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新要件に経過措置・新処遇改善加算案の概要、ICT活用等の新加算などを紹介――第233回・第235回介護給付費分科会より

12月11日に開催された第235回社会保障審議会介護給付費分科会において、令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)が示された。

このうち、【3】良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくりのうち、「介護職員の処遇改善」と「生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり」については、11月30日に開催された第233回分科会で議論された内容となっている。

今回は、過去の記事では取り上げていない第233回分科会の資料を交えて、この内容を紹介する。

(審議報告案全体の概要については12月11日掲載記事を参照)


賃金配分は職種に着目せず、職場環境等要件を強化

「介護職員の処遇改善」は、従来の介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の3つに分かれていた処遇改善に関する加算を、各加算・区分の要件や加算率を組み合わせた「介護職員等処遇改善加算」(以下「新加算」)として一本化するもの。

従来は、3つの加算ごとに職場環境等要件・キャリアパス要件・ベースアップ等要件(賃金改善の合計額の2/3以上をベースアップ等)などの要件のほか、加算ごとの賃金配分ルール(介護職員のみなど)が設定されていた。

新加算では、賃金配分ルールとベースアップ等要件を統一化した上で、要件を組み合わせてⅠ~Ⅳの4段階の区分を設定する(訪問介護の場合の加算率はそれぞれⅠ22.4%、Ⅱ20.3%、Ⅲ16.1%、Ⅳ12.4%)。

ただし、従来の加算の取得状況に応じて、令和6年度末まで経過措置区分が設けられる見込みだ(Ⅴ⑴~⒁)。

賃金配分ルールについては職種に着目したものは設けず、事業所内で柔軟に配分することを認める。

また、ベースアップ等要件については、Ⅳの加算額(同12.4%)の1/2(同6.2%)以上を月額賃金の改善に充てることを要件とする。

ただし、従来の介護職員等ベースアップ等支援加算を取得していない事業所が新たに加算を取得する場合は、従来の介護職員等ベースアップ等支援加算相当分(同2.4%)の2/3(同1.6%)以上を月額賃金の改善として新たに配分することを求める。

職場環境等要件に関しては、生産性向上や経営の協働化に係る項目を中心に、人材確保に向け、より効率的な要件とする観点で見直しを行う。

上位区分である新加算ⅠⅡの取得には、新たに設けられる生産性向上ガイドラインに基づく体制構築や、現場の課題の見える化が必須となる。

このような見直しが示されている一方で、すでに行われている処遇改善の原資が損なわれないよう、激変緩和のための経過措置も示されている。

具体的には、①「職場環境等要件の見直し」および新設する「月額賃金改善(新加算Ⅳの1/2以上)」要件について令和6年度中は適用を猶予、②「ベア加算相当の2/3以上の新たな月額賃金改善」(現行の介護職員等ベースアップ等支援加算の要件) ・「昇給の仕組みの整備」(現行の介護職員処遇改善加算Ⅰの要件)・「賃金体系の整備等及び研修の実施等」(現行の介護職員処遇改善加算Ⅱの要件)についても、新規に達成するには賃金規程等の改定等一定の手間が必要となることから、令和6年度中は準備期間として適用を猶予し従前の加算率を維持できる案となっている。

テレワークを明確化、テクノロジー導入で新評価を

「生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり」については、以下の8点が挙げられた(〔 〕内は対象サービス、★は介護予防も含む)。

  1. テレワークの取扱い 〔全サービス(居宅療養管理指導★を除く)〕

  2. 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置の義務付け〔短期入所系サービス★、居住系サービス★、多機能系サービス★、施設系サービス〕

  3. 介護ロボット・ICT 等のテクノロジーの活用促進〔短期入所系サービス★、居住系サービス★、多機能系サービス★、施設系サービス〕

  4. 生産性向上に先進的に取り組む特定施設に係る人員配置基準の特例的な柔軟化〔特定施設入居者生活介護★、地域密着型特定施設入居者生活介護〕

  5. 介護老人保健施設等における見守り機器等を導入した場合の夜間における人員配置基準の緩和〔短期入所療養介護★、介護老人保健施設〕

  6. 認知症対応型共同生活介護における夜間支援体制加算の見直し〔認知症対応型共同生活介護★〕

  7. 人員配置基準における両立支援への配慮〔全サービス〕

  8. 外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し〔通所系サービス★、短期入所系サービス★、居住系サービス★、多機能系サービス★、施設系サービス〕

1.では、人員配置基準等で具体的な必要数を定めている職種に関し、人員配置基準等を超える部分については、個人情報を適切に管理していること等を前提に、テレワークを実施して差し支えないことを明確化する案が示されている。

また、人員配置基準等を超えない部分についても、利用者の処遇に支障が生じないことを前提に、テレワークを実施して差し支えないケースを、職種や業務ごとに具体的な考えを示す見込みだ。

2.では、入所・泊り・居住系サービスを対象に、利用者の安全やケアの質の確保、職員の負担軽減に向けた対策を検討する委員会を設置し、定期的に開催することを義務づける。

ただし、義務化にあたっては3年間の経過措置期間を設けるほか、既存の委員会との共催や複数事業所間の共同開催を認める案が示されている。

3.では、2.の委員会の開催や必要な安全対策を講じたうえで、見守り機器等のテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインに基づき業務改善を継続的に実施、一定期間ごとに効果を示すデータを提供する場合に、新たな加算で評価する。

ここでいう見守り機器等のテクノロジーとは、①見守り機器、②インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器、③介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器を指している。

なお、③については、複数の機器の連携も含めて、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限られる。

さらに、提出したデータにより業務改善の成果が確認され、職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用など)の取り扱い等を行っていることを評価する区分も設定する。

この区分を算定する場合は、上記①~③の機器をすべて使用し、①は事前に利用者へ意向確認のうえで全居室に設置(意向に応じ使用を停止する等の運用は可)、②はすべての介護職員が使用するものとする。

特定施設・老健・認知症GH―見守り機器等導入等で配置要件を緩和

4.では、2.の委員会で必要な安全対策を検討したうえで、3.にある見守り機器等のテクノロジーの複数活用や職員間の適切な役割分担の取り組み等により、介護サービスの質の確保・職員の負担軽減が行われていると認められる指定特定施設に関する見直しとなる。

指定特定施設ごとに置くべき看護職員および介護職員の合計数について「常勤換算方法で、要介護者の利用者数が3(要支援者の場合は10)またはその端数を増すごとに0.9以上」とする。

ただし、この特例を申請にあたっては、テクノロジーの活用や職員間の役割分担等のとりくみを3月以上試行し、多職種が参加する委員会で確認するとともに、指定権者にデータを提出する。

その他、適用後一定期間ごとに指定権者に状況報告を行うなどの要件が示されている。

5.は、介護老人保健施設(ユニット型を除く)および短期入所療養介護の夜間の職員配置を見直すもの。要件を満たす場合に、現行の2人以上から1.6人以上に要件を緩和する(常時1人以上配置)。

具体的には、①すべての入所者に見守りセンサーを導入、②夜勤職員全員がインカム等のICTを使用、③委員会の設置や職員に対する十分な休憩時間の確保等を含めた安全体制等の確保を実施を要件とする。

6.は、認知症対応型共同生活介護の夜間支援体制加算について、要件を満たす場合は夜勤を行う介護職員の数が最低基準を0.9以上上回っている場合にも、算定可能とする。

利用者の動向を検知できる見守り機器を利用者数の10%以上設置していること、施設内に【2】の委員会を設置し、必要な検討等が行われていることが要件となっている。

治療による短期間勤務は30時間以上常勤に、外国人人材の基準参入も緩和

7.は、治療と仕事の両立が可能となる環境整備に向け、全サービスを対象として、人員配置基準や報酬算定を見直すもの。

「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合に、週30時間以上の勤務で「常勤」や常勤換算での計算上1(常勤)として扱うことを認める。

令和3年度改定により導入された、育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合と同様の取り扱いだ。

8.は、外国人介護人材に関する内容。

現在人材の受け入れには、EPA、在留資格「介護」、技能実習「介護」、特定技能1号の4つのしくみがあるが、このうちEPA介護福祉士候補者と技能実習生(以下「外国人介護職員」)が就労後6月未満の場合、日本語能力試験N1またはN2に合格した場合を除き、人員配置基準への参入が認められていない。

しかし、就労開始から6月未満であってもケアの習熟度が一定に達している外国人介護人材がいることから、事業者が外国人介護職員を人員配置基準に参入することについて意思決定を行った場合は、就労開始直後から算入して差し支えないこととする。

意思決定には日本語能力や指導の実施状況、施設長や指導職員等の意見を勘案する。

また、一定の経験のある職員とチームでケアを行うことや、安全対策担当者の配置・指針の整備や研修の実施などの組織的な安全対策の実施を要件とする。

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