労働者協同組合設立が110を超える――労協法施行から2年
令和4年10月1日に施行された「労働者協同組合法(労協法)」に基づき設立された労働者協同組合は令和6年10月1日現在で、110法人を数えた。
少子高齢社会における多様な働き方の選択肢を広げるために施行された同法の下に、地域に根差したさまざまな法人が1都1道2府27県で誕生している。
労働者協同組合は、
1) 組合員が出資すること
2) その事業を行うにあたり、組合員の意見が反映されること
3) 組合員が組合の行う事業に従事すること
の基本原理に従い、持続可能で活力ある地域社会に資する事業を行うことを目的としている。
このため、労働者協同組合は、地域社会への貢献や持続可能な事業運営を重視しているため、組合がその目的に照らして行うことが適当でないものとして労働者派遣事業は認められていない。しかし、労働者派遣事業以外の事業であればどんな事業でも取り組み可能だ。
NPO法人では実施の事業は20の分野に限られ、さらに事務所所在地の所轄庁に認証される必要があるという点を比べても、労働者協同組合の設立は簡便である。
労働者協同組合は、労協法が施行された令和4年度には26法人が設立され、令和5年度には54法人となり、令和6年10月1日現在で、110法人となった(厚生労働省が把握しているものに限る)。110法人中新規の設立は89法人、企業組合やNPO法人からの組織変更は21法人となっている。
労働者協同組合の特色としては、
(1)地域における多様な需要に応じた事業ができる。
(2)行政庁による許認可等が必要な NPO法人や企業組合とは異なり、
法律の要件を満たし、登記をすれば法人格が付与されるほか、
上記法人よりも少ない、3人以上の発起人で設立可能。
(3)簡便に法人格を取得でき、契約などができる。
(4)事業の実施に当たり、組合員の間で、平等の立場で、話し合い、合意 形成をはかる。
(5)組合員は労働契約を締結し、労働基準法、最低賃金法、労働組合法な
どの法令による労働者として保護される。
(6) 配当を行う場合、出資額に応じてではなく、組合の事業に従事した分 量に応じて行う。
などが、特色となっており、本業をもちながら、副業として労働者協同組合に参加したり、リタイアしたシニア世代の人が仲間とそれまで培ってきた経験を生かして地域に貢献する例のほか、従来の介護施設の勤務にとらわれず、自分らしい働き方を求める介護のスペシャリストが設立した例など、多様な働き方を示す例がみられる。
厚労省では、労働者協同組合を通じ、多様な働き方を実現しつつ、地域の課題の解決のための活動の選択肢が広がるよう、令和6年9月から令和7年2月にかけて、全6回の「ろうきょうオンラインセミナー」を開催している。
さらに令和6年8月からは、国がモデル地域として選定した都道府県に設置の協議会において労働者協同組合の活用を通じ、
(1)個々の事情に応じた多様な働き方が可能となる環境の整備や、
(2)働きづらさを抱える方々や女性、中高年齢者
などの多様な雇用機会の創出を行う創意工夫ある地域の取組を支援し、全国展開を図るモデル事業を実施している。
厚生労働省 労働者協同組合の設立状況