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社会保険の基本手続|退職時の年金・健康保険・雇用保険

年金時代では年金の実務情報だけでなく、健康保険や雇用保険などについても情報を提供しています。このコーナーでは、知っておきたい社会保険の基本手続として、退職時の年金・健康保険・雇用保険の手続をご紹介します。
☆☆☆記事の最後にパンフレット(令和4年3月発行)を掲載します。定期購読をしていただくと、無料でダウンロードできます☆☆☆
                           年金時代編集部


社員が退職したときの資格喪失届

①健康保険・厚生年金保険
会社員は、会社に勤務している期間、健康保険と厚生年金保険の被保険者(=加入者)となります(ただし、後述のように勤務時間等の被保険者の要件があります)。会社を退職すると、この被保険者の資格を喪失する(=被保険者でなくなる)ことになります。

資格を喪失した日は退職した日ではなく、「退職日の翌日」となるので、注意が必要です。たとえば、3月31日退職の場合は、4月1日が喪失日となります。

会社は、社員が退職して被保険者資格を喪失したことを日本年金機構に届け出ることになっています。具体的には、退職した5日以内に「健康保険・厚生年金保険資格喪失届」を日本年金機構に提出します。

提出方法として、事務センターへの郵送や管轄の年金事務所窓口への持参のほか、電子申請もできます。また、この資格喪失届に、退職者本人と扶養家族の「健康保険証」(正確には健康保険被保険者証)を回収して添付します。紛失等により回収できない場合は、「健康保険被保険者証回収不能届」を添付します。

退職者が健康保険組合に加入していた場合は、健康保険組合にも資格喪失届(その組合の様式など)を提出します。「健康保険証」は健康保険組合のほうへ返納します。(日本年金機構が取り扱うのは全国健康保険協会(協会けんぽ)の加入者のみです。)

60歳以上で退職後、継続して再雇用する場合
たとえば、60歳でいったん定年退職する人を、その後も継続して再雇用する、という会社が多いと思います。1日も空くことなく同じ会社が再雇用する場合、健康保険・厚生年金保険の資格喪失と資格取得を同じ日付で行うことができます。これにより、すぐに再雇用後の給料で保険料を計算することができます。
この取り扱いは、60歳以上で退職後(定年退職に限りません)、継続して再雇用するすべての人が対象です。正社員に限らず、役員やパートタイマー、嘱託社員なども含まれます。
手続は、資格喪失届と資格取得届に以下の書類(アとイ両方、またはウ)を添付して、日本年金機構※へ提出します。
ア  就業規則、退職辞令の写し(退職日の確認ができるものに限る)
イ 雇用契約書の写し(継続して再雇用されたことがわかるものに限る)
ウ 「退職日」および「再雇用された日」に関する事業主の証明書
※健康保険組合を脱退・加入する場合は、その組合の資格喪失届と資格取得届を健康保険組合にも提出します。

②雇用保険
会社員は、年金や健康保険と同様に、会社に勤務している間、雇用保険の被保険者(=加入者)となります(ただし、被保険者の要件があります)。会社を退職すると、この被保険者の資格を喪失する(=被保険者でなくなる)ことになります。

雇用保険についても、会社は、社員が退職して被保険者資格を喪失したことを届け出ることになっています。具体的には、退職して10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を管轄のハローワークに提出します。離職証明書には、退職者本人の記名押印または自筆による署名が必要です。

この書類を提出後、ハローワークから「雇用保険被保険者離職票」(2種類あります)が交付されるので、速やかに退職者本人に渡します。また、本人から預かっていた「雇用保険被保険者証」も本人に返します。この離職票と被保険者証は、本人が失業給付を受けるために必要な書類です。

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ここからは、退職する本人の手続です。

会社を退職すると、加入する年金制度が変わる

【60歳前に退職する場合】
会社に勤務している期間は、厚生年金保険に加入しますが、いったん会社を退職すると、60歳になるまで、または別の会社に再就職するまでは、国民年金のみに加入することになります(日本に住むすべての人は20歳から60歳になるまで、国民年金に加入します)。

この際、国民年金のみに切り替える手続を自分でする必要があります。窓口は、住んでいる市区町村の国民年金窓口で、マイナンバーカード(または年金手帳や基礎年金番号通知書)と、退職日を確認できる書類が必要です。マイナンバーカードを作っていない場合は、マイナンバーを確認できる書類(通知カードまたはマイナンバー入り住民票の写し)+身元確認書類(運転免許証やパスポート、在留カードなどいずれか)で手続ができます。

この切り替えの手続により、国民年金の第1号被保険者となり、国民年金保険料(令和4年度は月16,590円)を自分で納付することになります。(ちなみに、会社員は国民年金の第2号被保険者です。)

扶養配偶者の手続もお忘れなく
配偶者(ここでは仮に奥さんとします)を扶養している場合、奥さんも国民年金の切り替え手続が必要です。奥さんは、これまでは会社員に扶養される配偶者(=国民年金の第3号被保険者)となっていて、奥さん自身が年金保険料を支払う必要はありませんでした。しかし、ご主人が会社を退職したことで、奥さんも自分で国民年金に加入して国民年金保険料を支払うことになります。
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もしも、奥さんがパートやアルバイトで家計を支えたいという場合、次のすべてに該当すると、奥さん自身が厚生年金保険および健康保険の被保険者となります。(この手続は会社がやってくれます)
被保険者の要件
・従業員数501人以上(令和4年10月からは101人以上)の会社に勤務(詳細はこちら
・年収106万円(月額賃金8.8万円)以上
・週20時間以上勤務
・勤務期間1年以上(令和4年10月から2ヵ月超)が見込まれる

【60歳以上で退職する場合】
60歳になると、国民年金に加入する義務はなくなり、保険料を納付する義務もなくなります。

会社員が60歳になったら、まずは年金の受給権や支給開始年齢を確認しましょう。たとえば、今年60歳になる昭和37年4月2日生まれの男性の場合、年金の支給は65歳からとなり、老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されます。

同じ生年月日の会社員でも、女性の場合は63歳から特別支給の老齢厚生年金が支給されます。65歳からは上記の男性と同様に、老齢基礎年金と老齢厚生年金が支給されます。※10年以上の年金加入期間があり、かつ1年以上の会社勤務期間(正確には厚生年金保険の被保険者期間)があることが前提です。

いずれも年金が支給される年齢になると(具体的には誕生月の3ヵ月前)、日本年金機構から年金請求書が送付されます。必要書類を揃えて、年金事務所(または街角の年金相談センターなど)で年金請求手続をします。

一般に、60歳になっても年金が支給されるまでは会社勤務を続ける人が多いと思います。年金支給後もできるだけ会社勤務を続ける、という人も増えています。

年金を受給しながら会社に勤務する場合、年金月額と月収の合計額が一定額を超えると、その超えた額に応じて年金が減額されます(詳細はこちら)。会社を退職すると、この減額はなくなります。

なお、60歳を機に会社を退職し、年金をもっと早く受給したい、という人もいると思います。たとえば、本来は65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金を、最大で60歳まで「繰上げ請求」することもできます。ただし、繰り上げた期間に応じて、年金が減額されます(詳細はこちら)。また、本来の年金支給の前の手続になるので、年金請求書などは自分で取り寄せる必要があります。

一方、65歳以降も会社勤務を続け、年金は会社を退職してから受給したい、という人もいると思います。本来は65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金を66歳以降、最大で75歳(令和4年4月以降)まで繰下げて受給することもできます。1ヵ月繰り下げるごとに0.7%年金が増額されます(詳細はこちら)。本来の年金支給年齢になると年金請求書が送付されるので、ここで繰下げの意思表示をします。その後、受給したい年齢になったら「繰下げ請求」の手続をします。

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