遺族年金のしくみと手続~詳細版|#3 死後認知された子の遺族年金受給権
今回は、死亡者の内縁の妻に胎児がいた場合の遺族年金をご紹介します。死亡者が死亡して半年後にこの子は出生し、その1年後に死亡認知の判決が確定しました。一方、死亡者には戸籍上の妻がいて、すでに遺族厚生年金を受給中です。内縁の妻には多額の不動産収入があり、死亡者との生計維持関係はありません。
そこで、死後認知された子と、戸籍上の妻のどちらが遺族年金を受給できるのか、法律に基づいて見ていきます。
A雄さん死亡後に生まれた子の死後認知
A雄さんが死亡したので遺族年金の請求をしたいとのことで、内縁関係にあったB子さんが年金相談に来所されました。A雄さんの死亡は令和元年10月25日で、B子さんの来所は令和3年6月20日です。A雄さんの死亡後、1年以上が経過しているので、何か事情がありそうな気がしましたが、状況確認のために話を聞いて行くと、次のようなことがわかりました。
まず、B子さんの持参した戸籍謄本を確認すると、A雄さんとの間に令和2年5月5日生まれのC君が記載されており、死後認知となっていました。
「死後認知」とは、父親が亡くなった後、婚姻関係にない男女の間に生まれた子(非嫡出子)との間で法律上の親子関係を発生させる手続のことです。非嫡出子は、当初は父親との間に法律上の親子関係を持ちませんが、父親から「認知」を受けることによって、法律上の親子関係を発生させることができます(民法第779条)。
原則として、認知は、生前に父親本人の意思によって行うものですが、父親が認知に非協力的な場合や、非嫡出子を認知する前に死亡してしまった場合などには、非嫡出子の親子関係から生じる権利を保護するため、「認知の訴え」を提起することが認められています(民法第787条)。
今回のケ-スは、A雄さんが突然死であったため「死後認知」となったようです。
B子さんは、内縁関係にあったA雄さんの死亡後、民法第787条(認知の訴え)に基づいて認知の訴えを提起し、C君はA雄さんの子であるとの判決を得ました。また、民法第784条(認知の効力)によれば「認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできない。」と規定されています。なお、C君の死後認知の裁判確定日は令和3年5月15日となっていました。
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