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廃止後も介護療養型医療施設の継続を選択する施設が23.7%─平成30年度介護報酬改定効果検証調査が報告される(10月9日)

厚労省は9日、社会保障審議会介護給付費分科会の介護報酬改定検証・研究委員会(松田晋哉委員長)に、平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和2年度調査)の結果(速報)を報告した。その後開かれた介護給付費分科会にも報告した。

令和2年度調査の中で、5年度(2023年度)末で廃止される介護療養型医療施設の移行予定も確認した。2023 年度末時点で介護療養型医療施設であることを選択する施設が23.7%、移行予定が未定は26.6%と合わせて5割に上り、円滑な移行に向けた支援が急がれることが改めて明らかになった。

移行前後で経営面では「良い影響」が58.3%

令和2年度調査では、①医療提供を目的とした介護保険施設等のサービス提供実態及び介護医療院等への移行に関する調査研究②福祉用具貸与価格の適正化に関する調査研究③訪問介護における平成30年度介護報酬改定の影響に関する調査研究④認知症対応型共同生活介護等における平成30年度報酬改定の影響に関する調査研究⑤介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究─を実施している。

今回示された速報は主に令和3年度の介護報酬改定の検討で必要な内容をまとめている。来年3月を目途に最終的な調査結果が委員会での評価を受けた後、分科会で決定される予定だ。

このうち、「医療提供を目的とした介護保険施設等のサービス提供実態及び介護医療院等への移行に関する調査研究」では、▽介護医療院のサービス提供実態▽介護療養型医療施設、医療療養病床及び介護療養型老健施設の移行予定や移行に関する課題▽介護老人保健施設の在宅復帰・在宅療養支援の機能を高めていくための報酬体系の見直しの影響─を把握することが狙い。

介護医療院は319施設を対象に調査を行い、有効回収率は36.1%。介護療養型医療施設は634施設を対象に調査を行い、有効回収率は27.1%である。

介護療養型医療施設は2023年度末に廃止されることが決まっている。

2020年6月時点で介護療養型医療施設である172施設・6263床の移行予定をみると、2023年度末時点は「介護医療院Ⅰ型」が33.1%で最も多いが、23.7%が「介護療養型医療施設」の継続を選択している。

検証・研究委員会で田中滋・埼玉県立大学理事長は、「ここをどうにかすることが重要な課題」と指摘した。加えて「未定」も26.6%になっている。合計すると、5割が介護療養型医療施設を選択するか未定だ。

介護医療院に移行すると仮定した場合の課題は、介護療養病床では「移行するに当たって工事が必要」が41.3%。医療療養病床では「地域で医療機関としての機能を残すことにニーズがある」が41.7%などとなっている。

介護医療院への移行前後で経営面に「良い影響があった」は58.3%であるのに対し「悪い影響があった」が6.1%であった。移行してよかったことでは「経営面でプラス」が40.0%、「ケアへの意識が変わった」が31.3%など。

介護医療院への移行にあたって転院・転棟した患者は、「いなかった」が75.7%。介護医療院の入所者の状態は要介護5及び要介護4の合計が81.7%と重度者が多い。

入所者の日中の平均的な離床時間は「0分より多く30分未満」が17.1%、日中の平均的なベッド座位時間は、「3時間以上」が24.3%。医療処置の実施率で最も高いのは、「リハビリテーション」で73.5%。「浣腸」30.0%、「摘便」28.3%、「喀痰吸引」27.7%など。

老健施設の在宅復帰・在宅療養支援の機能が促進される

他方、老健施設への調査は、2000施設を対象として行い、有効回収率は31.3%。

報酬上の区分では、▽超強化型24.4%▽在宅強化型9.7%▽加算型35.1%▽基本型26.8%▽その他型3.8%─となっている。

老健施設の報酬上の区分について改定前後での変化をみると、2017年に「在宅強化型」であった施設では、2018年は「超強化型」が80.2%、さらに2019年には89.6%と、超強化型の割合が上昇している。また2017年に「加算型」であった施設では、2018年に「超強化型」が15.7%、2019年には35.2%にまで上昇した。2017年に「従来型」であった施設では、2018年には「加算型」が21.2%、2019年には32.7%に上昇した。

また在宅復帰率の平均も2017年には31.2%であったのが、2018年には34.3%、2019年には36.1%に上昇した。

老健施設の在宅復帰・在宅療養支援の機能を高めていくという30年度改定による政策誘導が効果が示された形だ。

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