障害福祉サービス等改定に向け、医療連携体制加算など横断的事項を検討(11月18日)
厚労省の障害福祉サービス等報酬改定検討チームは11月18日、令和3年度報酬改定に向け、感染症や災害への対応など各サービスの横断事項や、残されている論点について議論した。横断的事項として医療連携体制加算の見直しを図ることや、感染症・災害対応として全事業者に業務継続に向けた計画(BCP)の策定を求めることなどを示した。検討チームのアドバイザーは概ね賛同した。
また各サービスで残された論点について厚労省は、障害児入所施設のいわゆる過齢児の対応で地域移行で新たな評価を導入することを提案した。障害児通所支援では、報酬体系を見直す方向を提示した。
医療連携体制加算の見直しを提案
横断的事項として医療連携体制加算の見直しを提案した。同加算は、指定基準で看護職員の配置を求めていない短期入所(福祉型)など9サービスに導入されている。医療機関等との連携により、看護職員を訪問させ、利用者に看護を提供した場合や認定特定行為業務従事者に対し喀痰吸引等に係る指導を行った場合について評価するもの。たとえば短期入所(福祉型)では算定要件により加算Ⅰ~Ⅶまでの7つが導入されている。
現場の運用では不適切な事例が報告されている。
たとえば面接や診察なしで医師が指示書を作成していたり、メンタルケア(メンタルヘルスにかかる問診、体温・血圧測定)を原則、毎日実施したりしている(8名に対して30分程度)。指示書に児童の名前がなく、指示の内容は「看護(バイタルサイン測定、一般状態観察、メンタルケア、主治医との連携)」と書かれており、希望者全員に適用しているケースもある。
杜撰な運用に対して自治体で独自に適正化を促す通知を発出している例もある。
こうした状況を踏まえ、厚労省は次のように提案した。
各サービスで提供されている医療・看護について、医療的ケアを要するなどの看護職員の手間の違いに応じて評価していく。
日頃から利用者を診察しているかかりつけ医等からの指示に基づいて医療・看護を提供することや医師からの指示は文書によって受けることを明確化する。 一方、医療的ケア児者の短期入所の受け皿が不足している現状から短期入所(福祉型)でも受け入れを可能としていく必要がある。しかし現状の加算の単価では長時間の看護師の訪問経費を賄うことが難しい。
そこで、短期入所(福祉型)については、特に高度な医療的ケアを長時間必要とする場合の評価を設定する考えも示した。
全ての障害福祉サービス等事業者にBCPの策定を求める
全ての障害福祉サービス等事業者を対象に、運営基準において、業務継続に向けた計画(BCP)の策定や研修、訓練の実施等を規定することを示した。一定の経過措置期間を設ける。
感染症対策で、施設系・訪問系・通所系・居住系サービス等について委員会の開催や指針の整備、研修、訓練の実施を求めていく(施設系では研修は定期的に実施)。
非常災害対策で、施設系・通所系・居住系サービス事業者には訓練の実施に当たり、地域住民との連携を努力義務とすることも示した。
その他、地域区分について介護報酬と同様の対応を図ることを示した。
障害児入所施設の小規模グループケア加算の算定を促進
障害児入所施設の小規模グループケア加算の算定対象では、重度障害児支援加算の設備要件のうち、①重度障害児専用棟の設置や②重度障害児入所棟の定員をおおむね20人以上とすること、③居室を1階に設けること、を不要とすることを提案した。③については災害等に安全に避難できる方法の確保等に留意するとした。地方からの提案などを踏まえた見直し。
この要件緩和について、検討チームのアドバイザーから「火災などの発生に備えて居室を1階に設ける要件は残してはどうか」などと異論が出た。
障害児入所施設の過齢児の地域移行の促進で新たな評価
障害児入所施設の18歳以上入所者(いわゆる過齢児)の地域移行の促進の一環で、強度行動障害の人がグループホームで体験利用を行う場合、強度行動障害支援者養成研修・行動援護従業者養成研修の修了者を配置しているグループホームは加算で評価することを提案した。新たな評価は、強度行動障害者地域移行特別加算を参考に検討する。
また自活訓練加算の要件の見直しを提案した。
現行の実施時期は、特別支援学校等の卒業後の進路に合わせて設定することが目安とされているが、個々の児童への訓練の必要な時期に応じて、設定の目安を高校入学から措置延長も考慮し、二十歳まで間で柔軟に設定できるように見直す。
実施期間は同一の給付決定期間中に6月間(180日)を1回(継続の必要がある場合は2回)算定が可能だが、児童の状態によっては長期間訓練を重ねた方が良い場合があるため、3年程度の期間の中で柔軟に期間設定ができるようにする。
実施場所も児童の移行予定先の環境により近い状態で訓練ができるよう柔軟に設定することを可能とする。現行では敷地外においては「当該建物に隣接した借家等」としている。
グループホームの夜間支援体制加算を見直し
グループホームの夜間支援等体制加算Ⅰについて利用者の障害支援区分に応じて3段階(区分4~6、区分3、区分1・2区分無し)で設定しメリハリある加算額に見直すこととした。
そのうえで、入居者の状況に応じた手厚い支援体制の確保や適切な休憩時間が取得できるよう、住居ごとに常駐の夜勤職員に加えて、事業所単位で夜勤職員又は宿直職員を配置し、複数の住居を巡回して入居者を支援する場合には、さらなる加算を設けることを示した。
また現行の加算額は支援対象者の人数が8名以上の場合は複数人ごとに加算額を設定しているため、支援対象者が多い方が合計加算額は少なくなる。そのため支援対象者の人数が1人増えるごとに単価を設定する方向を示した。
児童発達支援・放課後等デイの報酬体系を見直しへ
障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)については10月5日での検討やその後の財務省の令和2年度予算執行調査、令和2年度障害福祉サービス等経営実態調査などを踏まえてあらためて検討を求めた。
11月12日に公表された経営実態調査では児童発達支援の令和元年度の収支差率は1・2%であることが示されていたが、今回、種別や規模別の特別集計が示された。具体的に、児童発達支援センターの収支差率は1・7%、その他の児童発達支援事業所では0・9%であることが分かった。さらに、その他事業所を定員規模別にみると、10人以下は3・7%と高かったが、11~20人以下は▲12・6%、21人以上は▲28・9%と、規模が大きくなると悪化している状況が分かった。
放課後等デイの収支差率は10・7%であることが示されていた。特別集計では区分別や児童指導員等配置加算の取得の有無別の収支差率が示された。具体的に区分1は14・4%、区分2は10・2%であることが分かった。また加算の有無別では区分1の加算有りで14・7%、加算無しで1・8%。区分2の加算有りで11・8%、加算無しで▲16・0%と格差があることが分かった。
また、30年度決算に基づいた財務省の予算執行調査で、放課後等デイについて、区分1の収支差率が13・9%と、主として重症心身障害児を対象とした場合の3・9%と比べ「著しく高い」と指摘されていた。また児童指導員等加配加算の取得の有無別の収支差率でも令和元年度決算の場合と同様の傾向があり、「加配に必要なコストを適正に反映できていない可能性」が指摘されていた。
こうしたことを受け、厚労省は、児童発達支援の報酬体系の見直しについて提案した。
具体的に、児童指導員等加配加算Ⅰについて放課後等デイにおける対応と合わせて報酬額を見直す。その際、対象資格に手話通訳士・手話通訳者を追加する方向だ。
児童指導員等加配加算Ⅱを廃止した上で次の加算を導入する(加算名称はいずれも仮称)。
「要支援児加算」(著しく重度及び行動上の課題のあるケアニーズの高い児童への支援に対する加算。就学児は、支援の必要性をみるための指標該当児の判定要件を用いる。未就学児は5領域11項目の調査項目を用いる)
「要保護加算」(要保護・要支援児童への支援に対する加算)
「専門的支援加算」(理学療法士や公認心理師等の専門職による支援が必要な児童がいる場合で、専門職を常勤で配置している場合に加算)
従業者の基準について、一定期間の経過措置を設けた上で、現行の「障害福祉サービス経験者」を廃止し、保育士・児童指導員のみに引き上げる。
基本報酬については、経営実態調査の定員規模別の収支差率等を踏まえて見直していく。
他方、放課後等デイについては、10月5日の検討を踏まえ、受け入れる障害児の状態や割合に応じた、事業所の区分1と区分2という区分分けを廃止するとともに、児童発達支援と同様に加算や基本報酬を見直していく方向を示した。
また放課後等デイでは、短時間(30分未満)のサービス提供を行った場合でも長時間の場合と同様に報酬が算定されている現状があることから、実際のサービス提供時間に合わせた基本報酬の設定が地方分権提案で要望されている。
これを受け、今回の改定では、あらかじめ市町村が利用児童等の状況を踏まえ個別に必要性を認めた場合等を除き、短時間(たとえば30分以下)のサービス提供は報酬を算定しないことを示した。
そのほか、放課後等デイの対象について専修学校に通う児童などまで拡大することが30年度地方分権改革推進提案で求められていたが、10月5日の検討チームにおけるアドバイザーの意見を踏まえ、放課後等デイの果たすべき役割など制度の在り方を今後議論していく中で検討を続けていくこととした。