年金・税金 わたしの相談事例 公開します-シーズン2|#1 雇用保険と退職後の賞与
雇用保険料率の変更
今回このテーマを取り上げるきっかけになったのは、知人のNさんから昨年12月にいただいたこんな質問です。
「私は9月30日に定年退職し、その後12月9日に最後の賞与の支給があったのですが、雇用保険料が天引きされていました。これっておかしくないですか?」
回答は、「間違いではありません。たとえ退職後でも、在職中の労働の対償として支給される賞与は雇用保険料の算定対象になります」です。
Nさんにそう答えた後で、次の2つの疑問が湧きました。
「雇用保険の料率はいくつだったのだろう?」
(昨年10月に雇用保険料率の変更があったので)「所得税は甲欄か乙欄か、どちらで計算されていたのだろう?」
そこでNさんに尋ねてみました。その答えは後ほど本文の中でご紹介します。
雇用保険料率が、①令和4年4月、②令和4年10月、③令和5年4月と3段階に分けて引き上げられました。令和4年4月からは事業主負担分のみが上がり、令和4年10月と令和5年4月からは、労働者と事業主の両方の負担分がアップしました。
雇用保険料率は事業の種類によって異なりますが、ここからは「一般の事業」の労働者負担分の保険料率を例に取って話を進めていきます。その料率の推移は次のとおりです。
令和4年4月:3/1000 ⇒ 令和4年10月~5/1000 ⇒ 令和5年4月~6/1000
ここ最近では平成29年度からずっと3/1000が続いており、令和4年10月は5年半ぶりのアップでした。3/1000のときに初めて雇用保険に加入した方にとっては、令和5年4月からは6/1000と当初の倍になったため、ずいぶん負担が増えた印象だと思いますが、この20年ほどの間に6/1000~8/1000の料率を経験している立場からすると、「今まで負担がずいぶん軽くなっていたけれど、コロナ禍の影響で今回6/1000に戻ったのもまあ仕方ないかな」という思いがします。
料率変更のタイミング
昨秋は久しぶりの料率の変更だったため、お客様から「うちは何月分の給与計算から保険料率を変更すればいいのですか?」というご質問を何件かいただきました。
今年の4月にも料率が変わりましたので、変更のタイミングについて<図表1>にまとめました。実際のところ、料率の変更があった月に支払う給与から新料率で計算するのだと思っていた方が多いようです。
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