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国年の育児期間免除制度創設案を了承――第11回社会保障審議会年金部会

厚生労働省の社会保障審議会年金部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事、法学学術院教授)は昨年12月26日、国民年金被保険者の育児期間について保険料を免除することや、標準報酬月額の上限について審議した。

第11回社会保障審議会年金部会

厚生労働省は、昨年12月22日に「こども未来戦略」が閣議決定されたことを受け、自営業やフリーランスの育児期間について国民年金保険料の免除制度措置について、年金部会の意見を求めた。この免除制度では、子を養育する国民年金第1号被保険者の父母(養父母を含む)両者が対象となるほか、所得要件や厚生年金のような休業要件を設けないこととしている。また、育児期間免除の対象期間は、原則として子が1歳になるまでとし、産前産後免除が適用される実母の場合は産後免除期間に引き続く9ヵ月とすることが示された。この育児期間免除には、政府が少子化対策に充てる費用として医療保険を通じて企業や国民が拠出する「こども・子育て支援金制度」(仮称)を新たに創設することとしている。

委員からは、所得要件や休業要件がない点について厚生年金との公平性を指摘する声があったほか、産前産後休業期間の保険料免除制度の利用率が厚生年金と比べて低いことから、育児期間についても必要な人に届くように方策を考えるべきといった意見が出た。また、財源についてもっと検討するべきなどの意見があったものの、おおむね了承された。施行時期は2026年度中を予定しているため、今年の通常国会へ法案を提出する予定だ。

保険料を算出するのに用いる標準報酬月額は、厚生年金では8.8万円~65万円の間に32等級あり、健康保険では5.8万円~139万円の間に50等級ある。厚生年金では、標準報酬の額が年金額に反映されるしくみになっているため、給付額の差があまり大きくならないようにすることや、高額所得者・事業主の保険料負担に配慮する観点から、標準報酬月額の上限を健康保険よりも低く設定している。ただ、全被保険者の平均標準報酬月額の2倍に相当する額が標準報酬月額の上限を上回り、その状態が継続すると認められる場合には、上限を引き上げることが可能となっている。この日は、この現行ルールを見直して上限を引き上げることについて審議した。

標準報酬月額については、検討を進めることに前向きな姿勢を示す委員が多かったが、32等級(65万円)の上限を超えている人の実態など検討に必要なデータを整理して提出するよう要請する意見が多数出された。

今後は、今年の夏に予定されている財政検証とオプション試算に向けた議論を行い、財政検証結果を踏まえたうえで、これまで検討してきた事項について2巡目の議論を進めていく予定だ。


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