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全世代型社会保障構築会議が意見交換 子育て支援と勤労者皆保険の実現が論点(3月9日)

政府の全世代型社会保障構築会議は3月9日、実質的な議論を開始し、全世代型社会保障の当面の論点について意見交換を行った。

主な論点として、◇子育て支援◇勤労者皆保険の実現◇「住まい」に関する施策の検討―に関する意見が相次いだ。

子育て支援については、施策全体を継続的・包括的に進める制度を求める声が多く、新たな「子ども・子育て基本法」の法整備のほか、「拠出金制度や基金制度を財源として考えるべき」との意見があがった。

勤労者皆保険の実現は、「適用拡大をまず進めるべきであり、特に50人未満の事業所への適用拡大と、非適用業種をなくすべき」との指摘や、「106万の壁」「130万の壁」といった、既婚女性の就労の制約となる制度の見直しの必要性を求める声があがった。

「住まい」に関しては、コロナ禍で住宅確保給付金の重要性が再認識される一方で、「社会保障のサービスは住まいがあることを前提に供給できるものもあり、住まいがない時点で対象から外れるということもある」との指摘があり、「今後は医療・介護・住まいを一体に、社会保障のなかで捉えていくべき」とした。

デジタル化とPHRの推進図る

医療・介護・福祉サービスに関しては、デジタル化とPHR(Personal Health Record;個人の健康・医療・介護に関する情報)のほか、機能分化と連携に関する意見があった。人口減少社会において、マンパワーの確保は重要とした上で、ITの活用により人材への依存を下げ、少ない人でもサービスを提供できるような対策が必要であり、ひいては生産性の向上や処遇改善につながるとした。

PHRについては、個人情報保護の問題も配慮しながら、データをうまく連結できるように取り組むべきとした。

医療提供体制については、特にコロナで得られた教訓として、「機能分化と連携が機能していない」と強調。自治体や都道府県への権限を付与し、都道府県の人材も育成・活用すべきとした。

また、社会保障制度の持続可能性を確保するため、「能力があれば高齢者でも負担をすべき」との意見もあがった。

香取照幸委員「第4号被保険者の創設を検討すべき」

上智大学総合人間科学部教授・一般社団法人未来研究所臥龍代表理事の香取照幸委員は当面の論点に関する構成員意見を提出。全世代型社会保障の議論を「世代間対立に矮小化してはいけない」と強調した。

子育て支援については、社会全体で担う安定的な財源確保を図りつつ、包括的子育て支援制度の創設をめざす必要があるとした。

勤労者皆保険の実現に関しては、特にフリーランスなどの非典型労働に従事する就業者について、ドイツのミニジョブなど諸外国の例を参考に、「就労実態にふさわしい別の形の被保険者類型、いわば第4号被保険者の創設を検討すべき」との意見を述べた。

医療介護提供体制の見直しについては、「医療に求められる機能が『治す医療』から『治し支える医療』へと変化している」と指摘。

◇在宅医療の機能強化◇病院の機能分化◇デジタル技術の活用・医療ITの推進を加速化―を実現するための診療報酬体系・介護報酬体系の見直しを進める必要があるとした。

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