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三宅社労士の年金実務セミナー|#5 令和4年度からこう変わる!公的年金制度 Part2 年金の繰上げ受給と繰下げ受給

 三宅明彦(みやけ・あきひこ)/特定社会保険労務士

本年4月、年金制度改正法(「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」令和2年6月5日公布)の目玉の事項が施行となります。年金実務セミナーでは、直前の1月から3月にかけて、次の3つのパートごとに改正内容を再確認しています。

2月はpart2の「年金の繰上げ受給と繰下げ受給」について見ていきます。

part1:在職中の年金受給(令和4年4月施行)→1月21日(金)掲載
part2:年金の繰上げ受給と繰下げ受給(令和4年4月施行)
part3:厚生年金・健康保険の適用拡大(令和4年10月施行)→3月18日(金)掲載

各パートの最後に「理解度テスト」を設けましたので、施行前にポイントを確認していただければと思います。

1.受給開始時期の選択肢の拡大(令和4年4月実施)

(1)改正前のしくみ
公的年金の受給開始時期は、改正前は原則として、個人が60歳から70歳の間で自由に選ぶことができました。65歳より早く受給開始した場合(繰上げ受給)には、年金額は減額(1月あたり▲0.5%、最大▲30%)され、66歳より後に受給開始した場合(繰下げ受給)には年金額は増額(1月あたり+0.7%、最大+42%)されます。

なお、66歳以降は繰下げて受給する方法と65歳から受給できる年金をさかのぼって受給する方法があります。「老齢基礎厚生年金繰下げ請求書」または「老齢基礎厚生年金裁定請求書 65歳支給」の提出が必要です。

受給率(改正前)

(2)改正後のしくみ
高齢期の就労の拡大等を踏まえ、高齢者が自身の就労状況等に合わせて年金受給の方法を選択できるよう、繰下げ受給制度について、より柔軟で使いやすいものとするための見直しが行われます。

令和4年4月から、70歳の繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられます。受給開始時期が60歳から75歳の間で選択可能となり、改正法施行時点で70歳未満の人(昭和27年4月2日以降生まれ)に適用されます。

また、繰上げ減額率は1月あたり▲0.4%(最大▲24%)で、昭和37年4月2日以降生まれに適用されます。一方、繰下げ増額率は1月あたり+0.7%(最大+84%)になります。それぞれの期間内において、数理的に年金財政上中立を基本に設定されました。

さらに、75歳以降に繰下げ申出を行った場合、75歳に繰下げ申出があったものとして年金が支給されます。

【参考】
新制度での「繰上げ減額率」「繰下げ増額率」の考え方は、受給者の生活設計の安定のために頻繁に変えるものではありませんが、今般、受給開始時期の選択肢の拡大が議論されている中で、見直しのタイミングだと判断され、以下のように設定されました。
①選択された受給開始時期にかかわらず数理的に年金財政上中立になることを基本として設定。
②65歳時点の年金額を基準として、60歳までの繰上げ減額率、75歳までの繰下げ増額率を設定。具体的には、現在入手できる最新のデータを使用して計算
⇒平成27年完全生命表による年齢別死亡率(この時点の65歳の男女平均余命21.8年、令和元年財政検証のケースⅠ~ケースⅤの長期の経済前提)。

受給率(改正後)

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