見出し画像

通所系サービスで口腔機能向上、栄養改善、入浴の自立を促進──令和3年度介護報酬改定

令和3年度介護報酬改定では、全体的に口腔機能の向上や栄養改善を図る見直しが行われている。通所系サービスでは、口腔の健康状態や栄養状態を適切に管理すること等を狙いに口腔・栄養スクリーニング加算を新設する。また栄養ケア・マネジメントを充実させていくうえで、栄養アセスメント加算を新設する。

他方、入浴の自立を促進するために入浴介助加算を見直す。

先に通所系サービスに共通する内容を紹介する。通所介護や通所リハビリテーションの個別の見直し事項は別途、紹介する。

参考:第199回社会保障審議会介護給付費分科会(1月18日)

通所系サービスに共通する内容

口腔・栄養スクリーニング加算を新設

通所系サービス(通所介護・地域密着型通所介護・療養通所介護・認知症対応型通所介護・通所リハ)に、利用者の口腔機能の低下を早期に確認し、適切な管理を行うことで、重症化の予防や状態の維持、回復につなげる観点から、介護職員等が実施可能な口腔スクリーニングを評価する。現行の栄養スクリーニング加算による取組と一体的に行う。同加算を見直し、口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)・(Ⅱ)を新設する。

口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)の算定要件は次のとおり。

介護サービス事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の口腔の健康状態及び栄養状態について確認し、その情報についてその利用者を担当する介護支援専門員に提供していることを求める。栄養アセスメント加算、栄養改善加算及び口腔機能向上加算との併算は不可とする。

加算(Ⅱ)の算定要件は、栄養改善加算や口腔機能向上加算を算定している利用者について、口腔の健康状態と栄養状態のいずれかを確認し、その情報についてその利用者を担当する介護支援専門員に提供している場合に算定できる。栄養アセスメント加算、栄養改善加算又は口腔機能向上加算を算定しており、加算(Ⅰ)を算定できない場合のみ算定できる。

また口腔機能向上加算に科学的介護情報システム(LIFE。現行のCHASE・VISITを統合したもの)にデータを提出するとともに、そのフィードバックの活用によりPDCAサイクルを推進しケアの質の向上を図ることを評価する新たな区分を創設する。

こうした口腔機能向上に向けた取組は、多機能系・居住系サービスでも同様に行う。

栄養ケア・マネジメントの充実

通所介護・通所リハ・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・看護小規模多機能型居宅介護において、栄養改善が必要な利用者を把握し、適切なサービスにつなげていく観点から取組を拡充する。「栄養アセスメント加算」を新設する。算定要件は次のとおり。

▽管理栄養士を1名以上配置する。配置は、外部の他の介護事業所や医療機関、介護保険施設、日本栄養士会や都道府県栄養士会が設置・運営する「栄養ケア・ステーション」との連携でも可能とする。ただし介護保険施設については、常勤で1以上又は栄養マネジメント強化加算の算定要件の数を超えて管理栄養士を配置している施設に限る。

▽利用者ごとに、管理栄養士や介護職員、生活相談員等が共同して栄養アセスメントを実施し、その結果を利用者・家族に説明し、必要に応じて相談などに対応する。

▽LIFEにデータを提出するとともに、そのフィードバックを栄養管理に活用する。 他方、栄養改善加算では、必要に応じて居宅を訪問することを新たに求める。

他方、栄養改善加算では、必要に応じて居宅を訪問することを新たに求める。

入浴の自立を促進するため入浴介助加算を見直し

通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護の入浴介助加算(50単位/日)について利用者の自宅での入浴の自立を促進する観点から見直す。加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)を設定する(併算は不可)。

加算(Ⅰ)は、現行の加算と同じ要件であり、入浴介助を適切に行うことができる人員及び設備を有して入浴介助を行うことを求める。報酬は40単位/日と、現行より下げられる。現行の加算が多くの事業所で算定されていることを踏まえ、新設される加算(Ⅱ)の取組を促進するため。

加算(Ⅱ)では、加算(Ⅰ)の要件に加えて次の要件を求める。加算(Ⅱ)では55単位/日を算定できる。

(1)医師・理学療法士・作業療法士・介護福祉士・介護支援専門員等(医師)が利用者宅を訪問し、浴室における利用者の動作及び環境を評価する。

浴室について、利用者自身又は家族等の介助により入浴することが難しい環境の場合、訪問した医師等が、介護支援専門員・福祉用具専門相談員と連携し、福祉用具の貸与・購入・住宅改修等の浴室の環境整備について助言する。

(2)事業所の機能訓練指導員等が共同して、利用者宅を訪問した医師等と連携の下で、利用者の身体状況や利用者宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成する。

(3)入浴計画に基づき、個浴や利用者宅の状況に近い環境で、入浴介助を行う。

通所リハでも同様に入浴介助加算を見直し、加算(Ⅱ)を新設する。

要件もほぼ同様だが、(2)が異なっており、事業所の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、医師との連携の下で、利用者の身体状況や訪問により把握した利用者宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成することを求める。通所リハの入浴介助加算(Ⅱ)の報酬は60単位/日と、通所介護等より5単位高く設定されている。

リハ計画書と個別機能訓練計画書の書式の見直し

リハビリテーション計画書と個別機能訓練計画書の書式を見直し、項目の共通化を図るとともに、リハ計画書の固有の項目の整理・簡素化を行う((地域密着型)通所介護、通所リハ、訪問リハ、短期入所生活介護に関係する見直し)。

同一建物減算適用時の限度額は適用前で算定

通所系サービスの同一建物減算の適用を受ける利用者の区分支給限度基準額の管理は、減算の適用前(同一建物に居住する者以外の者に対してサービスを行う場合)の単位数を用いる。同様の見直しを多機能系サービスでも行う。

また通所介護・通所リハの大規模型の利用者の区分支給限度基準額の管理は、通常規模型の単位数を用いることとする。

サービス提供体制加算の見直し

サービスの質の向上や職員のキャリアアップを一層促進する観点からサービス提供体制加算を見直す。

より介護福祉士の割合が高い、又は勤続年数が10年以上の介護福祉士の割合が一定以上の事業者を評価する新たな最上位区分(加算Ⅰ)を設定する。

また勤続年数要件は、より長い勤続年数を設定する。介護福祉士割合要件の下位区分や勤続年数要件による区分などを統合し、いずれかを満たすことを求める区分を設定する(加算Ⅲ)。

通所系サービスのみならず、各サービスで同様に見直す。

加えて、訪問入浴介護・夜間対応型訪問介護では、現行の介護福祉士割合要件とともに、勤続年数が一定期間以上の職員の割合に係る要件を設定し、いずれかを満たすことを求める(加算Ⅲ)。 訪問看護・訪問リハでは、現行の区分に加え、より長い勤続年数で設定した要件による新たな区分を設ける。

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。