財務省が医療提供見直しや医療保険の負担のあり方で見解(11月7日)
財務省は11月7日の財政制度等審議会財政制度分科会に、社会保障改革についての考え方について提示した。医療提供体制の見直しや医療保険の負担のあり方などについて見解を示している。財政審は11月中にもまとめる令和5年度予算編成に対する建議のなかに反映させる意向。
医療提供体制については、「効果的・効率的な医療提供を行う体制を実現することは医療制度改革の最重要課題」とした。その上で、地域医療構想や地域包括ケアの早急な実現とともに、「診療所等の外来機能分担も不可避であり、『かかりつけ医機能』を有する医療機関の機能を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要がある」と明記した。
かかりつけ医機能を定義した医療機能情報提供制度については、「医療機関の一方的な報告のみに基づくものであり、医療機関を選ぶ基準として十分に機能しているとは言いがたい」と指摘した。
医療保険の負担のあり方では、後期高齢者の増加に伴って現役世代の負担が急増する可能性があることを示し、「負担能力に応じた負担に向けた見直しを早急に実現する必要がある」とした。
後期高齢者医療の保険料については、介護保険が高齢者と現役世代の保険料負担を単純に人口比で設定していることをあげた上で、後期高齢者の保険料負担割合は当初から給付費の1割にほぼ固定されているとし、「現役世代の支援金の伸びを後期高齢者保険料の伸びの水準まで抑える制度改正が必要」と記した。
被用者保険については、被用者保険の保険者間では保険料率に大きな差が生じていることから、「前期高齢者納付金について報酬水準に応じた調整に移行すべき」とした。
介護の利用者負担の原則2割や多床室の室料負担求める
一方、介護保険制度の見直しについても見解を表明。
利用者負担の見直しでは、①原則2割にすることや、2割負担の対象範囲の拡大を図る②現役並み所得(3割)の判断基準を見直す―とし、第9期介護保険事業計画に向けて早急な結論を得るように検討を求めた。
多床室の室料負担については、2015年度に特養は基本サービス費から除く見直しを実施したが、老健施設や介護医療院、介護療養病床の多床室は室料相当分が介護保険給付の基本サービスに含まれたままになっていることを指摘。その上で、①介護医療院は利用者の生活の場になっている②老健施設は平均在所日数が300日を超え、3か月を超えて入所している利用者は77%、180日超は63%、1年超は46%となっている―などの実態をあげ、「どの施設であっても公平な居住費(室料+光熱水費)を求めていく観点から、室料相当額について第9期介護保険事業計画期間から、基本サービス費等から除外する見直しを行うべき」とした。
ケアマネジメント(居宅介護支援)については、利用者負担の導入を提案。ケアマネジメントは利用者負担をとらない例外的取扱いがされている一方、事業者数や受給者数が制度創設時と比較して倍以上に増加するなど既に相当程度定着している状況であることを指摘。その上で、利用者負担の導入によって、「ケアマネジメントの意義を認識するとともに、サービスのチェックと質の向上に資する」とし、第9期介護保険事業計画期間からの導入を求めた。
要介護1・2への訪問介護・通所介護については、「地域支援事業への移行を目指し、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にすべき」と提言した。