老健の短期入所療養介護の基本サービス費の引き下げを提案(10月15日)
社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋分科会長)は10月15日、令和3年度介護報酬改定に向け、⑴通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護、⑵療養通所介護、⑶通所リハビリテーション、⑷短期入所療養介護、⑸短期入所生活介護、⑹福祉用具・住宅改修─について意見交換を行った。
通所系サービスと、ショートステイ及び福祉用具・住宅改修に分けて、厚労省が示した検討の方向性や、主な意見を紹介する。
今回は、ショートステイ及び福祉用具・住宅改修について取り上げる。
短期入所療養介護では、利用目的や提供サービスが短期入所生活介護と類似してきたことを上げ、基本サービス費を引き下げる方向で見直すことを提案したが、賛否が出た。
また、短期入所生活介護では、「併設型であって定員20人以上の事業所」において、常勤で1人以上の看護職員の配置を求めていることの見直しを提案したが、賛否が出た。
短期入所療養介護の利用目的等が短期入所生活介護に類似
⑷短期入所療養介護について、厚労省は次の2点を示した。
まず①老健施設が提供する短期入所療養介護について、利用目的や提供サービスが短期入所生活介護と類似してきたことを上げ、基本サービス費を引き下げる方向で見直すことを提案した。
なお基本サービス費(要介護5/1日つき)をみると、短期入所生活介護の併設型の多床室で859単位。老健施設の短期入所療養介護では多床室(基本型)で1042単位となっている。
さらに、厚労省は、医療ニーズのある利用者の受け入れを促進する観点及び老健施設の在宅療養支援機能を推進する観点から、医師が診療計画に基づき必要な診療、検査等を行い、退所時にかかりつけ医に情報提供を行う総合的な医学的管理を評価することを示した。
分科会では、短期入所療養介護でも所定疾患施設療養費の算定を認めるように求める意見が出されていたが、それよりも幅広く評価する考えだ。
②短期入所療養介護の緊急短期入所受取加算について「7日を限度」としている日数要件の見直しを提案した。短期入所生活介護との均衡を考慮し、「7日を原則として、家族の疾病等やむを得ない事情がある場合には14日を限度」に見直すことを提案した。
意見交換では、全国老人保健施設協会の東憲太郎委員は、短期入所療養介護について、「医療ニーズの高い人をきちんとショートで受入れて、医療ショートを提供することが提案されている。全く賛成」と賛意を表明した。
健保連の河本滋史委員は、短期入所療養介護の見直しについて、「利用目的や提供サービス、医療的ケアが無しになった利用者の割合などに差がないのであれば、短期入所生活介護に合わせる方向で基本報酬を見直すべき」とした。
一方、日本医師会の江澤和彦委員は、短期入所療養介護の基本報酬の見直しについて、基本サービス費の骨格は人件費である。短期入所生活介護と短期入所療養介護は職員配置が全く違う。配置基準が異なっていることを前提に考える必要がある」と、異論を唱えた。
短期入所生活介護における看護職員に係る配置基準の見直しを提案
⑸短期入所生活介護について、次の3点について示した。
①看護職員に係る配置基準の見直しについて提案した。短期入所生活介護について現行では、介護職員又は看護職員は常勤換算方法で3:1の配置を求めているが、必ずしも看護職員を配置する必要がない。ただし併設型かつ定員20人以上の事業所に限り、常勤で1人以上の配置を求めている。
一方で、令和元年度の「短期入所生活介護におけるサービス提供状況の実態把握に係る調査研究事業」では、類型別・定員別に医療的なケアの必要な利用者の有無をみると、▽単独型(利用者20人以上)で75.6%▽併設型(利用者19人以下)で70.1%▽併設型(利用者20人以上)で63.8%─となっている。必要とされる医療的ケアも、「胃ろう、腸ろうによる栄養管理」「カテーテルの管理」「たんの吸引」などが多く、厚労省は「類型・定員により必要とされる医療的ケアが異なる状況にはない」などと指摘。
看護職員について、「必要に応じ密接かつ適切な連携」により確保することを提案。加えて現行要件上、常勤で1人以上の看護職員の配置が求められている「併設型であって定員20人以上の事業所」も、他の類型と同様の配置要件とすることを提案した。
②介護予防短期入所生活介護の基本報酬でも初期加算相当分が評価されていることを踏まえ、自費利用を挟み同一事業所を連続30日以上利用している者にサービス提供をする場合に、長期利用減算を適用することを提案した。
③通所介護と同様に、生活機能向上連携加算についてICTの活用を提案するとともに、連携先を見つけやすくする方策について意見を求めた。
意見交換で、全国老人福祉施設協議会の小泉立志委員は、短期入所生活介護の看護職員の配置の見直しを支持する一方、報酬は維持するよう求めた。
日本看護協会の岡島さおり委員は、短期入所生活介護における外部の看護職との連携は賛意を示す一方、「施設内に医療的なアセスメントができる看護職員がいてこそ外部の医療職と有効な連携ができる」などと指摘。併設型で利用者が20人以上の事業所の看護職員の配置を緩和することについて慎重な検討を求めた。
連合の伊藤彰久委員は、短期入所生活介護の併設型の医療者20人以上の事業所における看護職員の常勤配置について、「無くすのは乱暴ではないか。(他の類型でも)むしろ配置すべき。丁寧な対応をお願いしたい」と述べた。
その他、介護予防短期入所生活介護への長期利用減算の適用について、複数の委員が賛意を示した。
退院・退所時のカンファレンスへの福祉用具専門相談員の参画を加算の要件に
⑹福祉用具貸与について、厚労省は新たに次の2点を示した。
まず①退院・退所時のカンファレンスへの福祉用具専門相談員の参画を担保し、介護支援専門員との連携を促すため、居宅介護支援の退院・退所加算及び指定施設サービスの退所前連携加算の要件において、専門相談員や作業療法士等の関係職種の関与を明示することを提案した。
また②福祉用具専門相談員の資質の向上の観点から、専門相談員のカリキュラム等の見直しをはじめとした、福祉用具に関する事故等の情報の活用方策について提案した。
福祉用具専門相談員のカンファレンスへの参画について退院・退所加算等の算定要件に明確化することについては、複数の委員が賛意を示した。