初診からのオンライン診療の報酬設定で公益裁定(1月26日)
中医協総会(小塩隆士会長)は1月26日、令和4年度診療報酬改定における初診からのオンライン診療の評価を議論した。
しかし、支払側と診療側で意見の隔たりが大きかったため、公益委員による裁定で、見直しの内容を決定した。オンライン診療の初診料は対面診療の288点と新型コロナ対応の「時限的・特例的な対応」の214点の中間程度の水準とする。
小塩隆士会長は、「対面診療との比較で、触診・打診・聴診等が実施できないことを踏まえると、点数水準に一定程度の差を設けることは妥当」と述べた。支払側は、「対面診療と同等の水準とすることを含め、相当程度の引上げが必要」と主張していた。
一方、診療側が主張していた「医療機関と患者との間の時間・距離要件や、オンライン診療の実施割合の上限」については「要件を設けないことが適切」との考えが示された。
また、医学管理料については、対面診療の場合の点数が87点から1681点まであるが、オンライン診療では一律100点となっている(「時限的・特例的な対応では一律147点)。このため、「オンライン診療の初診料の対面診療に対する割合と整合的に設定することが適当」とした。
オンライン診療に係る算定要件、施設基準及び点数水準について
令和4年1月26日
オンライン診療に係る算定要件、施設基準及び点数水準について、公益委員の考えは以下のとおりである。
1.今回改定においては、オンライン診療について、令和2年度診療報酬改定における見直しに加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う時限的・特例的な対応(以下、「時限的・特例的な対応」という。)が令和2年4月から実施されたことに伴う影響、さらに、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、「指針」という。)の見直しが行われたこと等を踏まえて議論が行われてきた。
2.これらの議論を踏まえ、
・1号側からは、算定要件及び施設基準は、見直しが行われた「指針」に基づいて設定するべきであり、「指針」を超える制限を設けるべきではないとの意見があった。また、点数の水準については、対面診療と同内容・同水準で実施される行為は、対面診療と同等の水準とすることも含め、相当程度の引き上げが必要との意見があった。
・2号側からは、算定要件及び施設基準は、「指針」を踏まえつつ、オンライン診療が対面診療の補完であることも考慮し、診療報酬において必要な設定を行うべきとの意見があった。具体的には、対面診療の実効性を担保するため、一定時間内に通院又は訪問が可能な患者に利用を限定することや、オンライン診療のみを専門に扱う医療機関により地域医療に悪影響が生じないよう、オンライン診療の実施割合に係る上限設定は維持することが必要との意見があった。また、点数水準については、対面診療でしか実施し得ない診療行為があること等を踏まえ、対面診療と同等の評価は行い得ず、「時限的・特例的な対応」として設定された水準を基本として設定すべきという意見があった。
3.算定要件及び施設基準については、「指針」に基づいて見直しを行うことが今回の検討の前提であり、また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下において、オンライン診療が活用されてきたことも踏まえれば、患者が適切にオンライン診療を受けることができる環境を整備することが重要となる。一方、オンライン診療の質を確保し、医師が必要と判断した場合にはオンライン診療ではなく、対面診療が行われることも重要である。
4.以上を踏まえると、オンライン診療の算定要件及び施設基準については、「指針」の規定を前提とし、その趣旨を明確化する観点から設定すべきである。「指針」において、「対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められる」とされていることから、保険医療機関において、対面診療を提供できる体制を有すること、また、「指針」において、「オンライン診療を行った医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合については、オンライン診療を行った医師がより適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる」とされていることから、患者の状況によってオンライン診療では対応が困難な場合には、他の医療機関と連携して対応できる体制を有することを求めることが適切である。これらも含め、「指針」に準拠した診療の実施を要件化することを前提として、医療機関と患者との間の時間・距離要件や、オンライン診療の実施割合の上限については要件として設定しないことが適切である。
なお、今後、オンライン診療の実態の把握・検証が可能となるよう、施設基準の定例報告において、オンライン診療の実態についての報告項目を盛り込むなど、必要な対応を講じるべきである。
5.点数水準については、「時限的・特例的な対応」の初診料が214点に設定され、対面診療の場合の初診料288点と比較して、約74%の水準となっている。
6.オンライン診療では、対面診療との比較において、触診・打診・聴診等が実施できないことを踏まえると、点数水準に一定程度の差を設けることは妥当であると考えられる。一方、オンライン診療のみで診療を終え得ることや、国民にオンラインでも適切に診療を届けていくことの重要性も勘案すると、オンライン診療に係る初診料については、対面診療の点数水準と「時限的・特例的な対応」の点数水準の中間程度の水準とすることが適当である。
7.また、医学管理料については、対面診療の場合の点数が87点から1,681点までであるところ、オンライン診療の場合では一律100点に設定されている。また、「時限的・特例的な対応」においては一律147点となっている。オンライン診療に係る医学管理料の点数水準についても、オンライン診療の初診料の対面診療に対する割合と整合的に設定することが適当である。
8.今後、今回改定の影響を調査・検証し、オンライン診療に係る適切な評価等の在り方について、引き続き、今後の診療報酬改定に向けて検討を行うこととする。