
#14 |iDeCoとNISAを賢く使おう!
iDeCoとNISAのおもな違い
iDeCoとNISAについて、前回のコラムに「両方の制度の特性を活かして上手に併用するのが理想的」だと書きましたが、この2つの制度にはいろいろな違いがあるため、両者の使い分けを考える前にまずはおもな違いを確認します。
前回のコラムにも掲載した下記の比較表の中から、特に判断に影響するポイントを6つ取り上げます。

以下は比較表の①~⑥についての解説です。
①目的および中途解約
iDeCoはおもに老後資金作りを目的とする制度で、原則60歳までは資金を引き出すことができませんが、NISAは特に目的に制限はなくいつでも引き出し可能なため、利便性の観点からするとNISAに軍配が上がります。
②税制優遇
どちらも運用益が非課税になる点は共通ですが、さらにiDeCoでは積立時の掛金が全額所得控除の対象となり、また受取時の一時金や年金は退職所得控除または公的年金等控除の対象となり税金がかかりにくいため、税制優遇の観点からするとiDeCoのほうが有利です。
③手数料
iDeCoは加入時、運用時、受取時にそれぞれ手数料がかかりますが、NISAは口座の開設、維持、解約には手数料不要です。なお、iDeCoの手数料は金融機関によって異なります。
④最低積立金額と購入方法
iDeCoは基本的には毎月定額の掛金(月5,000円以上、1,000円単位)を拠出し、NISAもつみたて投資枠では、定期的に一定額(月100円、1,000円、1万円など)を投資していきますが、NISAの成長投資枠では、積立投資の他にまとまった資金での一括投資も可能です。かなり少額からのお試し投資が可能なのはNISAです。
⑤年間非課税投資枠
iDeCoは職業や立場等によって拠出限度額が異なり、最も高い人でも年間81.6万円なのに対して、NISAは年間360万円が上限で、かなり大きな金額までの非課税投資が可能です。
⑥対象商品
iDeCoでは値動きがある投資信託だけではなく、元本確保型の商品(定期預金、保険商品)を購入することもできますが、NISAには元本確保型の商品はなく、必ず何らかの値動きのある投資商品を購入します。
年代別の使い分けポイント
上記の制度の違いを頭に置きながら、使い分けポイントを見ていきます。
まずは年代別の使い分けのポイントを<図表2>にまとめました。これはあくまでも私見によるものです。

立場別の使い分けポイント
続いてさまざまな立場別に見ていきます。
① フルタイムの共働き世帯
共働きの場合は2人ともiDeCoに加入すると節税メリットが高まります。財布がひとつの夫婦であれば家計全体で投資対象の分散を検討し、夫婦で違うタイプの投資商品を選択してiDeCoとNISA両方の制度をフル活用するのが効率的です。
ただし、最近のフルタイムの共働き世帯では夫婦が別財布になっていることが多いようです。実際我が家の長女の世帯では、夫が毎月一定の金額を家計に入れ、家計の管理は妻が100%行い、それ以外はお互いに関知しないので夫の財産や資産運用の状況はほとんど知らないとのこと。
これでは夫婦での制度の使い分けどころの話ではないのですが、長女によれば職場の同僚たちも同様のケースが多く、今は夫婦仲が順調でも将来の万が一の離婚も頭の隅に置いて別財布を徹底しているそうです。そのため老後資金を夫婦で協力して準備する意識などまったくないようで、寿退社を経てひとまずは専業主婦になるのが一般的だった昭和世代の私からすると隔世の感ですが、令和はそんな時代なのかも知れません。
② 夫がメインで働き、妻は扶養内パートの世帯
以前にセミナーの参加者から次の質問を受けました。
「私は以前からiDeCoに加入していますが、妻も加入した場合、妻の掛金についても私が所得控除を受けられるのでしょうか?」
実は、iDeCoの掛金は社会保険料控除ではなく小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、拠出した本人しか所得控除が受けられません。そうすると妻は節税効果を得られず、しかもiDeCoには運営管理手数料等がかかるため、妻がどちらかを利用するのならNISAのほうがベターではないでしょうか。
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