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介護保険制度改正に向け 地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進で意見(5月16日)

社会保障審議会介護保険部会は5月16日、次期介護保険制度改正に向けて、地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進をテーマに議論した。次回も引き続き同テーマで話し合う。

論点として、◇在宅・施設を通じた介護サービスの基盤整備、住まいと生活の一体的な支援◇医療と介護の連携強化、自立支援・重度化防止の取り組みの推進◇認知症施策・家族を含めた相談支援体制◇地域における介護予防や社会参加活動の充実◇保険者機能強化―があげられた。

論点に沿って、委員の意見を紹介する。

在宅・施設を通じた介護サービスの基盤整備、住まいと生活の一体的な支援

委員からは、主に人材確保と在宅生活の継続に関して意見が出された。

UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの染川朗委員「施設、居住系サービスに移行しなくても、要介護者、同居家族が安心して暮らせるよう、在宅系サービスの限界点を上げることをめざしてもらいたい。しかし、介護人材不足、特に在宅系サービスの訪問介護員については、将来予測に限らず現時点で不足が深刻な状況。介護人材の確保について議論するにあたっては、全体的な将来予測だけでなく、サービス種別ごとの現状を踏まえた上で対策を検討してほしい」。

全国市町村会の杉浦裕之委員「すでに地方、中山間地域、離島等においては、高齢化の進行と労働人口の減少が先行的に進んでいる。各専門職を含む介護人材の不足はすでに深刻。地理的状況等を加味した従事者処遇やサービスの内容、提供体制の柔軟性の維持が重要。一律の制度設計をしていたのでは間に合わない」。

医療と介護の連携強化、自立支援・重度化防止の取り組みの推進

医療と介護におけるデータや情報のさらなる利活用を求める声があがった。

全国健康保険協会の吉森俊和委員は、「オンライン資格確認を通じた薬剤情報、特定健診情報の取得、パーソナルヘルスレコードなど、個々人の医療にかかわるデータの利活用が進められているが、現状で医療分野のみで完結している。介護分野でもこうした情報やデータの利活用を進めていくべき。令和6年度の医療介護総合確保方針の改正を見据えて、制度改正、医療計画、地域医療構想の見直しが進められている。医療サイドと介護サイドの緊密な連携が必要」。

認知症施策・家族を含めた相談支援体制

委員からは、ヤングケアラーを含めた家族介護者支援や、認知症への対応について意見があった。

全国老人保健施設協会の東憲太郎委員「認知症施策推進大綱のコンセプトや5つの柱をみても、認知症の方の自立支援という言葉がない。認知症の方でもやれることや残存能力が多いので、認知症の方に対しても、尊厳だけでなく、自立支援を追求することが必要。また、BPSDなどのネガティブ評価ではなく、ポジティブ評価を施策に加えるべき」。

日本介護支援専門員協会の濵田和則委員「介護保険によるサービスは、原則契約によることを前提としているので、ヤングケアラーやセルフネグレクトである対象者のように、助けを求めない人への対応窓口や支援方策も引き続き検討する必要がある」。

全国知事会の山本参考人「近年、“家族介護者”は“ケアラー”と呼ばれ、家族のケアを担う方の課題が可視化されてきている。これまでは、よりよい介護をするために家族をどう支援するかという視点が主だったが、それだけではなく、負担が過度になって生活に支障をきたしている家族を支援するという視点が必要」。

地域における介護予防や社会参加活動の充実

効果的な介護予防の実施に向けての意見があった。

東委員「通いの場に来ているのは元気高齢者がほとんど。元気高齢者、プレフレイル、フレイルというふうに、3段階に分けて介護予防の議論をすべき。元気高齢者だけでなく、プレフレイルやフレイルの方に、どのように働きかけていくかが重要」。

日本医師会の江澤和彦委員「地域リハビリテーションは、都道府県で体制が構築されており、一般介護予防と連携する仕組みだが、全国的に地域リハビリテーションの活動があまり活性化していない。介護予防を推進するためには、地域リハビリテーションを制度に位置づけて活性化することが不可欠」。

保険者機能強化

地域で人口構造や介護資源等が異なるため、地域差の是正や効率的なサービス提供について意見があった。

健保連の河本滋史委員「第1号被保険者数1人当たりの介護給付費と認定医率の地域差の資料が示されているが、1人当たりの介護給付費が同額程度であっても、認定率に差があるというケースもある。各地域の実態等を検証した上で、地域差の解消に向けた取り組みを推進する必要がある。計画のばらつきや地域差をなくすためには、定性的な記載に留まらず、定量的な目標の設定、達成状況の検証などで、PDCAがしっかり回せるような計画の作成を徹底すべき。その際は、国や都道府県で適正化事業の支援もしっかり行ってほしい」。

女子栄養大学の津下一代委員「地域包括ケアは地域の中だが、医療は広域的になるケースもあり、介護のさまざまなサービスも、それぞれの自治体がすべて準備するということは難しい。例えば、相互乗り入れや、広域化といったお互いのもてる資源を有効活用していく方策を考えていくことがより効率的だと思う」。

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