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フリーランスの約8割、委託者側の約5割はフリーランス法「知らない」—―厚労省・公取委実態調査

厚生労働省と公正取引委員会は、令和6年5月から6月に委託者側とフリーランス側の両方に行った「フリーランス取引の状況についての実態調査」を10月18日に公表した。この調査は、令和6年11月1日に施行される「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、フリーランス法)の施行前の状況を調査したものである。それによると、フリーランス法を「知らない」と回答したのは、フリーランス側で76.3%、委託者側で54.1%となった。

フリーランス法では、フリーランスに1か月以上の業務を委託した場合、以下の7つの行為が禁止されている。
①受領拒否
②報酬の減額
③返品
④買いたたき
⑤購入・利用強制
⑥不当な経済上の利益の提供要請
⑦不当な給付内容の変更・やり直し

同調査の結果、上記の禁止行為について、「経験がある」と回答した割合は以下の通りとなった。

表をみるとフリーランス側の半数以上が「買いたたき」を経験していることがわかる。コスト削減などのしわ寄せがより立場の弱い方にいった結果といえるだろう。

以上は、フリーランス法第5条に定められたものだが、同法第12条では「募集情報の的確な表示」、同法第13条では「育児介護等の配慮」、第14条では「ハラスメント対策」、第16条では「中途解除等の事前予告」が定められている。
募集情報の的確な表示についての回答をみてみると、「広告等を通じて業務委託を委託・受託した場合に、掲載内容が誤っている表示や誤解を生じさせる表示があった」という回答は委託者で2.6%、フリーランスで53.1%となっており、また、「掲載内容が正確かつ最新の表示になっていない」との回答は、委託者が0.3%、フリーランスで10.6%であった。
育児介護等と業務の両立に対する配慮については、事情によって納期を少し延ばしたり、フリーランス側の申し出に応じた配慮がもとめられよう。「妊娠・出産・育児・介護の事情に関して、業務との両立のため、仕事の依頼者に求めたい配慮がある」と回答したフリーランスの割合は70.7%となっている。
また、ハラスメント対策については、「フリーランスに対するハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化していない/方針は明確化しているが社内で周知していない」と回答した委託者の割合は51.0%で、法施行とあわせて方針の明確化や相談体制の整備が望まれる。
中途解除等の事前予告については、6か月以上の契約の場合、中途解除や更新なしであれば、30日前までにその旨予告しなければならないが、委託者側で5.1%、フリーランス側で18.7%が「30日前までに予告しなかった/予告がなかった」と回答している。

内閣官房が2020年2月10日~3月6日に関係省庁と連携して行った統一調査によると、有業者のうち本業、副業合わせてフリーランスの数は426万人となっている。そのうちの約4割が取引先とのトラブルを経験しており、約6割が契約書を書面やメールで交わしていなかったり、交わしていても条件が明示されていなかったことが明らかになっている。それでも、約8割の人が「フリーランスとして仕事を続けたい」という意思をもっている。
今回の厚労省の調査でも、「取引条件を明示しなかったことがある」と委託者側17.4%、フリーランス側44.6%が回答している。
こうした状況を踏まえ、取引の適正化を図るとともに、多様化する働き方に対応する就労環境を整え、法整備が進められた結果が今回のフリーランス法だが、実際にフリーランスで働く人たちの認知度が低いことも今回明らかになった。

厚生労働省・公正取引委員会「フリーランス取引の状況についての実態調査」
公正取引委員会「公正取引委員会「公正取引委員会フリーランス法特設サイト」
日本経済再生総合事務局「令和2年フリーランス実態調査結果」


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