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ケアプランデータ連携システムの構築などを実施へ─令和3年度厚労省予算概算要求(9月25日)

厚生労働省は9月25日、令和3年度予算概算要求について公表した。

概算要求は9月30日に財務省に提出される予定だ。一般会計の要求額は令和2年度当初予算額とほぼ同額の32兆9895億円となった。新型コロナウイス感染症への対応など「緊要な経費」は別途要望するものとし要求額が明示されない事項要求となり、予算編成過程で検討する。

新型コロナの影響があることから、年金・医療等に係る経費における高齢化等に伴う自然増の扱いなども予算編成過程で検討する。

令和3年度は介護報酬改定や障害福祉サービス等報酬改定が行われるが、改定率は予算編成過程で決定されることから、それら係る予算額も明示されていない。

概算要求では、これまでの緊急対応策や令和2年度の補正予算なども踏まえ、①ウイズコロナ時代に対応した保健・医療・介護の構築 ②ウイズ・ポストコロナ時代の雇用就業機会の確保 ③「新たな日常」の下での生活支援─の三つを大きな柱とした。

「ケアプランデータ連携システムの構築」など介護福祉関係の新規事項を中心にみてみる。


オンライン申請を見据え介護サービス情報公表システムの機能を拡充

ケアプランデータ連携システムの構築では、介護サービス事業所等の業務効率化を図ることをねらいに、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で交わされるケアプランのデータ連携を可能にするためのシステムを整備する。予算額は「緊要な経費」として予算編成過程で検討される。

文書作成の負担軽減のための介護サービス情報公表システムの改修も実施する。介護分野の文書の作成等に関する負担軽減を図るため、既存の介護サービス情報公表システムを改修し、オンライン申請を見据えた機能の拡充を行う。予算額は「緊要な経費」として予算編成過程で検討される。

政府の全世代型社会保障検討会議が6月25日にまとめた第2次中間報告では、介護分野での行政への文書提出をワンストップで効率的に行うことができるよう、介護サービス事業所の指定に関する申請や介護報酬の請求に関する届出等の標準化と電子化について、「2020年度中に検討し、2021年度中の実現を目指す」と明示。厚労省は今年度、介護サービス情報公表システムを活用したICT化の促進について調査研究を実施し、その成果を活用していく考えを示していた。

福祉系高校就学資金貸付事業などを創設

人材確保の取り組みも充実される。福祉系高校就学資金貸付事業を創設する。福祉系高校に通う介護福祉士の資格取得を目指す生徒に対するもの。先般の通常国会で社会福祉法等改正の審議の折に加藤勝信厚生労働大臣(当時)が福祉系高校への支援の実施について言及していた。

介護就職支援金貸付事業も創設する。介護分野への就職を目指す他業種で働いていた者等に対するもので、幅広い人材の介護分野への参入を促進する。

介護分野への就職希望者に対するプッシュ型情報提供体制を強化する。求人事業所の詳細情報や求職者にとって有益な情報を個々の状況に応じダイレクトに発信していく。

以上は、いずれも予算額は「緊要な経費」として予算編成過程で検討される。

また介護事業所における多様な働き方の導入で5.9億円を要求。多様化・複雑化する介護ニーズに限られた人材で対応していくため、多様な働き方、柔軟な勤務形態による効率的・効果的な事業運営を実践し、その成果を全国展開していく。

施設の個室化や業務継続計画(BCP)の策定などを支援

新型コロナウイルス対策では、介護・福祉サービス提供体制の継続支援が盛り込まれた。職員確保や消毒などのかかりまし経費や都道府県における衛生用品の備蓄、緊急時の応援派遣に係る体制の構築を支援する。予算額は「緊要な経費」として予算編成過程で検討される。

個室化等の環境整備にも取り組む。介護・福祉施設における簡易陰圧装置・換気設備の設置や多床室の個室化等に必要な費用を補助する。予算額は「緊要な経費」として予算編成過程で検討される。

感染防止のための研修や業務継続計画(BCP)の策定等では2.4億円を要求するとともに、加えて「緊要な経費」として予算編成過程で積み増しなどを検討する。具体的に、介護・福祉サービス事業所等の職員が感染症対策についての相談を受けられる窓口の設置、感染対策マニュアルの作成及び感染症対策の専門家による実地研修やセミナー、BCPの作成支援、職員のメンタルヘルス支援等を行う。

マスク等衛生用品の確保では、前年度並みの3.3億円を要求するとともに、「緊要な経費」として予算編成過程で積み増しなどを検討する。都道府県等における介護・福祉サービス事業所等へ配布するマスクや消毒液等の衛生用品の一括購入、介護・福祉サービス事業所等における感染症等発生時の事業所等の消毒・線上に必要な費用を補助する。また、感染が発生した際に介護・福祉サービス事業所等に対し個人防護具等が円滑に供給されるよう国が買い上げ、都道府県等に配布する。

医療的ケア児への支援を拡充

障害福祉関係をみると、医療的ケア児への支援を拡充する。令和2年度予算の5.8億円から2.3億円増額した8.1億円を要求。さらに「緊要な経費」として予算編成過程で積み増しなどを検討する。

地域において医療的ケア児を受け入れる体制を促進するため、総合的な支援を実施する。具体的に、医療的ケア児等コーディネーターの配置を拡充し、相談体制の整備を進める。さらに▽医療的ケア児等への支援者の養成▽地域で関係者が協議を行う場の設置▽医療的ケア児等に対応する看護職員を確保するための体制の構築▽専門的な薬剤師の養成等を通じた適切な薬物療法を提供するための連携体制の構築▽医療的ケア児等の家族への支援─などに取り組む。

また、医療的ケア児の受け入れ体制の整備を推進するため、モデル事業を一般事業化し、保育所等における看護師の配置や保育士の喀痰吸引等に係る研修の受講等を支援する。

地域共生社会の実現に向け、先般の社会福祉法等改正で創設された新たな重層的支援体制整備事業の実施に係る予算は、「緊要な経費」として予算編成過程で検討していく。属性を問わない相談支援や多様な参加支援の推進、地域づくりに向けた支援を一体的に実施する

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