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財政検証における経済前提について検討作業班が取りまとめ――年金財政における経済前提に関する専門委員会

厚生労働省の社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会(委員長=深尾京司・日本貿易振興機構アジア経済研究所所長・一橋大学特命教授)は12月4日、令和6年までに行う次期財政検証に使用する経済前提について、技術的な検討や具体的な作業を行うために設置した検討作業班(座長=玉木伸介・大妻女子大学短期大学部教授)から取りまとめの報告を受けた。

第6回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会

検討作業班は、経済前提は複数のシナリオを幅広く想定し、長期の平均的な姿として複数ケースの前提を設定すべきものであり、財政検証の結果についても幅をもって解釈する必要があるとした。長期の経済前提を設定するために用いるパラメータの設定については、財政検証が一定のシナリオに基づく「投影」であることを踏まえ、2019年財政検証の経済前提の設定と同様に過去30年のデータを用いて設定することを原則とすべきと報告。また、パラメータ設定の際には、新型コロナウイルス感染症の影響下のデータを除外せずに使用することが適当であるとした。

パラメータの設定については、経済成長のうち資本と労働投入以外による寄与を示す指数である「全要素生産性(TFP)」の上昇率や、労働投入量については幅広く設定すること、資本分配率と資本減耗率はすべてのケースで過去30年平均の実績で設定すること、物価上昇率については2019年財政検証を参考に設定することが適当だとした。長期の運用利回りの設定については、2019年財政検証ではケースⅠ~Ⅴの実質運用利回りを年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用実績に基づいて設定し、ケースⅥは債券の満期となる期間と利回りの関係を表したイールドカーブを用いて設定していたが、今回はケースⅠ~ⅥすべてにGPIFの運用実績を活用することが適当だとした。運用実績の活用にあたっては、10年程度の一定の長期間の移動平均の変動の幅を踏まえ、保守的に設定することが適当であるとした。実質賃金上昇率と労働生産性上昇率が乖離していることについては、経済成長率や賃金上昇率を実質化する際に生じるデフレーターの違いが大きな要因と分析し、2019年財政検証と同様に将来にわたってこの要因が継続することを想定すべきとした一方、雇用主の社会負担や生産・輸入品に課される税―補助金などデフレーター以外の要因については、考慮する積極的な理由はないとの考えを示した。

足下の経済前提の設定については、2019年財政検証で賃金上昇率と運用利回りともに内閣府の中長期試算を基に設定していたが、今回は賃金上昇率を内閣府の中長期試算によって、運用利回りをGPIFの実質運用利回りの実績によって設定するべきとした。足下の経済前提と長期の経済前提の接続については、2019年財政検証では全要素生産性(TFP)上昇率、労働投入量、物価上昇率の水準を意識していたが、今回はこれに加えて実質賃金上昇率や実質的な運用利回りも意識して接続させるべきだとした。

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