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2022年度の診療報酬改定(中村秀一)

霞が関と現場の間で

コロナ禍における改定

昨年7月から診療報酬改定について審議してきた中医協は、2月9日に答申を行い、4月から改定の内容が固まった。

新型コロナ感染症対応によって、日本の医療に様々な問題があることが指摘されてきた。改定の基本方針を審議する医療保険部会・医療部会が「新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」を求めたのは当然である。

また、財務省の財政制度等審議会が「どこまで診療報酬で対応し、どの部分を補助金で対応するのか、さらにその前に規制的手法をまず用いるべきなのか、整理が必要」とすることも理解できる。2020年度の医療費は前年度に比べ1.4兆円減少したが、それを補う以上の2.5兆円の補助金が出ているからだ。

コロナ以前からの宿題

他方、2025年に向けての地域医療構想の実現、2024年4月からの医師への時間外労働の上限規制の適用、医師偏在対策の推進というコロナ蔓延以前からの課題は、むしろ期限の到来を控えて切迫度を増している。

今回の改定幅については、昨年末に恒例の綱引きがあったが、薬価等は1.37%の引下げ、診療報酬は0.43%の引上げとなった。医療費全体ではマイナス改定、診療報酬本体はプラス改定での決着だ。この本体引上げ分には不妊治療の保険適用、看護師の処遇改善のための財源が含まれている。これを除くと本体改定分は+0.23%、医科改定率は+0.26%であり、2020年度改定の改定率(+0.47%、+医科0.53%)の半分以下にとどまり近年において最も低い改定率であった。

中医協審議に充てられた膨大な作業

改定幅が小さいとはいえ、改定内容は多岐にわたる。答申の日に中医協に提出された「個別改定項目」は495頁にも及ぶ。中医協の審議は、テーマ別に行われた。入院医療は9回、外来医療は5回、在宅医療は5回、個別事項は14回といった具合だ。テーマ毎に次第に論点を絞り込み、議論を深めてきた。毎回の中医協に提出される資料は1テーマで100頁を超える資料が次々に出され、圧巻であった。

このようにして、急性期入院医療、地域包括ケア病棟などの見直し、外来医療の機能分化(紹介状なしで受診する場合の定額負担)が決まった。小児医療やヤングケアラーなどへの配慮も時代の要請に応えたものだ。さらにオンライン診療、リフィル処方も盛り込まれた。

中医協・小塩隆士会長(手前右)が佐藤英道副大臣(左)に答申書を手渡した(2022年2月9日)

第6波の渦中にあっては当面の対応とならざるを得ないことは、今回改定の宿命と言えよう。多くの制約の中で、課題に真摯に向き合った改定であると評価したい。  

(本コラムは、社会保険旬報2022年3月1日号に掲載されました)


中村秀一(なかむら・しゅういち) 医療介護福祉政策研究フォーラム理事長 国際医療福祉大学大学院教授 1973年、厚生省(当時)入省。老人福祉課長、年金課長、保険局企画課長、大臣官房政策課長、厚生労働省大臣官房審議官(医療保険、医政担当)、老健局長、社会・援護局長を経て、2008年から2010年まで社会保険診療報酬支払基金理事長。2010年10月から2014年2月まで内閣官房社会保障改革担当室長として「社会保障と税の一体改革」の事務局を務める。この間、1981年から84年まで在スウェーデン日本国大使館、1987年から89年まで北海道庁に勤務。著書は『平成の社会保障』(社会保険出版社)など。


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