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令和3年度障害報酬改定に向け、障害者の就労系サービスについて検討(9月24日)

厚労省の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」(主査=こやり隆史・厚生労働大臣政務官)は24日、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定に向け、就労系サービスについて検討した。

厚労省は、⑴就労移行支援⑵就労定着支援⑶就労継続支援A型・B型⑷就労系サービスの横断事項─に関して論点を提示し、意見を求めた。各サービスともに基本報酬については従来通り実績に応じた報酬体系を維持する方針を示した。就労継続支援B型では、多様な就労支援ニーズへの対応として、現行の「平均工賃月額」に応じた報酬体系のほか、利用者の生産活動等への参加等を支援したことをもって一律の評価をする報酬体系を創設することを提案した。

検討チームのアドバイザーからは全般的に賛同する意見が出されたが、論点によっては異論も出された。

次回は10月5日で、障害児通所支援や医療的ケア児への支援などを検討する予定だ。


就労移行支援の「就労定着率」は過去2年間の実績でみることを提案

⑴就労移行支援は、一般就労を希望し適正に合った職場への就労が見込まれる障害者が対象で、就労に必要な訓練や、職場探し、就労後の定着支援などを実施するもの。

就労系障害福祉サービスから一般就労への移行者の割合を見ると、年々増加傾向で、平成30年度では約2万人。特に就労移行支援からの移行が増えており、移行率は52.9%と5割を超える。

就労移行支援の基本報酬は、平成30年度改定で「就職後6ヶ月以上定着した者の割合」に応じたメリハリある報酬体系とした。具体的に「前年度、就職後6月に達した者の数」を「当該前年度の利用定員」で除した割合(就労定着率)を実績として評価している。

30年4月と令和2年4月の基本報酬の算定状況を比較すると、令和2年4月において就労定着率の高い報酬区分を算定する事業所が増加。厚労省は「報酬改定の内容に連動し、各事業所の実績(就労定着率)が引き上がったことが見て取れる」としている。

厚労省は、論点として①基本報酬②支援の質の向上③一般就労の範囲─の3点を示した。  

このうち①基本報酬については、「引き続き、実績に応じた報酬体系としてはどうか」と「就労定着率」による評価を続けることを提案。他方、関係団体からの意見を受け、事業所の実績をより的確に反映するため、標準利用期間が2年間であることを踏まえ、「就労定着率」は過去2年間の実績を踏まえたものとすることを示した。

ちなみに平成29年度で就労移行支援から一般就労となった者の平均利用月数は15.9ヶ月である。

②支援の質の向上では、まず障害者本人の希望や適性・能力に合わせてサービス提供を行うために、的確に本人の希望等を把握・評価(アセスメント)することが必要と指摘。アセスメントの精度を上げていくために本人や他の支援機関等を交えたケース会議の実施などを行った場合に、報酬で評価することを提案した。厚労省は現時点で加算で評価することを想定しているが、今後、検討を深める。

他方、就労支援員について同一法人内の就労継続支援事業所などとのノウハウの共有や人材利活用の観点から、常勤要件を緩和して、常勤換算による配置も可能とすることを示した(他の就労系サービスにも共通の見直し)。

③一般就労の範囲については、様々な雇用・勤務形態や労働時間数・日数で実際に働くことを実現した障害者がいる実態などを踏まえ、「雇用形態等による線引きはせず、引き続き雇用契約の有無をもって判断すること」とした。

就労定着支援の7段階の報酬区分の見直しを検討

⑵就労定着支援は、就労移行支援などの利用を経て一般就労に移行した障害者のうち、就労に伴う環境変化により、生活面・就業面の課題が生じている者で、一般就労に移ってから6ヶ月を経過した者が対象。障害者との相談を通じて課題を把握するとともに、企業や関係機関等との連絡調整やそれに伴う課題解決に向けて必要な支援を実施する。

月1回以上は障害者に対面して支援するとともに、同様に企業訪問を行うように努める。利用期間は3年間で、経過後は必要に応じて障害者就業・生活支援センター等に支援を引き継ぐとしている。

30年度改定で導入されたもので、30年10月から完全施行された。

厚労省は、基本報酬や要件などについて論点を示した。

基本報酬については、引き続き実績に応じた報酬体系として「支援期間の就労定着率」で評価することを提案。そのうえで、現行の7段階の報酬区分について、各区分の実績の範囲の見直しを示した。現状では、上位2区分に8割以上の事業所がいる一方、下位2区分には事業所がほとんどいないためだ。

また就労移行支援事業所及び就労継続事業所における6ヶ月間の職場への定着支援の(努力)義務期間において、本人が希望する場合、就労移行支援事業所等が就労定着支援事業所等との連絡調整等を図る旨を就労移行支援事業所等の運営基準に規定することを挙げた。

支給要件等についても見直しを提案。支給要件では、「利用者との対面による1月1回(以上)の支援」が課されているが、単に会うだけの事業者もいることから、具体的に、どのような支援を実施したか等をまとめた「支援レポート」を本人その他必要な関係者(企業等)で月1回共有することを要件にすることを提案。厚労省は、「対面してどのようなアドバイスをしたか。確実にどのような支援を行っているか」をまとめて、企業等関係者も含めて支援レポートで共有することを説明した。

他方、就労定着支援事業所の連絡調整の下、関係機関とのケース会議等を実施した場合には、一定の限度において報酬で評価することを指摘。現在、支援開始1年目のみを評価している「企業連携等調整特別加算」を見直すことを提示した。

就労継続支援A型の評価方法で平均労働時間や取り組み項目をスコア化

⑶就労継続支援A型については、通所により雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった障害者を一般就労への移行に向けて支援する。平均賃金月額は上昇傾向であり平成30年度で7万6887円。

厚労省は、論点として①基本報酬②一般就労への移行の促進③送迎加算等─について示した。

まず①基本報酬については、実績に応じた報酬体系を維持することを前提に、「1日の平均労働時間」により取り組みを評価することは、「短時間から働きたい」といった利用者支援ニーズなどを十分に反映することが難しい側面があるとして一部見直しを提案した。

具体的に、「1日の平均労働時間」に加えて、「経営改善計画の有無やその内容」や、「キャリアアップの仕組みの有無やその内容」、「精神障害者等の短時間勤務希望者の受け入れ状況」などの複数の項目における評価をスコア化し、評価することを示した。

さらに当該スコアに係る各項目の評価内容をすべて公表することを事業所に義務付けることとした。

②一般就労への移行の促進では、まず引き続き「就労移行支援体制加算」により、移行実績等を評価することとして、さらなる評価を提案。また就労継続支援から就労移行支援に送り出した場合も一定の評価を行うことを示した。

就労継続支援でも一般就労への移行のさらなる促進を見込み、作業療法士を「福祉専門職員配置等加算」における有資格者として新たに評価することを上げた。

送迎加算については、実態を調査。「公共交通機関がない等地域の実情」といったやむを得ない事情があることなどを踏まえ、継続することを提案。一方、事業所には利用者が自ら通うことが基本である旨をあらためて周知することとした。

また最低賃金減額特例について、今回の改定では特段対応しないこととした。

就労継続支援B型に新たな報酬体系の類型を導入

就労継続支援B型は、就労移行支援事業等を利用したが、企業の雇用に結びつかない者や、一定年連に達しており生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者が利用対象。雇用契約は結ばない。通所により就労の機会を提供するとともに、必要な知識や能力が高まった者は一般就労等への移行に向けて支援する。B型の令和元年度の費用額は3814億円であり、障害福祉サービス等全体の総費用額の13.9%を占める。

平均工賃月額は年々増加傾向であり、平成30年度で1万6118円である。

厚労省は、①基本報酬②多様な就労支援ニーズへの対応③一般就労への移行の促進─に分けて論点を提示した。

まず①基本報酬については、引き続き実績に応じた報酬体系とするとともに、実績は「平均工賃月額」で評価することを提案した。

そのうえで、現行7段階の報酬区分について、下位3区分に8割近くの事業所が存在することから、各区分における実績の範囲(「平均工賃月額1万円以上2万円未満」等)を見直すことを示した。

他方、B型の利用者では精神障害者の割合が増えているほか、難病患者や若年性認知症の人への支援、65歳以上の利用者の増加など多様化していることを報告。「平均工賃月額」だけでは、利用者の多様な就労支援ニーズや事業所の支援の実態を十分に反映することが難しい側面があることを指摘。

②多様な就労支援ニーズへの対応として、現行の「平均工賃月額」に応じた報酬体系のほか、利用者の生産活動等への参加等を支援したことをもって一律の評価をする報酬体系を創設することを提案した。

③一般就労への移行の促進については、A型と同様に、一般就労への移行について「就労移行支援体制加算」により移行実績等に応じた評価を行うとともに、さらなる評価を行うことなどを提案した。

B型における新たな報酬体系の創設について、厚労省は、「平均工賃月額」により評価と新たな報酬体系による評価について、事業所ごとで評価することを想定していたが、検討チームでは「どちらかの類型に振り分けるのは困難。適宜類型の移行ができるようにするのが必要。事業所の中で(利用者の)評価を分けることができないか」などの意見が出された。

また作業療法士を「福祉専門職員配置等加算」における有資格者として新たに評価することについて、検討チームからは賛否両論が出された。

施設外就労の廃止を含めて見直しを提案

⑷就労系サービスの横断事項については、①新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた実績算出②在宅でのサービス利用の要件等③施設外就労─について提案した。

このうち①では、就労系サービスへの新型コロナの影響を考慮し、令和3年度の報酬算定に係る実績の算出について「令和元年度又は令和2年度の実績を用いないことも可能(就労継続支援については平成30年度の実績を用いることも可能)」とすることを提案。令和4年度以降の取り扱いは、その時の状況を踏まえて改めて検討することとした。

新型コロナの対応で、②就労移行支援・就労継続支援の在宅でのサービス利用について、令和2年度中に限り利用要件を緩和しているが、令和3年度以降、常時の取り扱いとして継続することを提案。

適切かつ効果的な支援が実施されるよう、ガイドラインも作成する考えを示した。

また就労定着支援における「対面の支援」も「必要に応じた対面での支援」とし、ICTの活用を念頭に、「対面」要件を緩和する意向を表明した。

③施設外就労は、就労継続支援・就労移行支援で認められているが、さらなる促進のため職員の配置要件などの緩和を提案。そのうえで、施設外就労への加算は、基本報酬との関係や必要性を踏まえ、廃止を含め見直すことを示した。

検討チームでは、施設外就労への加算の廃止を含めた見直しの検討について、「施設の中だけでなく、社会との接点がある中で働くことが大事。マイナスのメッセージになることを恐れる」との意見が出された。厚労省は、「慎重に検討させてほしい」と答えた。  

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