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物流の働き方改革に備え医療機器流通の対応策(2023年10月6日)

厚労省は6日、医療機器の流通改善に関する懇談会を7年ぶりに開催した。2024年度からトラックドライバーに働き方改革関連法の「時間外労働の上限規制」が適用されることを踏まえて、医療機器の流通における対応を議論した。11月上旬に開かれる次回会合で、厚労省から2024年問題への対応案が示される見通し。

トラックドライバーの年間労働時間は全産業平均より2割程度長い。医師と同様に一般労働者とは異なる取扱いがなされ、2024年度から働き方改革関連法の「時間外労働の上限(休日を除く年960時間)規制」がトラックドライバーに適用されるようになる。これに伴い輸送可能量が低下するため、物流に課題が生じる。これが「2024年問題」と呼ばれている問題で、国土交通省の試算では2024年度に14・2%、2030年度には34・1%の輸送能力が不足する。

この2024年問題に対して内閣官房は、商慣行の見直しや物流の効率化、荷主と消費者の行動変容を進める対策を盛り込んだ「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定した。2024年度以降、納品回数の減少や物流リードタイムの長期化、物流コストの増加が生じる可能性があると指摘されている。そのため、他の業界ではドライバーの荷役作業の削減や共同配送の取組みが進められている。
医療機器の物流にも2024年問題の影響が及ぶ恐れがある。厚労省は各関係者がとりうる実効的な方策を議論するよう提案した。

医療機器業界から医療機関に対して、◇物流費用が増加することに伴う販売業者からのコスト転嫁の受容◇医療機器の配送や納品のリードタイムが伸びるため、リードタイムを加味した1日でも早い発注◇時間指定や納品場所指定、ロット指定、軽微な外装汚れも認めないなど現行の納品ルールの緩和◇医療機関が保有する在庫の増量――の要望がなされた。

日本医師会の宮川政昭委員は、2024年問題による医療機器の緊急配送への影響を具体的に示すよう求めた。また、日本病院会の岡俊明委員は、発注時間の前倒しなど、医療機関が一定の行動変容に取り組むことは可能とする一方、物流費用上昇分の価格転嫁には慎重な姿勢を示した。「2024年度以降の費用上昇について具体的な試算を出してもらえれば、診療報酬改定に向けてコスト上昇分も考慮できる」と述べた。
医療機関が医療機器の在庫を多く持つことに対しても、委員から否定的な意見が出された。

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