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#39 認定マークを取得して、企業の採用力強化を

田所 知佐(たどころ ちさ)
ドリームサポート社会保険労務士法人/特定社会保険労務士

労働分野の実務の参考となる情報を提供する「プロが伝える労働分野の最前線」。第39回のテーマは、「くるみん」「えるぼし」などの認定マークです。女性活躍推進や子育て支援など、企業の取り組みを国などが認定する制度にはいろいろありますが、その活用のポイントをドリームサポート社会保険労務士法人の田所知佐さんが解説します。


認定マークを知っていますか?


お客様と名刺交換をしたときに、下の図のようなマークが印刷されていて、話題になったことはありませんか?


これは、「えるぼし」という厚生労働省の「認定マーク」です。 各省庁は、事業継続、健康経営、DX、子育て支援などの活動について、一定の要件を満たした企業を、活動に積極的な企業として認定しています。
認定マークはその認定を受けた証であり、認定された企業は、自社商品やホームぺージなどで、自社の魅力をアピールするために認定マークを活用できます。例えば、冒頭の「えるぼし」は、女性の活躍促進のための取り組みの実施状況などが優良な企業として、厚生労働大臣の認定を受けた企業が使用できるマークです。

認定は採用力の強化につながる

現在、多くの企業が認定制度に注目しています。
主たる理由として挙げられるのは「採用に有利だから」です。
少子高齢化により、学生が少なくなり、売り手市場と呼ばれる現在の就活。一方で、学生の二極化が進んでいるとも言われ、各企業は優秀な学生の獲得に力を入れています。

マイナビの 2023年卒大学生就職意識調査によれば、企業選択のポイントは、「安定している」が最多で43.9%となっています。
そして、学生が企業に安定性を感じるポイントとしては
〇福利厚生が充実している・・53.3%
〇安心して働ける環境である・・46.6%
が挙げられており、学生がワークライフバランスや雇用環境にも注目していることがわかります。
特に女性は出産等をした後もキャリアを中断させることなく長く働ける会社かどうか、という視点をもち、企業研究をしています。
そこで、各企業が「魅力ある企業」「働きやすい企業」をアピールできる認定マークの取得に注力しているというわけです。

厚生労働省の認定マーク

厚生労働省は、雇用管理の改善に取り組む企業を支援するため、企業の子育て支援や女性活躍の推進、若者の採用育成についての認定制度を設けています。
認定マーク①くるみん・プラチナくるみん
次世代育成支援対策推進法に基づき、子育てに積極的な企業が認定される

認定マーク②えるぼし・プラチナえるぼし
女性活躍推進法に基づき、女性の活躍に関する取り組みの実施状況などが優良な企業が認定される

認定マーク③ユースエール
若者雇用促進法に基づき、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な企業が認定される


中でも注目されているのは、くるみんマークです。ここからは、くるみんマークについて、解説します。

くるみん認定とは

次世代育成支援対策推進法に基づき、仕事と育児の両立を促進するための目標や計画である《一般事業主行動計画》を策定した企業のうち、定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、「子育てサポート企業」として、くるみん認定を受けることができます。認定を受けたという証が、「くるみんマーク」です。

既にくるみん認定を受け、仕事と育児の両立支援制度の導入や利用が進み、高い水準の取り組みを行っている企業を評価しつつ、継続的な取り組みを促進するためのプラチナくるみん認定もあります。この認定を受けた企業の証が、「プラチナくるみんマーク」です。
これらのマークを広告等に表示することにより、社内外に「子育てを応援する企業」であることを、アピールすることができます。

令和4年4月、くるみん認定・プラチナくるみん認定の認定基準が改正されたことに伴い、新たに「トライくるみん認定」が創設されました。
トライくるみんの認定基準は、改正前のくるみん認定と同じで、認定への流れも同様です。
トライくるみん認定を受けていれば、くるみん認定を受けていなくても直接プラチナくるみん認定を申請できます。

くるみん認定申請までの流れ

くるみん認定を申請するための流れは以下のとおりです。

  1. 自社の現状や労働者のニーズの把握をし、一般事業主行動計画を策定する

  2. 行動計画を公表し、労働者に周知する

  3. 行動計画を策定した旨を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ届出する

  4. 行動計画を実施する

  5. 計画期間終了後、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へくるみんの認定申請をする

一般事業主行動計画の概要

一般事業主行動計画とは、企業が次世代育成支援対策推進法に基づき、労働者の仕事と子育ての両立を図るために策定する計画のことです。
常時雇用する労働者が101人以上の企業には、行動計画を策定・届出とともに、一般への公表、労働者への周知が義務づけられています(100人以下の企業は努力義務)。
行動計画には、①計画期間 ②目標 ③目標を達成するための対策の内容と実施時期を明記する必要があります。

くるみん認定を受けるためには

くるみん認定を受けるためには、
〇行動計画の計画期間が、2年以上5年以下であること、
〇策定・変更した行動計画について、公表および労働者への周知を適切に行っていること、
など、10項目の認定基準を全て満たす必要があります。

くるみん認定には、細かい認定基準があるので、認定取得を目標としている場合には、予め認定基準を確認しておきましょう。自社の行動計画が認定基準に合致するかどうかは、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談することもできます。

新たにくるみんプラスがスタート

令和4年4月から、くるみんプラスという新しい認定制度がスタートしました。くるみんプラスは、不妊治療のための休暇制度・両立支援制度を導入している企業が、申請し、基準を満たせば認定されます。プラス認定を受けると、それぞれのくるみん認定にプラスマークを追加して、子育てサポート企業であることに加え、不妊治療と仕事との両立をサポートする企業であることもPRできます。
認定を受けるためには、くるみん等の認定基準を満たした上で、不妊治療のための休暇制度を設けているなどの4項目のプラス認定基準を全て満たす必要があります。

公共調達でのメリット

くるみん認定取得は、公共調達で有利なこともあります。
各府省等が総合評価落札方式または企画競争による調達によって公共調達を実施する場合、くるみん認定企業などについて、加点評価するよう国の指針において定められています。

企業の強力なアピールに

くるみんマークは、赤ちゃんが大事に包まれる「おくるみ」と、「職場ぐるみ・会社ぐるみ」で子供の育成に取り組もう、という意味があります。
少子高齢化にともない、国は一丸となって育児を支援しています。また、不妊治療費に健康保険が使用できるようになったことが示すように、不妊治療についても理解や支援が望まれています。
そのような中、各種くるみん認定、くるみん認定プラスは、企業のアピールになることは間違いありません。

認定取得はプロジェクトで

くるみんのような各認定マークは、それぞれの活動に積極的に取り組んでいる企業という証です。ぜひ、自社の目指す姿を設定し、認定マーク取得を計画しましょう。
認定取得を目指す場合には、ぜひ、横断的なプロジェクトで取り組んでいただきたいと思います。
総務や人事など、ひとつの課の単なる作業として、またはトップダウンの形で、認定を取得するよりも、社員が自社のおかれた状況を認識し、どのような効果を期待して認定を取得するか確認して動いたほうが、社内の連帯感の高まり、社員のモチベーションアップ、ひいては、社員それぞれが自分がこの会社でどのように働いていくか、どのような会社にしていくか、を見つめなおすきっかけになるためです。筆者の知るある会社は取り組みのひとつとして、真に社員のためになる計画とするため、社員全員へアンケ―トを取りました。結果、認定マーク取得への意識や期待も高まり、会社がよくなるくきっかけとすることができたそうです。
ぜひ、社内外への影響を考慮して、認定マーク取得に取り組んでください。


田所 知佐(たどころ ちさ)
ドリームサポート社会保険労務士法人/特定社会保険労務士
東証一部上場 公共インフラ企業にて10年間施設企画に従事。その後、仏高級レストランの日本法人にて商品企画に従事。2015年ドリームサポート社会保険労務士法人入社。2018年社会保険労務士登録、2021年特定社会保険労務士付記。前職の経験を活かし、企画・広報・執筆活動など多方面で活躍。『図解 社会保障オールガイド 最新版』(そらふブックス)監修。

ドリームサポート社会保険労務士法人

東京都国分寺市を拠点に事業を展開し、上場企業を含む約300社の企業の労務管理顧問をしている実務家集団。

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