#3 |侮れない!住民税を意識する効果
住民税のしくみと特徴
今年の3月、個人事業主のNさんご夫妻の令和4年分の確定申告の結果、ともに所得税がゼロ円になったので、確定申告の控書類を届けたときにお二人にその件を報告しました(確定申告自体は税理士が行い、私は補助業務や連絡係をやっています)。
その後、5月下旬に住民税の通知書が届いたタイミングで、奥様から「うちは非課税世帯じゃなかったのですか?」と少し強い口調での質問がありました。これはどういうことでしょうか。
詳しい解説は後に回しますが、読者の皆様はご自身が年間どのくらいの住民税を負担しているか把握されているでしょうか。住民税は基本的には自分で申告するわけではないので、税額についてあまり意識していない方が多いようですが、住民税額は社会保障や福祉サービスにかかる費用の目安になり、さまざまな場面に影響がありますので、今回は住民税について詳しく見ていきたいと思います。
まずは<図表1>で住民税のしくみと特徴を確認します。
このように、住民税額は前年の収入をもとに算出され、所得控除と税額控除がどれだけ使えるかによって大きく変わってきますが、大事なのはそれが当年6月以降の後払いになることです。ところが一般の方はこのしくみをご存じないことが驚くほど多いです。たとえばセミナーに参加された女性に、「私は以前はパート勤務をしていましたが、退職して今は無職です。最近市役所から住民税の納付書が届いたのですが、今は無収入なんだから払わなくてもいいんですよね」と質問されたり。
ですので退職準備セミナーでは、このしくみについて次のように注意喚起しています。
「定年後働く予定のない方は、退職後の6月頃に現役最終年の所得に対する住民税の請求がドカンとやってくるので、心とお金の準備をお願いします。また、定年後再雇用で働く方は、再雇用当初は、給与が下がるにもかかわらず天引きされる住民税額は定年前と変わらないので、手取りが少なくなってしまいます」。
これは新入社員の2年目にも言えることで、1年目は前年の所得がほとんどなく住民税がかからない方が多いですが、2年目の6月からは、1年目の4~12月の収入に対する住民税の徴収が始まるので、1年目より手取りが少なくなるケースもあります。
この後払い方式の実際の流れを、令和4年分の収入に対する住民税(令和5年度と呼ぶ)について、給与所得者とそれ以外に分けて<図表2>に表しましたので、ご自身のケースについて確認してみてください。
住民税と所得税の違い
さて、冒頭のNさんの奥様からの質問に対して、私は住民税の概算計算書をお渡しして次のように回答しました。「所得税の確定申告ではお二人とも課税所得がゼロ円でしたが、これはあくまでも所得税だけのことで、住民税と所得税では控除額が違うため、お二人とも住民税は非課税にはなりませんでした」。
ここから先は
¥ 100