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介護給付費分科会、令和6年度改定に向けBCP策定状況等を調査/2月末頃には簡素化した処遇改善加算様式を通知へ(1月16日)

厚労省は1月16日、第213回社会保障審議会介護給付費分科会を開催し、令和3年度報酬改定の効果検証等、主に次の4点について議論した。

  1. 令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和5年度調査)の進め方について

  2. 介護職員処遇改善加算等の申請様式の簡素化等について

  3. 訪問看護ステーションにおける人員基準に関する地方分権改革提案について

  4. 令和6年度同時改定に向けた意見交換会について


令和5年度調査は6項目を9月目途で速報値を集計

1つ目の議題である令和5年度調査については、4-6月頃に調査票等を検討・決定し、7-8月頃に調査を実施、9月を目途に速報値の集計を目指すスケジュールが示された。

調査項目として素案が挙げられたのは次の6項目。

(1)介護サービス事業者における業務継続に向けた取組状況の把握およびICTの活用状況に関する調査研究事業
介護サービス事業者の業務継続計画(BCP)の策定状況・研修や訓練等の実施状況・課題等のほか、各種会議や業務の場面におけるICTの活用状況やその影響等を調査。また、都道府県・市町村のBCPの策定支援の状況や、災害発生時の対応フロー等を調査。

(2)介護老人保健施設及び介護医療院におけるサービス提供実態等に関する調査研究事業
介護老人保健施設及び介護医療院の基本情報、施設サービスの実施状況、介護報酬の算定状況、利用者の状態・入退所先等の実態を調査

(3)個室ユニット型施設の整備・運営状況に関する調査研究事業
1ユニットの定員が10人を超えるものも含めたユニット型施設について、地域における整備状況やケアの提供体制を含めた運営状況、従来型施設と併設する場合の職員の兼務の活用状況、ユニットケア研修等に関する実態把握を行う。

(4)LIFEの活用状況の把握およびADL維持等加算の拡充の影響に関する調査研究事業
令和5年度に各事業所、各利用者にフィードバックされる内容の利活用状況や課題の把握を実施し、多職種連携(特にリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養等)の促進やその効果の測定に資する内容になっているか等について検証等。

(5)認知症グループホームの例外的な夜勤職員体制の取扱いの施行後の状況把握・検証、必要な対応の検討に関する調査研究事業
3ユニットの認知症対応型共同生活介護事業所へのアンケート調査及び3ユニット2人夜勤を導入している事業所等へのタイムスタディ調査などを実施。

(6)認知症介護基礎研修受講義務付けの効果に関する調査研究事業
令和3年度改定において義務づけられた認知症介護基礎研修の受講状況などの現状を把握するとともに、認知症介護基礎研修の受講義務付けに伴う認知症チームケア等への効果を検証

日本看護協会の田母神委員は(1)の業務継続計画の策定調査について、「特に小さな事業所においては策定に着手できていないと聞いている」と指摘。事業所規模・サービス種別での分析を実施し、必要な支援に結びつけていくことが必要性を訴えると共に、研修・訓練はすべての職員が理解・参画し、地域と連携を取って備えていくことが重要であり、実効性の確保の面でも取組状況・課題を捉えられる調査設計を要望した。

フィードバックの内容とは? LIFEの調査に注目が集まる

(4)に示されたLIFEの活用状況等に関する調査については多くの意見が挙げられた。

全国老人福祉施設協議会の古谷委員は、今後のLIFEの活用については「多くの事業所がデータ提出とフィードバックの活用によりPDCAサイクルの推進に取り組むことが重要」としつつも「現在利用者へのフィードバックがされていないなか、どのように利活用すればよいか不安に思っている事業所も多々ある」と言及した。さらに高齢者をよくする女性の会の石田委員からは具体的なフィードバックの内容について質問があり、厚生労働省老人保健課長は「基本的に利用者の状態をアセスメントした結果の変化などを中心にできる限り分かりやすく示していきたい」と回答した。

日本介護福祉士会の及川委員は、エビデンスに基づいたケアを行うことの重要性を強調。調査研究を通じて介護職員がいかにエビデンスに基づいたケアを提供しているのかが明らかにされることに期待を高めた。

日本歯科医師会の小玉委員は、LIFEを活用したリハビリテーション・機能訓練・口腔栄養に関し、多職種連携の「好事例」の横展開ができるような検討を求め、特に施設に歯科関連職種がいない場合の協力歯科医の関わり方・かかりつけ歯科医や地域の医師会との連携など、具体的な調査を要望した。

また、日本慢性期医療協会の田中志子委員は、老人保健健康増進等事業の調査と重複がないよう、できる限りまとめることで現場への負担を軽減することを要望した。

回収率向上等についての要望も

老人保健健康増進等事業については、全国老人保健施設協会の東委員がそのスケジュールについて言及。令和5年度調査が9月に速報値を見込んでいることを踏まえ、令和5年度老人保健健康増進等事業のエビデンスを報酬改定に織り込めるよう、同じスケジュールで実施することを要望した。

このほか、日本医師会の江澤委員は、質の高いシンクタンクの選定・事務局の関与や回収率を高める工夫を要望した。また、調査項目のなかには要件の緩和や効率化といった内容もあることから、尊厳の保持と自立支援に資するケアの質の担保、介護従事者の労務負担等の検証が必要であること、さらにコロナ禍の影響を大きく受けた調査であるため、調査結果についてコロナ禍の影響を踏まえた検証のしくみも必要であることに言及した。

今回挙げられた意見を踏まえ、具体的な調査設計については、各調査検討組織における委員長を中心に検討されていく。

令和5年度計画書・令和4年度実績報告書より、処遇改善加算等の申請等が簡素化へ

2つ目の議題では、介護職員処遇改善加算等の申請様式の簡素化等について議論された。

これは、12月23日に示された「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」に示された「生産性向上に向けた処遇改善加算の見直し」に向けた改善であり、厚生労働省からは次の3つが示された。

  • [1]計画書における、前年度と今年度の賃金額比較の省略【令和5年度計画書から】

  • [2]実績報告書における3加算の賃金額比較の一本化【令和5年度実績報告書から】

  • [3]計画書及び実績報告書における事業所ごとの賃金総額等の記載の省略【令和4年度の実績報告書及び令和5年度の計画書から】

現状の計画書・実績報告書の様式においては、加算を上回る金額が分配されており、かつ、加算以外の部分で賃金が下げられていないことを確認するため、3種類それぞれの加算の対象者ごとに、前年度と比較して算出した賃金改善額が加算額を上回っているかを確認している。

これに対し、[1]計画書において、今年度の賃金改善見込額がそれぞれの加算見込額を上回ることを確認するとともに、前年度との比較を求めず、加算以外の部分で賃金を下げないことの誓約を求めることとするほか、[2]実績報告書(令和5年度から)では、①今年度の賃金改善額が加算額以上であることを確認した上で、②前年度との比較は3種類それぞれの加算の対象者ごとではなく、3加算一体で計算することとする。

さらに、[3]計画書・実績報告書において、複数の事業所を運営している法人の場合でも事業所ごとの内訳の記載を不要とし、法人単位で確認することとする。

こうした見直しにあたっては、令和5年2月末頃に様式変更の通知が発出される方針が示された。

また、令和5年度分の計画書の提出締切は令和5年4月中旬頃、令和4年度分の実績報告書の提出締切は令和5年6月中旬頃とするスケジュールが示されている。

分科会では今回提示された内容で進めることが了承された。

▲処遇改善加算の新様式について(1)
▲処遇改善加算等の新様式について(2)

簡素化により、手続き・審査面での3加算の一本化へ

処遇改善加算等の申請等が簡素化については、賛同の意見が多数挙げられた。

民間介護事業推進委員会の稲葉委員は、「簡素化については合理的であり、効果的な改善案」として全面的な賛同を示した。一方、各自治体による独自色を懸念し、少なくとも国が示した標準様式での提出を自治体が拒むことがないよう周知を求めた。

全国知事会の山本参考人は、簡略化について賛成しつつも、実績報告書から職種区分がなくなると要件の確認が難しくなること、また法人単位の確認においても指定権者には事業所の一覧が必要であることなどに言及。これらの審査事務とともに、今回の簡素化の趣旨が「事実上手続き・審査面での3加算の一本化」と受け止めていることに言及し確認を求めた。これに対し、厚生労働省老人保健課長より、3つの加算それぞれではなく一本化していくが、①職種については確認できるような様式を考えていくこと、②法人の場合は事業所一覧を引き続き様式に残していくことが回答された。

また、全国健康保険協会の吉森委員はこうした事務手続きについて、原則デジタルの世界で完結できるようなシステムインフラを構築していくことの重要性を訴えた。

日本慢性期医療協会の田中志子委員は、「給付費分科会で話す内容ではないと重々承知している」との前置きの上で、病院における介護の重要性について言及。医療の部分と介護の部分で介護職員を守る場を整備するよう要望した。

同時改定にあたり中医協との「意見交換会」を開催

このほか、3つ目の議題では「訪問看護ステーションにおける人員基準に関する地方分権改革提案について」議論された。

具体的には、令和2年度地方分権改革に関する提案において看護師等の員数を参酌すべき基準とすることが求められたものの、①中山間地域においては、市区町村が必要と認めた場合には特例として、通常の人員基準(常勤換算2.5人)を満たさない場合であっても訪問看護を提供することは可能となっていたことから、②この特例について特別地域加算の対象地域とあわせて指定される仕組みであったことを、令和3年度介護報酬改定によりそれぞれ別々に申請を行うことが可能とする見直しを実施し、「従うべき基準」のままとしていた。

こうした制度の見直し後、サービス確保が困難な離島等の特例及び特別地域加算のいずれかのみに申請した自治体があったことを踏まえ、厚労省からは引き続き「従うべき基準」としてはどうかと示され、分科会において了承された。

さらに4つ目の議題として挙げられた「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会について」では、介護給付費分科会・中央社会保険医療協議会において具体的な検討に入る前に、同時改定関する議題に関連する委員等で意見交換を行う旨が示された。ここでは、あくまで今後の健康危機管理や課題の方向性の共有を目的としており、具体的な報酬に関する方針は定めない。2023年3月以降3回程度の開催を予定しており、会議に出された意見については、介護給付費分科会・中央社会保険医療協議会のほか、障害福祉サービス等報酬改定検討チームに報告するものとされ、これについても分科会において了承された。

第93回よりおよそ10年――田中滋分科会長が任期満了へ

議題終了後、事務局は1月28日をもって田中滋分科会長が任期満了となる旨を示した。

田中滋分科会長は、2001年10月の第1回介護給付費分科会より委員として参加しており、大森彌前分科会長の任期満了後、2013年3月8日第93回介護給付費分科会より分科会長を務めてきた。

挨拶では、設立以来介護をよくしていこうと全員が有識者として取り組んできたと、給付費分科会の在り方を振り返り、委員からは拍手が送られた。

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