訪問系サービスや居宅介護支援について議論(8月19日)part4
社会保障審議会介護給付費分科会は(田中滋分科会長)19日、令和3年度介護報酬改定に向け、①訪問看護、②訪問リハビリテーション、③訪問介護、④訪問入浴介護、⑤居宅療養管理指導の訪問系5サービスと、⑥居宅介護支援・介護予防支援について検討した。
part4では、居宅介護支援・介護予防支援について取り上げる。収支差率がマイナスの居宅介護支援について、複数の委員が基本報酬の引き上げなどプラス改定を求めた。
複数の委員が居宅介護支援の基本報酬の引き上げを要望
居宅介護支援・介護予防の請求事業所数は平成31年度で合計4万4757か所(居宅介護支援3万9685か所、介護予防支援5072か所)。費用額は30年度で5013億円だ。受給者数は30年に一度、減少したが31年からは再び増加している。30年に減少したのは、29年度で総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)が完全施行され、予防給付の訪問介護と通所介護が同事業に移行したことから、要支援者が減少した影響が考えられる。
居宅介護支援は制度発足以降、収支差率のマイナスが続いている。訪問介護や通所介護など他のサービス事業所との併設により運営を保っているケースが多い。
30年度改定では基本報酬がプラス改定となった。その一方、令和元年度介護事業経営概況調査結果によると、30年度決算でも収支差率はマイナス0.1%となっている。同調査によると、ケアマネジャー1人当たりの利用者が31人~40人まで確保されている事業所では収支差が黒字となっていた。
また複数名の常勤のケアマネジャーを配置するなど、一定の要件を満たした場合に算定可能な特定事業所加算(Ⅰ)・(Ⅱ)を算定している事業所では収支差率が黒字だが、(Ⅲ)や加算を算定していない事業所では収支差率がマイナスとなった。特に、算定していない事業所ではマイナス5.7%と赤字が大きくなっている。
他方、制度改正の議論を行った社会保障審議会介護保険部会では◇インフォーマルサービスも盛り込まれたケアプランの推進◇負担が大きいとされる介護予防ケアマネジメントの外部委託を行いやすい環境の整備─などを求める意見が出された。
こうした状況を踏まえて厚労省は、意見を求めた。
全国老施協の小泉委員は、「居宅介護支援について収支差率は改善傾向であるが、以前としてマイナスであり、質が向上すれば人件費がかかるが、基本報酬等の見直しや処遇改善が必要。ICT整備に関する助成も考慮すべき」と主張した。
民間介護事業推進委員会の今井委員は、居宅介護支援について「報酬単価の引き上げ・拡充をお願いしたい。特定事業所加算を取得しないとマイナスであることが実態」と述べた。インフォーマルサービスを組みこんだケアプランの評価も求めた。
日本慢性期医療協会の武久洋三委員もケアマネジャーの独立性を確保する観点から「居宅介護支援はプラスにしてほしい」と要望した。
連合の伊藤委員は、居宅介護支援について「ケアマネジメントの質の観点から1人当たりの担当件数を考えていく必要がある」とし、報酬の見直しを求めた。
日本介護支援専門員協会の濵田和則委員は、居宅介護支援においてインフォーマルサービスを組み入れたケアプランについて「給付サービスの利用実績に関わらず評価を検討してほしい」と求めた。また地域包括支援センターの負担軽減の一環としての介護予防支援の委託については、介護予防支援の評価を高めるとともに、事務の簡素化を指摘した。
日医の江澤委員は、居宅介護支援について、「通院の同行について新たな評価を検討すべき」と述べた。また経営状況を踏まえ、基本報酬の設定が適当か検討すべきとした。