障害児入所施設の18歳以上の過齢児への対応で協議の場を設置へ(10月19日)
厚労省は19日、社会保障審議会障害者部会(駒村康平部会長)に、障害児入所施設における18歳以上入所者(いわゆる過齢児)への対応について、地域生活等への移行調整の枠組みなどを議論する実務者協議の場を設置し、来年夏を目途に結論を得る方針を示した。
福祉型入所施設の過齢児は446人
平成22年の児童福祉法改正(24年施行)において、障害児入所施設に入所する18歳以上の障害者についてより適切な支援行っていくこととし、地域生活や障害者の施設に移行していくことになった。
一方、現に入所している18歳以上の者が退所させられることがないよう、平成30年3月末までの間、障害児入所施設の指定を受けていることで、障害者支援施設又は療養介護の指定基準をみなすものとされた。
その後、都道府県及び市町村が連携を図り、地域移行などを進めたが、特に都市部で強度行動障害者の障害福祉サービス等が不足しており、福祉型入所施設におけるみなし期限を3年間延長し、令和3年3月31日までとした。医療型入所施設では療養介護の両方の指定を同時に受けるみなし規定が恒久化された。
今年2月に公表された「障害児入所施設の在り方に関する検討会」の最終報告では、福祉型入所施設についての「みなし規定の期限(令和3年3月31日まで)を、これ以上延長することなく成人期にふさわしい暮らしの保障と適切な支援を行っていくべき」と提言した。
さらに「22歳くらいまでの柔軟な対応や強度行動障害など本人の障害特性等のために地域や他施設での生活がどうしても困難である場合における対応も含めて検討すべき」とした。
一方、今年7月時点で移行していない障害者は446人おり、移行が困難な者がいることが想定される。年齢別では19歳以下が202人、20代が162人など若年層に多いが、40代以上も31人いる。自治体別でみると、大阪市が62人と最も多い。
実務者協議を12月目途に開始
厚労省は、移行が困難な者の受け入れ先の調整や今後とも毎年18歳以上に達する障害者の移行を図っていくことがあることから、移行調整の枠組みの整備の必要性を指摘した。
さらに、強度行動障害等の受け皿が十分ではないことや、該当者の希望・状況によっては現入所施設に隣接した地域での受け入れが望ましいことから新たにグループホームなどの移行先を整備するケースも想定。
こうした状況から新たな移行調整の枠組みなどを議論する実務者の協議の場を設置し、来年夏までを目途に結論を得る方針を示した。
また、現入所者について、移行先が決まらないまま退所を迫られることが無いようにするため、現在の特例を一定期間継続し、「経過的施設入所支援サービス費」「経過的生活介護サービス費」を支給できるようにする方向で、報酬告示等の改正を検討することとした。
具体的に令和3年度末までを支給期間とするとともに、その後の新たな移行調整の枠組みの検討を踏まえて、最終的な支給期限を決める。ただ施設整備等の準備に要する時間を考慮し、全ての対象者が、円滑に移行できるよう必要な期間を設定する考え。
あわせて円滑な移行支援に向けて障害児入所施設へのソーシャルワーカーの専任配置を報酬で評価することも示した。令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向けて検討されている。
実務者協議の場はオンラインで実施される。構成メンバーは①都道府県②市町村③障害児入所施設の関係者④移行先となり得る障害者施設等の関係者を中心に検討する。
主な協議事項は、▽都道府県等での新たな移行調整の枠組み▽移行先の調整・受け皿整備の有効な方策─など。移行調整の枠組みとして、都道府県も含めた関係者の調整を行う協議会等の設置や自立支援のシステムの構築などを示した。受け皿整備では、グループホーム等の整備や障害児入所施設の障害者施設への転換などを上げた。12月を目途の協議を開始し、来年6~7月頃に結論を得る予定だ。
意見交換では、「やむを得ない」と容認する声とともに、「速やかな解決」を求める意見が出された。またハード面の整備に止まらず、地域移行などが困難な強度行動障害を支える仕組みの導入の必要性も指摘された。
他方、医療型入所施設でも成人の障害者が増えており、地域移行が可能な者でも適切な移行先が見つからず、新たな障害児を受け入れることが困難になることも指摘された。
厚労省はこうした意見も踏まえて協議を進めていく考えだ。