介護サービスの運営基準改正案のパブリックコメントを開始(12月10日)
厚労省は、社会保障審議会介護給付費分科会が9日に了承した介護サービスの「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚労省令)」改正案に基づき、10日から来年1月8日までパブリックコメントを開始した。改正省令は来年1月下旬に公布される予定だ。
先に紹介したとおり、新設の個室ユニット型施設では定員15人まで可能とすることや認知症グループホームで一定の要件を満たす場合は3ユニットでの夜勤職員の配置を2人でも可能とする。それら以外の改正案の概要を紹介する。
CHASE情報の収集等を全サービスで推進
運営基準改正案には、全サービスの共通事項として、①CHASE・VISIT情報の収集・活用とPDCAサイクルの推進②高齢者虐待防止の推進③感染症対策の強化④業務継続に向けた取組の強化⑤ハラスメント対策の強化⑥会議や多職種連携におけるICTの活用⑦利用者への説明・同意等に係る見直し⑧記録の保存等に係る見直し⑨運営規定等の掲示に係る見直し─が盛り込まれた。
①CHASE・VISIT情報の収集・活用とPDCAサイクルの推進では、全てのサービスについて、CHASE・VISITを活用した計画の作成や事業所単位でのPDCAサイクルの推進、ケアの質の向上を推奨する。
②高齢者虐待防止の推進では、虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることを義務付ける。
③感染症対策の強化では、新型コロナウイルス感染症拡大を受け、委員会の開催や指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施を求める。また④業務継続に向けた取組の強化では、感染症・災害が発生した場合に、業務継続に向けた計画の策定や研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施を義務付ける。
②・③・④は、3年の経過措置期間を設ける。
⑤ハラスメント対策の強化では、男女雇用機会均等法等におけるハラスメント対策に関する事業者の責務を踏まえ適切な対策を求める。 ⑥会議や多職種連携におけるICTの活用では、運営基準で実施が求められている各種会議等(利用者の居宅を訪問して実施が求められている者を除く)について次のように見直す。
具体的に、利用者等が参加しない医療・介護の関係者のみで実施するものは、「医療・介護関係者事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイドライン」及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を参考にして、テレビ電話等の活用による実施を認める。また利用者等が参加するものは、前記に加え、利用者等の同意を得た上で、テレビ電話等の活用による実施を認める。
⑦ケアプランや重要事項説明書等における利用者等への説明・同意等のうち、書面で行うものについて原則、電磁的記録による対応を認める。たとえばタブレット端末を活用して説明し、その画面上で署名をもらい、保管することが想定される。また⑧諸記録の保存・交付等で電磁的な対応を認めることとし、その範囲を明確化する。
⑨運営規定等の掲示について、閲覧可能な形でファイル等を置いて対応することも可能とする。
認知症基礎研修の実施で3年の経過措置
通所系・短期入所系・多機能系・居住系・施設系の各サービス及び訪問入浴介護で、資格等を持たずに介護に直接携わる職員に「認知症介護基礎研修」を受講させるために必要な措置を講じることを義務付ける。3年の経過措置期間を設ける。
施設での安全対策で6か月の経過措置
介護保険施設で事故発生の防止の安全対策の担当者を定めることを義務付ける。6か月の経過措置期間を設ける。
体制を整備し入所者ごとの状態に応じた口腔衛生管理を行うことを求める。また栄養ケア・マネジメントを基本サービスとして行う。現行の栄養士に加えて管理栄養士の配置を位置づける(栄養士又は管理栄養士の配置を求める)とともに、入所者ごとの栄養管理を計画的に行うことを求める。口腔衛生管理及び栄養管理の実施について3年の経過措置期間を設ける。
従来型とユニット型の施設を併設する場合、介護・看護職員の兼務を可能とする。 ユニット型多床室の新設を禁止する。
介護療養病床を有する診療所が介護医療院に移行する場合、一般浴槽以外の浴槽の設置は求めない。当該事業者が施設の新築・増築・全面的な改築を行うまでの経過措置とする。
地域密着型特養(サテライト型を除く)で他の施設等との連携により栄養士を置かないことを可能とする。またサテライト型居住施設で、本体が(地域密着型)特養の場合、本体の生活相談員により当該サテライト型の入居者の処遇が適切に行われる場合、生活相談員を置かないことを可能とする。
認知症グループホームのサテライト型を創設
認知症対応型共同生活介護について、地域密着型サービス(定員29人以下)であることを踏まえ、ユニット数は「3以下」とする。サテライト型事業所の基準を創設する。サテライト型小規模多機能型居宅介護の基準を参考に定める。外部評価について運営推進会議を活用する仕組み導入する。1ユニット1名以上の計画策定担当者の配置について事業所ごとに1名以上に緩和する。
過疎地等での多機能系で減算なしの定員超過を可能に
多機能系サービスについて、過疎地域等で地域の実情により、市町村が認めた場合に、人員・設備基準を満たすことを条件に、登録定員を超過した場合の報酬減算を一定期間行わないこととすることを踏まえ、この場合に登録定員及び利用定員の超過を可能とする。 「一定期間」とは、市町村が登録定員の超過を認めた時から当該介護保険事業計画期間の終了までの最大3年間を基本とする。代替サービスを新規に整備するより既存の事業所を活用した方が効率的と判断した場合には、次の計画期間の終期まで延長を可能とする。 小規模多機能型居宅介護で、厚労省令で定める登録定員及び利用定員の基準について、市町村が条例で定める上で、現行の「従うべき基準」から、合理的な理由がある場合は異なる内容を定めることが可能な「標準基準」に見直す。介護保険法を改正し運営基準を改正する予定だ。
同一事業者によるサービス提供割合を利用者に説明
居宅介護支援について、ケアマネジメントの公正中立性を確保する観点から、前6か月間に作成したケアプランにおける訪問介護・(地域密着型)通所介護・福祉用具貸与の各サービスの割合と、同一事業者によって提供された各サービスの割合を利用者に説明することを求める。 区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ訪問介護が利用サービスの大部分を占めるケアプランを作成する居宅介護支援事業者を事業所単位で抽出する点検・検証の仕組みを導入する。令和3年10月から市町村で実施する予定だ。
通所系等での避難訓練実施で地域住民と連携
通所系・短期入所系サービスや(地域密着型)特定施設入居者生活介護に、避難訓練の実施などで地域住民の参加が得られるように連携する努力義務を課す。 通所介護の事業運営にあたり、地域との連携の努力義務を課す。 共用型認知症対応型通所介護における管理者について、本体施設・事業所の職務と合わせて共用型認知症対応型通所介護事業所の他の職務に従事することを可能とする。
短期入所生活介護で連携により看護職員を確保
短期入所生活介護で看護職員を配置しなかった場合、利用者の状態像に応じて必要がある場合には、病院・診療所・訪問看護ステーション等との密接かつ適切な連携により看護職員を確保する。
訪問系などでサ高住でのサービス提供を適正化
定期巡回・随時対応型訪問介護看護を除く訪問系サービスや、通所介護、通所リハ、福祉用具貸与・販売では、サービス付き高齢者向け住宅等における適正なサービス提供を確保する観点から、事業所と同一建物に居住する利用者に対してサービス提供を行う場合、当該建物居住の利用者以外にもサービス提供を行う努力義務を課す。 夜間対応型訪問介護のオペレーターについて、併設施設の職員との兼務や随時訪問サービスを行う訪問介護員との兼務を可能とする。また他の訪問介護事業所や定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所に事業の一部委託を可能とする。 薬剤師の居宅療養管理指導の算定要件とされている介護支援事業者等への情報提供を明確化する。 訪問看護の人員配置基準で看護職員を6割以上とする見直しは盛り込まれなかった。