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単身未婚高齢者の増加を見据えた年金政策などを提言――第97回年金数理部会

厚生労働省の社会保障審議会年金数理部会(部会長=翁百合・日本総合研究所理事長)は11月13日、将来推計人口について慶應義塾大学経済学部教授の石井太氏による基調講演や意見交換をオンラインセミナー形式で開催した。

石井氏は、公的年金の財政検証に使用される「日本の将来推計人口(令和5年推計)」について解説。21世紀はわが国がこれまで歴史上経験したことのない人口減少社会になっていることや、0~14歳の年少人口や15~64歳の生産年齢人口が減少する一方で、65歳以上の老年人口が増加する年齢構成の変化を指摘した。

また、将来推計人口(令和5年推計)の作成にあたっては、社会保障審議会人口部会で公的将来人口推計の考え方や仮定設定に関する議論が行われ、公的将来人口推計では50年間またはそれ以上の期間を対象とする長期の推計が行われ、将来が不確定、不確実であるなかで客観性・中立性を保ちながら科学的に人口の姿を導き出す方法論が人口投影(population projection)という考え方であると紹介。公的将来人口推計は、この人口投影の考え方に基づくものであると説明した。さらに、人口投影とは、人口自体や人口変動要因(出生、死亡、移動)について、基準時点までに得られる人口学的データの趨勢・傾向に基づいて一定の仮定を設定し、それによって導かれる将来の人口の推移を計算して示したものであると解説。過去から現在までに観測された人口学的データの趨勢・傾向から、安定的な構造を抽出してモデル化等を行った上で、その趨勢・傾向が将来も続くとした場合、どのような人口の将来像が得られるかを科学的に導き出すものであるため、人口投影は将来を予見して当てようとする予言・予測とは本質的に性質が異なるものであると強調した。

将来推計人口(令和5年推計)では、外国人の国際人口移動について入国超過数が2040年まで続くとされ、外国人総数は2045年には総人口に占める割合が6.1%、2070年には10.8%となると見込まれる。そのため、石井氏は、日本人と外国で年金制度上の取り扱いが異なることによって、将来推計人口と財政検証との乖離をより大きくする方向に働くと指摘。現役時代に日本で働いた外国人の職種や賃金水準の特性(日本人との乖離)が、将来の受給時の死亡率にどのような影響を及ぼすかといった今後の年金受給者が現役だったときの状況(国籍・職種・賃金水準等)と受給時の死亡率の関係の重要性が増す可能性もあるとした。

このほか、配偶関係別将来人口推計結果によると、今後、65歳以上人口における未婚高齢者の割合が大幅に上昇することが見込まれ、75歳以上人口では未婚高齢者割合の上昇がより顕著になっていることを示した。今後の未婚高齢者割合の上昇は、子どもや孫などがおらず、支援や介護が必要になっても家族サポートを持たない人が増加し、対応が問題になるとの指摘がされている研究を紹介し、公的年金制度についても、現在とは異なる高齢者像に基づく制度設計が求められるとした。

委員からは、単身未婚高齢者割合が増加する見込みのなか、どのような年金政策を考える必要があるかという質問があり、石井氏は、モデル年金のような現在考えられている高齢者像とは異なる示し方が必要になることや、そうした高齢者に対するサポートとして現物で行う場合の利用料やそのための所得をどうすればいいのかということを考える必要があると答えた。

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