【詳解】第75回社会保障審議会介護保険部会(2月25日)
介護保険部会が次期制度改正に向け議論を開始
社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫部会長)は25日、次期介護保険制度改正に向けた議論を開始した。厚労省は2021年度からスタートの第8期介護保険事業計画などへの反映も念頭に、冬頃に議論を取りまとめ、2020年の早期に改正法案を国会に提出する予定を示した。意見交換では、複数の委員が2040年を見据えて、給付と負担のあり方について言及した。部会は今後、月1~2回程度のペースで議論を進めていく(図表1)。
厚労省は次期改正に向けて2025年以降の現役世代人口の急減という重要課題にも対応し、労働力の制約が強まる中での医療・介護サービスの確保を図っていく必要を指摘。 その上で分野横断的検討事項として①介護予防・健康づくりの推進②保険者機能の強化③地域包括ケアシステムの推進④認知症の共生・予防の推進⑤持続可能な制度の再構築・介護現場の革新─の5項目を示し、意見を求めた(図表2・3)。
また前回改正のベースとなった介護保険部会意見書や新経済・財政再生計画改革工程表を踏まえた個別の検討事項としては、▽ケアプランの利用者負担の導入▽障害者や児童等にも対象を拡大した相談支援体制の整備▽補足給付を行う上での不動産の勘案▽被保険者範囲の拡大▽介護の軽度者への生活援助サービス等の給付の在り方▽AIを活用したケアプランの実用化▽財政的インセンティブの評価指標による評価結果の公表と調整交付金の新たな活用方策の検討─などが考えられている。
2040年を見据えた議論を求める
意見交換で健保連の河本滋史委員は、介護給付費について2018年度の10.7兆円から2040年に25.8兆円に増加する見通しが示されている(図表4)ことから、第8期介護保険事業計画に向けても「制度の持続可能性を考えると給付と負担について踏み込んだ検討が必要」と主張した。
第2号被保険者の負担増を踏まえ、「改革工程表の検討事項に限らず、給付と負担を大胆に見直していくことが不可欠」とした。
日本医師会の江澤和彦委員も「2040年を見据えた第8期介護保険事業計画を議論の中心に据えていただきたい」と要請。2034年に全国ベースで、40~64歳人口と65歳以上が逆転する見通しを踏まえ、「給付と負担の議論はすべきだが、それだけでは限界を超えている」と述べ、新たな財源の確保や給付対象を重度者に絞るなどの議論の必要性を指摘した。
また介護保険事業計画の策定の関係で、地域医療構想の中で2025年を目途に入院外となる約30万人(図表5)を地域でどう支えるか、多くを占める医療区分1を在宅医療や介護施設などで受け止められるかが課題であることを強調し、地域医療構想調整会議に自治体の介護部門担当者も参加すべきとした。
協会けんぽの安藤伸樹委員も「負担能力に応じた負担を求めていくことを基本に、世代内、世代間の負担の公平性の確保が最も大切」と指摘。また制度の持続可能性の確保のためにも保険者機能の強化の重要性を強調。2018年度から導入されたインセンティブ交付金(保険者機能強化推進交付金)と評価指標(図表6)の必要な見直しに向けた検討を訴えた。
全国老人福祉施設協議会の桝田和平委員は、就労する高齢者が増加する状況(図表7)なども踏まえ、第2号被保険者の範囲に関して検討することを求めた。
日本介護支援専門員協会の小原秀和参考人は、ケアプラン作成の利用者負担の導入には「利用者が相談しにくくなり結果的に発見が遅れたり、サービス提供が遅れたりする状況は国民の利益にならない」などとし反対を表明した。
またケアプラン作成でのAIの活用には賛意を表明。「実用に向けて積極的に関わっていきたい」とした。
民間介護事業推進委員会の山際淳委員は、「介護人材の確保」(図表8・9)について検討する横断的事項に追加するように要望した。
一般介護予防事業等のあり方を検討
厚労省は介護保険部会に「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」の設置を提示した(図10)。部会でも異論は出なかった。
今国会に提出された「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案」で介護予防と保健事業の一体的な実施の推進が盛り込まれていることを踏まえたもの。4月に初会合を開き、月1回程度会合を重ね、夏ごろに中間とりまとめを行い、年内に検討結果をまとめる予定だ。いずれも介護保険部会に報告される。
検討事項としては、効果的な実施方法や、保健事業と介護予防の一体的な実施など専門職等の効果的なかかわり方、今後求められる機能やPDCAサイクルに沿った更なる推進方策などが上げられている。