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医療的ケア児者の緊急時の預かりサービスが不足

三菱UFJリサーチ&コンサルティングはこのほど、「医療的ケア児者とその家族の生活実態調査」を公表した。医療的ケア児者の家族で、緊急時に子どもの預け先がないのは8割を超えるなど、サービスが不足している状況が確認された。利用したいサービスでは「緊急一時預かり支援」を挙げた家族が7割近くに上った。

「緊急一時預かり支援」の利用を7割の家族が希望

調査は厚労省の調査研究事業である令和元年度障害者総合福祉推進事業で実施されたもの。①在宅で暮らす20歳未満の医療的ケア児者の家族と、②全自治体を対象にした調査を行った。

このうち①家族の調査では、定量的な調査について昨年11月にウェブにより行い、843件の回答が寄せられた。②自治体の調査は、すべての都道府県及び市区町村(1741か所)を対象に実施。全都道府県及び1108市区町村が回答した。

まず①家族の調査によると、医療的ケア児者の年齢は「3~6歳」が34.6%で最も多かった。必要な医療的ケアをみると、「経管栄養」が74.4%で最も多く、次いで「吸引」が69.0%。

日々の生活における課題などを聞いたところ、「慢性的な寝不足」「自らの体調悪化時に医療機関を受診できない」「医療的ケアを必要とする子どもを連れての外出は困難」への回答では「当てはまる」「まあ当てはまる」の合計が、それぞれで6割を超えた。特に「慢性的な寝不足」は46.3%が「当てはまる」とした。

さらに「急病や緊急の用事ができた時に子どもの預け先がない」との設問には、「当てはまる」が63.1%と最も多く、「まあ当てはまる」が19.6%と続き、合計すると8割以上が子どもの預け先に苦慮している状況が分かった。

「身近にあったら利用したい、現在利用しているが最も利用したいサービス」では、「緊急一時預かり支援」が69.5%で最も多く、「短期入所」「日中一時支援」がそれぞれ45.4%で並ぶ。「訪問レスパイト」が45.3%で続く。

②市区町村に対する調査では医療的ケア児者の実態把握の状況を聞いたところ、「医療的ケア児の人数を把握している」が35.0%、「医療的ケア児者(両方)の人数を把握している」が31.0%などとなっていた。一方、「全数を網羅できているかどうかの判断が難しい」も85.9%となっている。ちなみに厚労省の調査研究による推計では、「医療的ケア児」(0~19歳)の全国の人数は2018年度で1万9712人である。

地域資源について尋ねたところ、サービスが不足している状況が明らかになった。たとえば障害児支援サービスは「大いに不足」が24.7%、「不足」が53.4%などと、合計して8割近くの市町村で不足していた。

医療的ケア児者に対応可能な医療職も「大いに不足」が18.7%、「不足」が52.0%など。対応可能な介護職員も「大いに不足」が24.5%、「不足」が51.0%などと、医療・介護の専門職も不足している。また医療的ケア児等コーディネーターの配置は「0人」が64.2%、「1~5人」が31.3%などとなっている。

都道府県に対する調査でも支援に関する課題では、「サービスがない/少ないなどのサービスの資源量」が最も多く、95.7%に達した。

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