介護保険被保険者証のマイナカード使用など介護情報基盤について検討――第113回介護保険部会(2024年7月8日)
厚生労働省は7月8日、第113回社会保障審議会介護保険部会を開催。
介護情報基盤に係る法的規定を2026年(令和8年)4月1日施行を目指すとするスケジュール案などが示され、市町村・介護事業者などで必要となる準備など、実施に向けた課題が整理された。
2023年5月に公布された、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」により、被保険者・介護事業者その他関係者が介護情報等を共有・活用することを促進する事業が地域支援事業に位置づけられ、市町村は医療保険者等と共同した国保連・支払基金に事業を委託できるものとされていた(施行は公布後4年以内の政令で定める日)。
また、今年6月21日に閣議決定された「骨太方針2024」において医療・介護DXを確実に推進するとしたほか、同日閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」ではマイナンバーカードを介護保険証として利用する取り組みを、2024年度より先行実施を開始するとともに、2026年度以降全国的な運用を順次開始する旨が示されていた。
分科会では、こうした経緯とこれまでのワーキンググループにおける検討などを踏まえ、介護情報基盤整備の目的や情報の流れのイメージなどが次のとおり示された。
介護情報基盤に関する検討としては、次の3つの課題が示された。
・「本人同意の取得」
・「介護事業所のセキュリティ対策」
・「介護保険被保険者証のペーパーレス化」
「本人同意の取得」については、個人情報保護法の規定により、介護事業所が利用者の情報を閲覧する場合は本人の同意が必要となることから、対応案が整理された。
「介護事業所のセキュリティ対策」では、報酬請求同様インターネット回線回線を活用するほか、端末管理やアクセス権限の管理などの対策について、事業所向けの手引きを作成する案が示された。
「介護保険被保険者証のペーパーレス化」では、たとえばマイナンバーカードを保有していない認定者等には情報が記載された書面を交付するなど、利用者へ配慮のポイントと対応例が示された。
また、市町村・事業者等への配慮についても、検討課題として挙げられた。
こうした介護情報基盤に関し、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」による規定の施行を2026年4月1日施行を目指すものとしたスケジュール案は次のとおりとなっている。
保険者である市町村は介護保険事務システムの標準化に伴う改修を施行日までに対応する必要があることから、今後調達仕様書・自治体システム標準化仕様書などで具体的な仕様が示される見込みだ。
また、介護事業所ではインターネット環境の整備や端末の準備、マイナンバーカードを読み込むカードリーダーの準備などが、2026年4月までの課題として挙げられている。
同意の在り方を引き続き検討、市町村・事業者には費用面のサポートを
議論においては、こうした介護情報基盤の取り組みの推進を肯定的に受け止める意見が相次いだ。
一方で、利用者・市町村・事業者の各面に関する懸念点が寄せられた。
東京都健康長寿医療センターの粟田主一委員は、軽度認知症の高齢者にとっては被保険者証など紙媒体を用いた情報確認が工夫のひとつとなっていることを挙げ、ペーパーレス化が自立生活を阻む障壁とならないよう検討を求めた。
また、一橋大学の佐藤主光委員は、本人同意の本人の範囲や包括同意などの同意の在り方について、情報の2次利用も含めて詰めていく必要性を指摘した。
市町村については全国市長会の大西秀人委員が、システム対応のスケジュール的な困難さを指摘。「期日に間に合わない保険者が出ることは確実」とし、財源の確保とあわせて対応を求めた。
事業者に関しては、日本医師会の江澤和彦委員がイニシャルコスト・ランニングコストの問題を指摘。全国老人保健施設協会の東憲太郎委員も、カードリーダーの準備などの要件をクリアしている事業所はほぼないとし、サポートをしなければ「絵に描いた餅になる」と訴えた。
このほか、女子栄養大学の津下一代委員や日本慢性期医療協会の橋本康子委員は医療システム側からの情報閲覧などの重要性を指摘。医療DXとの連携推進に期待を寄せた。
介護情報基盤については、今後も引き続き介護保険部会において議論される予定となっている。