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令和4年10月1日より障害福祉サービス等報酬を改定。ベースアップ等加算を創設し、福祉・介護職員を中心とした従業者の処遇改善を図る

政府の「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)を踏まえ、令和4年2月以降、福祉・介護職員の収入を3%程度(月額平均9,000円相当)引き上げるための措置が交付金により講じられています。

この措置は令和4年10月以降、介護報酬および障害福祉サービス等報酬により対応することとなるため、臨時の報酬改定が行われます。


障害者・児を支える事業者への給付「障害福祉サービス等報酬」

障害者総合支援法に基づくサービスは、大きく「自立支援給付」と「地域生活支援事業」に分けられます。また自立支援給付は、「障害福祉サービス」「自立支援医療」「補装具費」「高額障害福祉サービス等給付費」などからなります。

障害者の生活を支えるこれらのサービスのなかでも中心となっているのが、一定の運営基準をクリアした事業所が提供することができる障害福祉サービスです。

障害福祉サービスは、児童福祉法に基づく障害児支援とともに、提供したサービスの内容や量によって全国一律の報酬が定められています。これが「障害福祉サービス等報酬」です。

「ベースアップ等加算」を新たに創設し、令和4年10月より適用

障害福祉サービス等報酬は、上述の通り令和4年10月から改定されます。

具体的には、現行の「福祉・介護職員処遇改善加算」および「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」に加え、以下の⑴から⑷の通り、「福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算」(本稿では以下「ベースアップ等加算」)が新設されます。

⑴ ベースアップ等支援加算の対象(取得要件)

  • 加算対象のサービス種類は、今般の処遇改善がこれまでの数度にわたり取り組んできた福祉・介護職員の処遇改善をより一層進めるものであることから、これまでの福祉・介護職員処遇改善加算等と同様のサービス種類となります。

  • 長く働き続けられる環境を目指す観点から、一定のキャリアパスや研修体制の構築、職場環境等の改善が行われることを担保し、これらの取組を一層推進するため、福祉・介護職員等特定処遇改善加算と同様、現行の福祉・介護職員処遇改善加算(Ⅰ)から(Ⅲ)までを取得している事業所が対象となります(図)。

  • 賃上げ効果の継続に資するよう、加算額の3分の2以上はベースアップ等(「基本給」又は「毎月決まって支払われる手当」)の引上げに用いることが要件とされます。

図◇処遇改善に係る全体のイメージ(令和4年10月報酬改定前後)

⑵ ベースアップ等加算の加算率の設定

  • 事業所における事務負担が少ない形で給付額を算出するため、サービス種類ごとの加算率(表)は、福祉・介護職員処遇改善加算と同様、それぞれのサービス種類ごとの福祉・介護職員の数に応じて設定されます。

表◇福祉・介護職員等ベースアップ等加算(新設)

⑶ 事業所内における配分方法

  • 事業所の判断により、福祉・介護職員以外の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう、柔軟な運用が認められます。その際、より事業所の裁量を認める観点から、事業所内の配分方法に制限は設けないこととされます。

⑷ 交付方法・申請・交付スケジュール

  • 事業所は都道府県等に対して申請し、対象事業所に対して報酬による支払。

  • 申請は、令和4年8月に受付、10月分から毎月支払(実際の支払は12月から)。

  • 賃金改善期間後、処遇改善実績報告書を提出。

改定に伴い書籍『障害福祉サービス報酬の解釈』の一部が変更

今般の報酬改定に伴い、書籍『障害福祉サービス報酬の解釈 令和3年4月版』(発行:社会保険研究所)の一部に変更が生じます。

障害福祉サービス報酬の解釈 令和3年4月版

本書のメインパートである『費用算定基準(単位数表)』の変更内容を新旧対照表に取りまとめましたので、下記よりPDFをダウンロードしてご利用ください。

「第Ⅱ編 費用算定基準(単位数表)」の変更箇所

事務処理手順と様式例を提示

福祉・介護職員処遇改善加算等に関する従来の通知(本書1148頁)は次の通知により令和4年9月30日をもって廃止され、10月より新たな様式等が適用されます。

通知「福祉・介護職員処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和04年07月22日障障発0722第1号) 


令和4年10月よりベースアップ等加算を算定しようとする事業所は、原則として令和4年8月末までに都道府県知事等の指定権者に提出します。これまで交付金を受けている場合であっても改めて計画書を提出する必要があります。

提出書類について、ベースアップ等加算を取得しようとする障害福祉サービス事業者等は、福祉・介護職員等ベースアップ等支援計画書を、別紙様式2-1および2-4により作成します。

また、ベースアップ等加算を取得した障害福祉サービス事業者等は、各事業年度における最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日までに、別紙様式3-1及び3-3の福祉・介護職員等ベースアップ等支援実績報告書を提出し、2年間保存します。

まとめ

福祉・介護職員処遇改善加算等の申請に当たっては、上記「通知」を精読するとともに、提出書類については、様式エクセルデータ等のツールが都道府県等のWEBサイトに掲載されると思われますので、確認のうえご活用いただくことをおすすめします。

なお、今回改定に関するさらなる詳細や書籍『障害福祉サービス報酬の解釈』の変更情報が出てきましたら、この「Web医療と介護」等でお伝えしていきます。

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