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雇用保険の適用拡大や育児休業給付率引き上げへ―厚労省が雇用保険部会報告の素案示す

厚生労働省は12月13日、雇用保険部会報告の素案を労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会に示した。政府のこども未来戦略方針などで求められていた政策の方向性を給付面から具体化するほか、リスキリングへの対応や労働移動の促進を後押しする。同省は年内を目途に報告書をまとめ、年明けの通常国会において改正法案の提出をめざす。

雇用保険の適用拡大は週所定10時間以上まで対象に

雇用保険の適用は、週所定労働時間10時間以上の労働者まで拡大する。同省の推計では、最大で約481万人が新規に加入する見通し。適用の意義や重要性を労使双方に丁寧に周知して理解を得ていくとともに、事業主側の事務負担軽減、中小企業への支援などを検討し、令和10年(2028年)10月から施行するとした。

「出生後休業支援給付金」(仮称)を創設

両親ともに育児休業を取得した場合の育児休業給付の給付率引き上げは、令和7年度から施行する。具体的な制度設計案としては、子の出生後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者がともに「14日以上」の育児休業を取得することを要件として、28日間を限度に、休業開始前賃金の13%相当額を「出生後休業支援給付金」(仮称)として支給。既存の育児休業給付(67%)とあわせて80%相当額(手取り10割)の給付とする。

なお、出生後休業支援給付金の支給は、被保険者の配偶者が産前産後休業を取得している場合、ひとり親家庭や就業していない配偶者など育児休業を取得できない場合は、配偶者の育児休業取得を要件としない。

「育児時短就業給付」(仮称)を創設

育児期の柔軟な働き方を促進する観点から、2歳未満の子を養育するために時短勤務制度を選択した被保険者を対象に「育児時短就業給付」(仮称)を創設。給付率は時短勤務中の各月に支払われた賃金額の10%とし、令和7年度から施行する。

支給要件は、現行の育児休業給付と同様とする。給付対象となる時短勤務の労働時間や日数に制限は設けないが、給付額と賃金額の合計が時短勤務開始前の賃金を超えないよう、給付率を逓減させるしくみとする。

「教育訓練休暇給付金」(仮称)を創設

他方、労働者のリスキリング(学び直し)を促進する観点からは、被保険者が在職中に会社の休暇制度を利用して、無給で、自主的に教育訓練を受ける期間の生活を支える新たな給付として「教育訓練休暇給付金」(仮称)を創設。令和7年度中に施行する。
給付は、教育訓練に専念するため自己都合離職した場合と同視し、自己都合離職者の基本手当に相当する水準とする。

あわせて、雇用保険被保険者以外の者に対しても、教育訓練の受講費用や期間中の生活費用を融資する制度を、求職者支援制度に基づく事業として令和7年度中に創設する。

自己都合離職者の給付制限を短縮、転職を後押し

基本手当に関しては、成長分野への労働移動を促進する政府方針を踏まえ、給付制限を見直す。自己都合離職者の給付制限は、現行の「2ヵ月」から「1ヵ月」に短縮。また、離職期間中や、離職日から遡って1年の在職期間内に自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を受けた場合は、給付制限を解除する。いずれも令和7年度から施行する。

一方で、基本手当の受給者が短期的な就労をした場合に基本手当の3割相当額が支給される「就業手当」は廃止。転職先の賃金が離職前より下がった場合に支給される「就業促進定着手当」は、給付率を引き下げる。

このほか、雇止めによる離職者の所定給付日数を特定受給資格者並みの水準とする措置など、令和6年度末に期限が到来する暫定措置は、2年間延長する方針が確認された。

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