見出し画像

通所介護等のADL維持等加算の要件を緩和し単位数を10倍に──令和3年度介護報酬改定

令和3年度介護報酬改定では、自立支援・重度化防止の向けた取組が一層、促進される。その一環として、通所介護のADL維持等加算が拡充され、対象サービスを拡大するとともに、算定要件を緩和する一方、報酬の単位数を10倍に引き上げる。

また通所リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算も見直され、科学的介護情報システム(LIFE)の活用をさらに進めていく。

参考:第199回社会保障審議会介護給付費分科会(1月18日)

(地域密着型)通所介護

ADL維持等加算の対象サービスを拡大

ADL維持等加算について、対象サービスを拡大するとともに、要件を緩和する一方、単位数を現行の10倍にするなどの見直しを図る。さらにADLを良好に維持・改善する事業所をより高く評価する区分を新設する。

現行と同様にBarthel Index(BI)を使い、利用者のADL値を測定し、一定期間の状態の維持・改善を把握することを求める。新たな算定要件や単位数は、図表のとおり。  

今回の見直しにより、評価対象期間は任意の1年間とし、評価対象期間が終わった翌月から算定を可能とする予定。たとえば来年4月から算定する場合、今年の4月から来年3月までを評価対象期間とする。事業所の体制を評価するものであり、要件を満たした場合は、その後1年間、サービス提供を行った利用者に所定の単位数を加算できる。加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の併算は認めない。

対象サービスは、現行の(地域密着型)通所介護に加えて、認知症対応型通所介護・(地域密着型)特定施設入居者生活介護・(地域密着型)特養まで拡大する。

現行の要件からの主な見直し点は次のとおり。

▽5時間以上の通所介護費の算定回数が5時間未満の通所介護費の算定回数を上回る利用者の総数が20名以上とする条件について、利用時間の要件を廃止するとともに、利用者の総数要件を10名以上に緩和する。

▽評価対象期間の最初の月における要介護度3~5の利用者が15%以上含まれるとする要件を廃止する。

▽初回の要介護認定月から起算して12月以内の者が15%以下とする要件を廃止する。

▽LIFEにデータを提出するとともに、フィードバックを活用してPDCAサイクルを推進しケアの質の向上を図ることを求める。評価が可能な者は原則として全員のデータの提出を求める。

▽状態の維持・改善の水準の評価方法を見直す。初月のADL値や要介護認定等の状況に応じて調整式で得られた「調整済ADL利得」を用いる。この調整済ADL利得の詳細は通知で示す。

厚労省老健局老人保健課の調査では、初月のBIの値により、6月目の値の変化は異なり、初月は低い場合は高くなる傾向がある一方、初月が高い場合は低い傾向があることが把握された。そうしたことを踏まえて調整を行う考え。

個別機能訓練加算の見直し

個別機能訓練加算について、従来の加算(Ⅰ)・(Ⅱ)を統合し、算定要件を見直すとともに、LIFEへのデータ提出とともにフィードバックを活用することを評価する上乗せの加算を導入する。

従来の加算(Ⅰ)では、主に身体機能の向上を目的とした機能訓練を実施。加算(Ⅱ)では、主に生活機能の向上を目的としている。機能訓練指導員が2名以上配置されていれば同一日に同一の利用者に対して、両加算の算定が可能だ。しかし実際の訓練内容では差異がみられないとともに、同一日に両加算が算定可能なことが社保審・介護給付費分科会で問題視された。

両加算が統合・整理された加算(Ⅰ)イと加算(Ⅰ)ロは機能訓練指導員の配置要件が異なる。指導員を専従1名以上配置が求められているが、加算(Ⅰ)イでは、一時間の定めがなく、運営基準で求めている指導員により満たすことが可能。一方(Ⅰ)ロでは、サービス提供時間帯を通じて配置が必要であり、さらにイに加えて専従で1名上配置が求められる。

訓練項目は、利用者の心身の状況に応じて、身体機能及び生活機能の向上を目的とする訓練項目を柔軟に設定する。

ニーズ把握・情報収集、計画作成、進捗状況の評価の規定は現行の加算(Ⅰ)・(Ⅱ)とほぼ同様だ。ただニーズ把握・情報収集は、現行は職員が行うことになっているが、改定後は「機能訓練指導員等」が行う。進捗状況の管理では、利用者宅を訪問し生活状況を確認するとともに、計画の進捗状況等の説明も行う。訓練の対象者、実施者の規定は現行の加算(Ⅱ)と同様だ。実施者について、「介護職員等が訓練の補助を行うことは妨げない」ことが追加された。

また新たな加算(Ⅱ)は、加算(Ⅰ)イ又はロに上乗せして算定するもので、個別機能訓練計画等の内容をLIFEに提出するとともに、フィードバックを活用することで算定できる(20単位/日)。

生活機能向上連携加算

(地域密着型)通所介護・認知症対応型通所介護で、訪問介護の同加算と同様に、ICTの活用等により、外部のリハ専門職等が当該サービス事業所を訪問せずに、利用者の状態を適切に把握し助言した場合を評価する区分を新設する。

居住系サービスや(地域密着型)特養、短期入所生活介護でも同様の見直しを行う。

療養通所介護  

月単位の包括報酬へ

療養通所介護について、医療と介護の両方のニーズを持つ中重度の要介護者の状態やニーズに合わせた柔軟なサービス提供を図る観点から、日単位の報酬から月単位の包括報酬に見直す(12691単位/月)。入浴介助を行わない場合は所定単位数の100分の95、サービス提供量が過少(月4回以下)の場合は所定単位数の100分の70とする。

他方、個別送迎体制加算と入浴介助体制強化加算は廃止する。

その他、状態が安定した利用者について、看護職員は、介護職員と連携してICTを活用し、通所できる状態にあることや居宅に戻ったときの状態の安定等を確認することを可能とする(サービスの初回の利用時は不可)。療養通所介護では、全利用者について看護職員が毎回訪問し通所できる状態か確認することなどが求められているが、この点を見直す。

通所リハビリテーション

リハマネ加算の見直し

自立支援・重度化防止に向けた更なる質の高い取組を促す観点からリハビリテーションマネジメント加算(リハマネ加算)を見直す。

報酬体系の簡素化と事務負担の軽減の観点から、リハマネ加算(Ⅰ)と介護予防のリハマネ加算を廃止し、同加算の算定要件は基本報酬の算定要件とする。

具体的に医師がリハの詳細な指示を出すとともに、指示の内容を記録する。また理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、ケアマネジャーを通じて他の事業所に、介護の工夫などの情報を伝えることを求める。

定期的なリハ会議によるリハ計画の見直しが要件とされるリハマネ加算(Ⅱ)・(Ⅲ)について、事業所がLIFEへデータを提出するとともに、フィードバックを受けそのフィードバックの活用によりPDCAサイクルを推進しケアの向上を図ることを評価する。そのため加算(A)ロを新設する。リハマネ加算(Ⅳ)を廃止するとともに、加算(B)ロに組み替える。

また取組を進める事業者の負担軽減及び効率化を図る。LIFEへの入力負担の軽減及びフィードバックにより適するデータを優先的に収集する観点から、リハ計画書の項目について、データを提出する場合の必須項目と任意項目を設定する。また定期的なリハ会議の開催について、利用者の了解を得た上で、テレビ会議等の対面を伴わない方法で開催することを可能とする。

こうした見直しは訪問リハでも同様に行う。

長期間利用の介護予防リハの適正化

介護予防リハで利用開始から一定期間が経過した後の減算を新設する。介護予防通所リハの利用について、利用開始日の属する月から12月超の場合、要支援1で▲20単位/月、要支援2で▲40単位/月とする。同様に介護予防訪問リハでも▲5単位/回とする。

生活行為向上リハ実施加算の見直し

生活行為向上リハビリテーション実施加算の単位数について3月以内と3月超6月以内で分かれている単位数を6月以内で統一する(通所リハの場合1250単位/月とする)。さらに加算によるリハを終えたのちに6月を超えてリハを継続する場合に基本報酬を6月間減算する規定を廃止する。 また要件の一部を見直す。通所リハ事業所の医師又は医師の指示を受けたリハ専門職が利用者宅を訪問し生活行為に関する評価を概ね1月に1回以上実施することを追加する。

社会参加支援加算を「移行支援加算」へ

加算の趣旨や内容を踏まえて、名称を「移行支援加算」とするとともに、要件の一部を見直す。単位数に変更はなし。

リハ終了者が通所介護事業所等に移行するにあたり、リハ計画書を移行先の事業所へ提供することを追加する。またリハ終了者に対する通所介護等の実施状況の確認は電話等で行えるように明示する。通所リハの終了者のうち通所介護等を実施したものの割合とリハ利用の回転率を見直す。

社会保険研究所ブックストアでは、診療報酬、介護保険、年金の実務に役立つ本を発売しています。