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謎の新興国アゼルバイジャンから|#36 差別と向き合い、乗り越える勇気―LGBT・ハンセン病訴訟―

香取 照幸(かとり てるゆき)/アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使(原稿執筆当時)

*この記事は2018年11月16日に「Web年金時代」に掲載されました。

本稿は外務省とも在アゼルバイジャン日本国大使館とも一切関係がありません。全て筆者個人の意見を筆者個人の責任で書いているものです。内容についてのご意見・照会等は全て編集部経由で筆者個人にお寄せ下さい。どうぞよろしくお願いします。

みなさんこんにちは。
「寄り道」の2回目です。
「私はLGBTQ(性的少数者)の権利のための闘いを信じているし、性的指向や性に基づいた差別はどのような形でも間違っていると確信します」というテイラー・スウィフトさんの投稿に触発されたわけではありませんが、今回はLGBTに関係する話をします。

過日、休暇をいただいてCityに勤める友人に会いに週末のロンドンに行きました。彼の自宅の近所にとあるパブがあり、こんな看板が出ていました。

「1946年開業、ロンドンで、そしておそらく世界で最も古いLGBTパブ」とあります。

皆さんはアラン・チューリングという名前を聞いたことがあるでしょうか。第二次世界大戦中、解読不能と言われたナチスドイツの暗号システム「エニグマ」を解読し、第二次大戦を連合国の勝利に導いたイギリスの天才数学者であり、現代のコンピューター理論の基礎を作った人です。
日本でも人気の俳優ベネディクト・カンバーバッチが主演し、彼の生涯を描いた「イミテーションゲーム」という映画をご覧になった方も多いと思います。

チューリングは同性愛者でした。
1967年までイギリスでは同性愛は刑法犯罪(!)であり、戦後、彼はそのことで逮捕され、裁判にかけられて有罪判決を受けます。研究を続けるため、彼は収監と引き換えに化学的去勢のためのホルモン治療(女性ホルモンの投与*)を受けることを選択します。

*当時、女性ホルモン(エストロゲン)の投与は、同性愛者の性欲抑制のための「矯正治療」として行われていました。

過酷なホルモン治療の末、1954年、彼は自殺します。41歳でした。

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