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医療扶助に関する検討会が初会合(7月15日)

厚生労働省の「医療扶助に関する検討会」は15日、初会合を開催した。座長には尾形裕也・九州大学名誉教授が就任した。医療扶助制度に対応した、マイナンバーカードを活用したオンライン資格確認について検討していく。検討を踏まえ厚労省は来年、生活保護法改正案を国会に提出する予定だ。

医療保険制度でマイナンバーカードを活用したオンライン資格確認制度が来年3月から開始される。政府は令和元年12月20日、「新デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定し、医療扶助に対応したオンライン資格確認の実施も地方との協議も経て令和3年度中に環境整備・システム開発を進め、令和5年度から本格運用を行う方針を示した。

同検討会は、この閣議決定を踏まえ、医療扶助制度に対応したオンライン資格確認について制度的・実務的な課題を整理する。さらに医療扶助について頻回受診者等の適正化対策について検討する。元々、令和元年度内に初会合を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、延期されていた。

検討会は今後、年内に2回程度開催し、オンライン資格確認に関して議論し、中間とりまとめを行う予定だ。それを踏まえ厚労省は来年、生活保護法改正案を国会に提出する考え。

検討会は中間とりまとめの後も議論を継続。年度内に頻回受診対策等の適正化対策やその他の課題について意見交換を行い、全体の議論をとりまめる予定だ。議論の状況により、議題の追加やスケジュールを見直していく。

頻回受診対策等は丁寧な議論を

初会合では、生活保護や医療扶助、「新デジタル・ガバメント実行計画」について説明され、総括的な議論を行った。

複数の構成員が、医療扶助制度に対応したオンライン資格確認の実施について賛意を表明した。日本歯科医師会の林正純構成員は、「オンライン資格確認を進めていくことは基本的に賛同している」と発言。そのうえで医療扶助の事務手続きにおける煩雑さの解消の推進も求めた。

日本医師会の松本吉郎構成員は、「運用の選択肢の一つとして位置づけ、対応できない医療機関が淘汰されないように柔軟な運用をお願いしたい」と留意を求めた。

また頻回受診対策等の適正化について、「真に必要な医療の受診までも抑制されてしまい、長期的にみるとむしろ医療費が増えることもある」と指摘し、丁寧な対応の必要を主張した。

一橋大学教授の小塩隆士構成員は、高齢化により長期的に医療扶助費が増加していく問題と、頻回受診や長期入院の問題については、分けて議論を進めていくことを提案。長期的な問題については、「氷河期世代が高齢化すると、年金も低年金で生活保護に入ってこざるを得ないと思う。私たちが予期しない以上に生活保護が増えるかもしれない」と指摘した。

他方、「頻回受診や長期入院については丁寧に議論した方がいいと思う。生活保護を受けている方々はほかの人たちに比べると社会・経済的状況が悪い人たちがいる。受診の回数も多くなるし、入院の期間も長くなるのではないか。できるだけ実態に即して丁寧にみていく必要がある」と述べた。

構成員は次のとおり(五十音順)。▽太田匡彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)▽尾形裕也(九州大学名誉教授)▽小塩隆士(一橋大学経済研究所教授)▽新保美香(明治学院大学社会学部教授)▽鈴木茂久(横浜市生活福祉部長)▽豊見敦(日本薬剤師会常務理事)▽野田誠一(兵庫県地域福祉課長)▽林正純(日本歯科医師会常務理事)▽藤村睦人(高知市福祉管理課長)▽松本吉郎(日本医師会常任理事)

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