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【詳解】第81回社会保障審議会介護保険部会(9月13日)


介護保険部会が介護保険事業計画やサービス基盤の整備を議論

社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫部会長)は9月13日、次期介護保険制度改正に向け、▽介護保険事業(支援)計画▽介護サービス基盤の整備▽認知症施策の総合的な推進─の3点を議題として議論を深めた。厚労省は、2021年からの第8期計画から2040年までを展望して基盤整備などを進める必要を示した。厚労省は、自治体に示している基本指針に2040年を展望して取り組みを進めることを盛り込む方向であり、基本指針については法改正後に検討を深める見通しだ。

意見交換では、サービス基盤整備で複数が有料老人ホームなど居住系サービスの活用を求める一方、一定の規制の必要性を提起する意見も出された。認知症施策の総合的な推進では、複数の委員が認知症サポーターの活用を求めた。

2040年を展望した取り組みを進めることが必要

厚労省は、「介護保険事業(支援)計画」について、第6期(2015~2017年度)や第7期(2018~2020年度)では、団塊の世代が75歳以上となる2025年を展望して施策展開を図ってきたが、第8期(2021~2023年度)は団塊ジュニア世代が65歳以上となり高齢人がピークを迎える2040年を展望して取り組みを進める必要があることを指摘した(図表1)。

▲図表1 介護保険事業(支援)計画(取り巻く環境の変化と課題)

さらに第8期計画における取り組みの方向性として、▽地域の実情に応じた介護サービスの基盤の整備▽認知症施策の総合的な推進▽介護予防・健康づくりを進める上での地域支援事業の効果的な推進▽保険者機能の更なる強化▽介護人材の確保・介護現場の革新・負担軽減──を示した(図表2)。

▲図表2 介護保険事業(支援)計画(第8期計画における取組の方向性)

2040年までで保険者によりサービス利用者の推計で地域差

「介護サービス基盤の整備」についは論点として、①地域の実情に応じた整備②都市部・地方の課題に応じた整備手法③サービスごとの整備と介護離職ゼロに向けた小規模多機能型居宅介護などの「介護離職ゼロサービス」の推進との関係④増加している都市部での需要を受け止めている特定施設などのサービスをどう考えるか─の4点を示した(図表3・4)。

▲図表3 介護サービス基盤整備(都市部と地方部)
▲図表4 介護サービス基盤整備(施設サービスと高齢者住まい)

論点の背景として、厚労省は、高齢化の進展に地域差があり、各保険者での2040年までの介護サービス利用者を推計すると、ピークを過ぎて減少に転じた保険者もある一方、都市部を中心に2040年まで増え続ける保険者が多く、地域差が確認されることを提示(図表5)。

さらに利用者数の増加率を見ても、都市部を中心に計画的な整備を進めていくことが求められる地域が多いことをあげた。

▲図表5 保険者別の介護サービス利用者数の見込み

他方、第7期計画期間(2018~2020年度)での基本指針では「介護離職ゼロ」に向けた基盤整備が目標として明記。介護離職ゼロについては2020年代初頭までに約50万人分の受け皿整備を行うことが政府の目標とされており、第7期計画ではそれに向けてサービス整備を前倒ししている(図表6)。

▲図表6 第7期介護保険事業計画におけるサービス量等の見込み

都市部などの需要に対応した整備を進めるため、特養ではたとえば土地・建物の自己所有の要件緩和や面積基準の引き下げ、オーナー型の施設整備費への補助を進めている(図表7・8)。

▲図表7 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)について
▲図表8 介護老人福祉施設の都市部における整備の促進

一方、都市部では特定施設入居者生活介護の整備が進んでいることを提示。現状では約半数が要介護3以上で重度者の受け皿となるとともに、契約者の半数以上が死亡退去で「終の棲家」の役割も果たしているとした。また自己負担に幅があり、「必ずしも高所得者向けとは言えない」などと紹介した(図表9-12)。

▲図表9 高齢者向け住まいについて(サービス別の整備量)
▲図表10 特定施設入居者生活介護について(要介護度)
▲図表11 特定施設入居者生活介護(退居人数割合)
▲図表12 特定施設入居者生活介護について(利用月額)

大綱を踏まえた認知症施策の計画での位置づけや法改正を検討

「認知症施策の総合的な推進」に関する論点としては、認知症施策推進大綱を踏まえ、▽第8期計画における認知症施策の位置づけや盛り込むべき内容、重点化・明確化すべき内容▽他の計画との関係▽介護保険法における認知症施策の推進に関する規定(第5条の2)の見直し─を示した(図表13)。

また議員立法による「認知症基本法案」が国会に提出され、継続審議になっていることも紹介した。

▲図表13 認知症施策の総合的な推進(論点)

2017年介護保険法改正では、国・地方公共団体に対して施策推進に当たり、認知症の人・家族の意向を尊重する努力義務を明記するなど、新オレンジプランの考え方を位置付ける見直しがなされた。今般の大綱では従来からの認知症との「共生」に加えて、認知症の「予防」を重視する考えが盛り込まれており、こうした点を踏まえて見直しが進められることが考えられる(図表14)。

▲図表14 新オレンジプランと「認知症施策推進大綱」の比較

基盤整備で有料老人ホームなどの活用を求める

高齢者向け住まい・施設の利用者数を見ると、2018年で特養が61万人と最も多いが、有料老人ホームが急増し51万4千人と続いている(図表15)。

▲図表15 高齢者向け住まい・施設の利用者数

日本商工会議所の岡良廣委員は、介護施設の整備について「有料老人ホームの促進など民間の力を上手く引き出す方策をお願いしたい」と求めた。さらに特養の経営に株式会社等の参入を認めるよう要望。「介護施設での生産性の向上も期待できる」とした。

健保連の河本滋史委員は、計画について「給付適正化や介護予防の取り組みにより、最終的にアウトカムを出していくことがポイントではないか。目標を検討していくことが今後必要ではないか」と指摘した。基盤整備について「特定施設などの居住系サービスも含め全体を俯瞰した上で整備を進める必要があるのではないか」と述べた。

日本介護福祉士会の石本淳也委員は、特定施設で看取りなども行っている現状から、「介護離職ゼロに向けた基盤整備の対象サービス」に追加することを主張。さらに基盤整備とともに人材確保の重要性を強調し、事業計画の基本的事項として市町村でも計画的に人材確保を実行していくよう訴えた。

一橋大学大学院教授の佐藤主光委員は、「人口には波がある」と指摘。高齢者増に合わせて施設を増やすと、将来減少後に困ることから、「長い目で見れば転用できること、あるいはいつでも潰せることを前提に施設はつくらなければならない」とした。廃校を利用した施設整備などの優良事例の効果的な横展開も求めた。

また計画策定ではPDCAサイクルをきちんと機能させる重要性を指摘した。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、基盤整備について、本当の特養待機者などニーズをきちんと把握した上で進めることを訴えた。「介護離職ゼロ」への対応では、安易に特養やサービス付き高齢者向け住宅など「ハコモノ」を整備しないように指摘した。

全国知事会の黒岩祐治委員(神奈川県知事)の代理で出席した神奈川県の柏﨑克夫参考人は、介護保険法施行前に整備された特養などの施設が老朽化し大規模修繕の時期を迎えている一方、医療介護総合確保基金による支援の対象外となっていることを指摘。大規模修繕の支援の検討を求めた。

また「有料老人ホームとサービス付高齢者向け住宅について特定施設入居者生活介護の指定を受けていない場合は総量規制の対象になっていない。地域の在宅サービス等の資源とのバランスを図る観点から定量制など一定程度関与を高める必要があるのではないか」と提起した。

医療療養病床からの介護医療院の転換で第7期計画では総量規制の対象外になっていることから、小規模保険者で保険料に影響が出ている事例があることを紹介。「転換促進の面とこうした事例への対応の面から検討をお願いしたい」と求めた。

日本医師会の江澤和彦委員は、長期的な視点での事業展開を検討する必要性があることから、「2040年までの要介護高齢者の人数を十分に精査した計画策定をお願いしたい」と要請。「20年後にもニーズがあるのか、そういった視点も重要」とした。

2025年までに、医療療養病床の医療区分1など追加的に30万人を入院外で対応しなければならなくなることから、「地域医療構想と介護保険事業計画との整合性」を図るように主張。「地域医療構想は医療だけで完結するものではない。私は常々、地域医療構想を『地域医療介護構想』にすべきと申し上げている」と述べた。

看取りなどが進む特定施設入居者生活介護について、「看護師の配置が薄い」などと指摘し、「特定施設入居者生活介護の医療ニーズへの対応の強化を進めていくべき」とした。

介護医療院が創設されて1年半がたったことから、課題などについて全国の市町村にアンケートを行うよう要望。地方では医療療養病床から転換の希望があっても「規模の小さい市町村では、介護保険財源や保険料の上昇の問題などがあり、すぐに受けられない実態がある」と紹介。アンケートを行い、医療療養病床からの受入が難しい市町村が多い場合には、「国からの支援が必要ではないか」と指摘した。

複数の委員が認知症サポーターの活用で支援を要請

認知症施策の総合的な推進では、複数の委員が認知症サポーターの活用を求めた。

桜美林大学大学院教授の鈴木隆雄委員は「認知症サポーター活動促進事業」(図表16)に触れ、認知症の人への見守り活動などで、「認知症サポーターの活動を促進することが非常に大事」としてステップアップ研修の促進などを求めた。あいち健康の森健康科学総合センターの津下一代委員も認知症サポーターの活用に向けた支援を要望した。

▲図表16 ピアサポート活動支援事業/認知症サポーター活動促進事業

民間事業推進委員会代表委員の山際淳委員は、認知症サポーターの活用で、実践事例など「サポーターに継続的に情報を提供してはどうかと思う」と述べた。また「介護離職防止する意味合いでも各企業で認知症の研修や情報提供の場を強化してはどうか」と提案。さらに「認知症の人や家族を支える上でグループホームが非常に重要な役割を果たしていると思う。ユニット数の拡大を検討すべきではないかと思う。グループホームの専門性や効果、エビデンスに関する調査活動も必要ではないか」とした。

全国健康保険協会理事長の安藤伸樹委員は、「認知症前臨床期を対象とした薬剤治験に即刻対応できるコホートを構築する研究」に言及。「認知証の薬を開発している製薬企業が、お金がかかりすぎて諦めてしまうニュースを見た。国として色々と大規模研究施設にサポートしていると思うが、諦める企業が出ないようにもっと力を入れてほしい」と要望した。

認知証の人と家族の会の花俣ふみ代委員は、認知症施策の総合的な推進に言及。大綱では施策のKPIが設定されていることから自治体でもそうした点を踏まえて計画策定を行うように求めた。

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