業所探し・調整」が40.8%に上っている(図表8)。
また厚労省は、適切なケアマネジメントの実現のために、ケアマネジャーの処遇改善や事務負担軽減等の必要性を指摘。具体的な方法について尋ねた(図表9)。
複数がケアマネジャーの処遇改善を訴える
こうした論点に対して、全国市長会の大西秀人委員は、地域包括支援センターの業務負担が増加している点を指摘。さらに「要支援から要介護の移行時における切れ目のない支援を実施できる利点もある。地域の実情に応じて、介護予防ケアマネジメント業務を居宅介護支援事業所が担える柔軟な対応を可能とすべき」と求めた。
また主任ケアマネジャーの研修時間が70時間であることから、「現場業務に支障をきたすこともあろうかと思う」として負担軽減の検討を要請した(図表10)。
他方、ケアマネジャーの安定的確保の面から「何らかの処遇改善が必要」と指摘。複数の委員が、処遇改善加算の対象とすることなど、処遇改善を行うことを訴えた。
日本医師会の江澤和彦委員も「介護予防ケアマネジメントを居宅介護支援事業所に移行することを提案する」と述べ、さらに委託料の原資となる報酬単価の引き上げの検討の必要性も指摘した。
令和3年3月まで経過措置が設けられている、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネジャーとすることについて、管理者が主任ケアマネでない事業所が43.7%に上ることに言及。「今後の検討課題」と述べた(図表11)。
この点について全国老人福祉施設協議会の桝田和平委員も同調し再検討を要請。加えて主任ケアマネの研修受講要件に関しても見直しを求めた。
要支援者等は自己決定できることから「介護予防ケアマネジメントの中身を簡素化する方向で検討すべき。地域包括支援センターが担っていけるようにすべき」と指摘した。
日本介護支援専門員協会の濵田和則委員は、居宅介護支援事業所が介護予防支援事業所の指定を受けられるようにすることや、業務負担にあった報酬単価とするよう検討することを訴えた。インフォーマルサービスの導入による費用軽減効果もあることを指摘し、そのケアマネジメントの評価も求めた。
全国知事会の黒岩祐治委員の代理の柏崎克夫参考人は、地域包括支援センターの体制整備で、「包括的支援事業の交付金や基準額の引き上げも含めた検討が必要」とした。
厚生労働省は、居宅介護支援事業所の管理者要件の見直しやケアマネジャーの処遇改善について、社保審・介護給付費分科会で今後、検討を求める考えだ。
総合事業の上限設定の弾力化に健保連などが反対
総合事業について厚労省は、◇国が上限を定めているサービス価格について市町村による柔軟な設計を認めること◇総合事業の総額について後期高齢者数の伸び等を踏まえた上限が設定されているが、重度化防止・自立支援等に積極的に取り組む市町村に弾力的な運用を認めること◇要介護認定を受けた後も総合事業のサービス対象とする対象者の弾力化─など柔軟な運用などについて意見を求めた(図表12)。
在宅医療・介護連携推進事業については、地域の実情に応じて取り組み内容の充実を図りつつ、PDCAサイクルに沿った取り組みを更に進められるようにするために、現行の事業体系の見直しを含め、その方策を尋ねた(図表13)。
意見交換で、全国町村会の藤原忠彦委員は、介護予防事業に熱心に取り組む市町村からは現行の上限設定と個別協議では「介護予防の積極的・継続的な取り組みがやりにくい」という声もあるとし、見直しを要請した。
一方、健保連の河本滋史委員は、総合事業の事業費の弾力化について、「まずは事業費の中で効率化を進めるべき。性急な見直しをすべきではない」と述べた。
協会けんぽの安藤伸樹委員も同様に反対し、「仮に上限額の弾力化を議論するのであれば、財源の一部を負担する現役世代の納得も得られるように介護費用の削減効果がどうなっているかなどアウトカムを示した上で議論すべき」とした(図表14・15)。
市長会の大西委員は、総合事業の住民参加型のサービスBについて、要介護になった利用者から、サービス利用の継続を求める声があることから、「対象者の弾力化は意味がある」とする一方、保険者の負担増もありえることから、調査等も踏まえた慎重な検討を求めた。
在宅医療・介護連携推進事業について、日医の江澤委員は、「市町村が医療行政に携わる登竜門。地区医師会と良好な関係なくしてはできない」とし、共同で取り組みよう求めた(図表16・17)。
第1号・第2号被保険者の年齢区分などの見直しの意見を求める
厚労省は、被保険者・受給者の範囲について、論点を追加して議論を求めた。
第1号被保険者と第2号被保険者は、現行65歳で区切られ、それにより保険料の設定・徴収方法と給付を受ける要件に差異が設けられている。サービス給付は、第2号被保険者の場合は特定疾病に起因する要介護状態等に限定されている。
こうした点を踏まえ、第1号被保険者と第2号被保険者の対象年齢についてどう考えるか提起した(図表18)。
たとえば、第1号被保険者の年齢を75歳に引き上げた場合、第2号被保険者となる65歳や70歳の人が、今まで受けられていたサービスが受けられなくなる可能性が生じる。また第2号被保険者となった高齢者が雇用されると事業主負担も生じてくる。
8月29日の意見交換では、「近年60歳代後半の方の就職率の上昇や要介護認定率が低いことを勘案すると将来的には第1号被保険者の年齢を引き上げる議論も必要ではないか」との意見が出されていた。
健保連の河本委員は、「高齢者の医療費負担など現役世代は相当な負担を強いられている。現役世代の負担をさらに拡大するような被保険者の範囲を下に拡大することは慎重であるべき」と主張した。
日本経団連の井上隆委員は意見書を提出。2号被保険者の年齢引き下げは、更なる負担増となる若年層の理解を得ることが難しいことを指摘。また「第1号被保険者と第2号被保険者の対象年齢の見直しは、給付や保険料に大きな影響を与える」「介護保険制度のみならず、年金や医療、働き方改革など全世代型社会保障の幅広い観点からの議論が必要」などと慎重な議論を求めた。
介護予防に関する評価指標案が説明される
その他、一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会(遠藤久夫座長)の検討状況が報告された。
3日の同検討会で、「PDCAサイクルに沿った介護予防の推進方策」について、「介護予防に関する評価指標」案について議論されたことが説明された(図表19-25)。