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モデル年金の示し方に共働き世帯や単身世帯を追加する方向性を検討――第9回年金部会

厚生労働省の社会保障審議会年金部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事・法学学術院教授)は11月21日、マクロ経済スライドによる調整期間の一致や年金給付水準の示し方について議論した。

賃金や物価によって年金の給付水準を調整するマクロ経済スライドは、デフレ経済による賃金や物価の伸びの低迷などによって調整期間が長期化し、2019年財政検証における追加試算によると、現行制度のままだと基礎年金は2046年、厚生年金(報酬比例部分)は2025年に調整期間が終了する見通しとなっている。基礎年金部分の調整期間が厚生年金より長期化すると、現役時の給与が低いほど基礎年金の占める割合が大きくなるため、給付水準の低下幅も大きくなる。こうした問題への対応策として、基礎年金と報酬比例の給付水準をそれぞれ別に決定する現行の2段階方式から、基礎年金と報酬比例を合わせた公的年金全体として同時に決定する1段階方式にすることで調整期間を一致させるしくみが示された。

厚生労働省資料より

また、国庫負担分を除いた基礎年金の給付費は2000年代以降、国民年金保険料よりも高くなっており、その差額は積立金で賄われている。基礎年金の給付費は、国民年金と厚生年金の20歳から60歳未満の加入者数で按分しており、積立金についても同様に按分している。積立金については、現在の加入者が積み立てたものとは限らないことなどから現行の按分方法が適当かどうかといった論点も示された。

厚生労働省資料より

毎年公表されているいわゆる「モデル年金」については、過去の年金制度改正でそれぞれ計算方法などが変更されてきたが、昭和60年改正で「男性の平均的な賃金で40年間就業した場合の老齢厚生年金+夫婦2人分の老齢基礎年金」と設定された。さらに、平成16年改正ではモデル年金が現役世代の賃金に占める割合を示す「所得代替率」を算出し、所得代替率が将来にわたって50%を上回ることが法律に規定された。そのため、モデル年金は昭和60年改正以降、同じ方法で年金給付水準を示し続けており、継続的な給付水準の変化を示す「ものさし」としての機能がある。
一方、時代の流れとともにライフコースが多様化し、共働き世帯や単身世帯が増加していることなどを受け、これまで片働き世帯を想定した考え方を見直すことやモデル年金以外の所得保障の状況がわかるように工夫することを要請する意見が過去の年金部会などで出されていた。
委員からの意見は、ものさしとしてのモデル年金を存続させつつ、標準的な年金受給スタイルを示す広報資料としてのモデル年金については、多様なライフスタイルを想定したわかりやすいものを国民に示すべきという指摘が大多数だった。また、「モデル年金」という言葉の変更を求める意見も複数出された。


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