訪問系サービスや居宅介護支援について議論(8月19日)part3
社会保障審議会介護給付費分科会は(田中滋分科会長)19日、令和3年度介護報酬改定に向け、①訪問看護、②訪問リハビリテーション、③訪問介護、④訪問入浴介護、⑤居宅療養管理指導の訪問系5サービスと、⑥居宅介護支援・介護予防支援について検討した。
part3では、居宅療養管理指導について取り上げる。薬剤管理や栄養指導での診療報酬上での対応を踏まえ、医療保険と介護保険の整合性の観点から意見が求められた。
オンライン服薬指導などの促進が示される
居宅療養管理指導は、医師又は歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士等が、通院が困難な利用者の居宅を訪問して、心身の状況、おかれている環境等を把握し、療養上の管理及び指導を行うサービスだ。看護職員による居宅療養管理指導は平成30年度改定で廃止された。
請求事業所数は年々増加しており、31年で3万9,123事業所。受給者数も増加しており80万人を超えた。費用額も伸びており、約1180億円。
各職種による居宅療養管理指導を取り巻く状況を踏まえて厚労省は意見を求めた。
薬剤師による居宅療養管理指導について、新経済・財政再生計画改革工程表2019で、2017年度と比べて2021年度までに算定件数を40%増加することが目標とされている。他方、今年9月に施行される「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等一部改正法」では、一定のルール下でのテレビ電話等による服薬指導について規定された。さらに今年度の診療報酬改定では、「在宅患者訪問薬剤管理指導料 在宅患者オンライン服薬指導料」が新設された。
居宅療養管理指導における医師と管理栄養士の連携も求められている。
医師による居宅療養管理指導で、管理栄養士の同行を希望するのは54.1%と過半数を超える。助言を求めることは、「食事形態」に関して69.8%など。診療所の94.3%で居宅療養管理指導を実施しているが、約10万1千施設の診療所のうち管理栄養士・栄養士の常勤換算従事者数は6千人に満たない。他方、約8千施設の病院の管理栄養士等は約2万7千人と多い状況だ。
また今年度の診療報酬では「在宅患者訪問栄養指導料」が見直され、「栄養・ケアステーション」や他の医療機関の管理栄養士が栄養指導を行った場合の評価が導入された。
こうした薬剤管理や栄養指導での診療報酬上での対応を踏まえ、医療保険と介護保険の整合性の観点から厚労省は意見を求めた。
歯科衛生士等による居宅療養管理指導の様式例は口腔機能向上加算の様式例を準用することになっている。口腔機能に関する欄が多く、口腔衛生に関する欄が少ない。一方、歯科衛生士等による居宅療養管理指導では「口腔ケア」が9割強など口腔衛生に関する指導の割合が高い状況で、厚労省は様式例が実態に合っていないことを提示した。
医師による居宅療養管理指導において、ケアプラン策定のための情報提供について、診療報酬の診療情報提供料に定めた様式を活用して行うことも可能だ。一方、現行の主治医意見書の様式では、移動や栄養・食生活の状況など、より多くの情報を記載する欄が多い状況だ。
他方で要介護認定の有効期間の見直しもあり、更新認定の期間は長くなってきている。令和3年4月からは、直前の要介護度と同じ要介護度判定された場合、有効期間を最大で48か月まで設定することを可能とする予定だ。
また、かかりつけ医に対していわゆる「社会的処方」を行うことが求められている。「社会的処方」とは、かかりつけ医等が患者の社会生活面の課題にも目を向け、地域社会における様々な支援へとつなげる取り組みとされている。
こうした状況を踏まえ、厚労省は、日常生活における地域の社会資源の活用も含めた包括的なサービスの提供や、自立支援・重度化防止に資する介護を推進する観点から、情報提供の様式例を含めた方策について意見を求めた。
意見交換で、日本歯科医師会の小玉剛委員は居宅療養管理指導に関連して、「認定において口腔の状態や口腔機能の評価が十分ではない」とし、主治医意見書等に調査研究事業で作成された口腔状態のスクリーニング項目を入れた情報共有の仕組みづくりを求めた。また在宅患者へのオンライン服薬指導に触れ、歯科におけるオンラインによる対応の評価の議論も要望した。
歯科衛生士等の居宅療養管理指導の様式例の見直しに賛意を示し、「口腔機能管理と口腔衛生管理をバランスよく提供できる様式の整備が必要だ」と述べた。
日本薬剤師会の荻野構一委員は、居宅療養管理指導に、「オンライン服薬指導は対面指導を補完する手段」としつつも、医療保険と介護保険における取扱いについて一定程度の整合性を確保することを支持。さらに介護保険法上における法整備も求めた。