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議論の経過報告案を了承、年金部会に報告へ――第7回年金財政における経済前提に関する専門委員会

厚生労働省の社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会(委員長=深尾京司・日本貿易振興機構アジア経済研究所所長・一橋大学特命教授)は昨年12月27日、年金部会(部会長=菊池馨実・早稲田大学理事、法学学術院教授)に報告する同専門委員会での議論の経過報告案について審議した。

第7回社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会

議論の経過報告案は、前回の委員会で示された検討作業班の報告を基に作成され、財政検証結果が将来の状況を正確に見通す予測(forecast)というよりも、人口や経済等に関して現時点で得られるデータを一定のシナリオに基づき将来の年金財政へ投影(projection)するものという性格であることから、将来見通しは、一定のシナリオを基に長期の平均的な姿を描いたものと解釈すべきとしている。そのため、財政検証に用いる経済前提は、複数のシナリオを幅広く想定したうえで、長期の平均的な姿として複数ケースの前提を設定すべきものであるとした。

長期の経済前提を設定するために用いるパラメータの設定については、新型コロナウイルス感染症の影響下のデータを除外せずに使用することが適当であるとしたほか、長期の運用利回りの設定については、今回はケースⅠ~ⅥすべてにGPIFの運用実績を活用することが適当だとした。
足下の経済前提の設定については、運用利回りをGPIFの実質運用利回りの実績(対物価)に変更するべきとした。また、足下の経済前提と長期の経済前提の接続については、2019年財政検証では全要素生産性(TFP)上昇率、労働投入量、物価上昇率の水準を意識していたが、今回はこれに加えて実質賃金上昇率や実質的な運用利回りも意識して接続させるべきだとした。

委員からは、「今回の経済前提では、新型コロナウイルス感染症の影響下のデータを排除しないといった内閣府の中長期試算との接続や、国際人口移動の前提など前回の財政検証に使用した経済前提と異なる点がある。こうした相違点について国民にわかりやすく説明するべき」「財政検証における将来見通しは、あくまでも一定のシナリオに基づく投影だという点について引き続き国民に説明が必要」など国民への示し方についての意見があった。議論の経過報告案は、おおむね了承となり、微調整が必要な場合は委員長に一任され、年金部会で報告される予定となっている。

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